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八百比丘尼、異世界で放浪スローライフ  作者: アジ
三章 ソアの国

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61話 発掘開始!

 奥に進めば進むほど、魔獣どころか鼠も、虫すらいなくなっていく。


何回目かの休憩所になる部屋で睡眠を取ることにして、食事も闇の皮袋から沢山出して各自栄養を取りまくる。おそらく明日、最奥に到達するらしいので、みんな食べれるときに食べておかないと。

「……なんか、魔獣も全然出なくなったけど……こういうものなのか?」

 みんなでベッドに横になり、薄明かりのランプを壁際に置く。ホークの問に、カイトは小さく唸る。

「どう考えてもおかしい。引き返すか悩むくらいには。あの眠らせた魔獣もバリアを貼れるようになっていたのもおかしい。……しかし強さが上がっていたにも関わらず、追いかけて来なかったのも、この奥に何か危険があるからだと推測できる」

「う〜ん。そうなると、俺はほとんど役に立たないんじゃないだろうか……。接近戦とかが出来ないような大きな魔獣が居れば離れたところから攻撃しかできないだろうし」

「まあ、とどめの為に突き刺す剣は必要なんだ。もし本当に敵わないと見なせばすぐに撤退しよう。僕も死にたくはない」

「そうだな……」

 二人の会話を聞いているだけでみんな緊張したのか、寝返りする気配はしても数時間寝息は聞こえてこなかった。私は死ぬことはないにしても、魔獣の腹に入ればどうなるんだろう……。消化されたあとに元に戻るのかな。考えるだけで気持ち悪くなってきた。眠らなくても私は体力的には大丈夫だが、集中力は明らかに欠如する。

「仕方ありませんわね……」

 小さく、ピジョンの声がする。強制睡眠の魔法だ。みんな寝息を立て始めるが、私とカイトにはこの魔法は効かないらしいので眠りにつくのはもう少しあとになった……。



◇◇◇



「なんだ、何もいないじゃない」

最奥と言われたところはなにかの岩や土の壁で出来ている大きな広間だった。本当はあの魔獣が住んでいたらしい。血の匂いなどもしない。ただただなんの気配もない。気持ちが悪いほどに。

 一応警戒しながらも、カイトは土魔法で壁や床を丁寧に、慎重に掘り進め始めた。

「掘りながら壁を固定し崩れないようにして更に魔石を探すのは難しい。ので、強い魔力とコントロールが必要なんですが今までは同時に出来る者が殆どいなかったので掘ったことのない所まで今回は削ってみます」

 魔石を壊してしまえば無意味になるので、カイトはそこから無言になり土を削っていく。私達も邪魔をしないように静かに見守るばかりだが、時折周りに何もないか、この部屋の隅々ににミクの光魔法を飛ばして見るが、本当になんの気配もしなさすぎる。なんでこんなに……。


「あった」

 カイトが小さく言う。人が三人くらい入れるような穴を下の方に掘り進め、カイトは手のひらに何かを乗せている。魔石はうすく紅く光っているように見える。カイトは腰に巻いていたウエストポーチのようなものにそれを仕舞った。

「あたりに変わりはないですか」

 カイトの位置からは周りは見えない。もうほとんど頭の上まで穴に入っていることになる。

「大丈夫ですよ、今の所、怖いくらい何も気配もないです」

「そうですか」

 私の返事に短く応えると、また発掘を再開する。

「この上に魔獣が昔いたということになるので、体の一部が近くにあるかもしれない。死体は他の魔獣の餌になってしまうので全部は残らないんですが……。角すら、魔力の糧として魔獣は食べてしまうので。偶然残った体の一部や体液が魔石になったものを探しています」

 じゃあここで人間が死んだら本当に何も残らないんだろうな……。


 そこからが長かった。持っている懐中時計でゆうに三時間は過ぎたが次は見つからない。発掘している穴を拡大し、横にも縦にも掘り進めてもふたつ目は見つからない。

 広いこの部屋に久々に私は闇のテントを出して、いつでも休憩できるようにして交代でカイトの様子を見守ることにした。



 そこから更に四時間。

「これは……大きいな」

 いつも小綺麗にしているカイトが土でどんどん汚れて行く様子を眠い目をこすりながら見ていたが、はっとみんなで穴を覗き込む。もうその穴はトラックでも投げ込めそうなくらい大きな穴になっていた。この部屋自体がかなり拡張されたことになる。

 カイトの手のひらには少し大きな魔石が乗っている。ひとつめのは爪の先くらいにもならない大きさだったが、遠目に見てもそこそこ大きい。


「これなら!ツーラ国に持っていける分も、私達みんなの分もあるんじゃないの!?」

 ミクが嬉しそうに言うが、カイトは苦笑いして私達を見上げた。

「ここから加工するために削らなければいけません。まあ、最低でもこの魔石で魔導具はみっつは出来るかと。できれば人数分欲しいのは分かりますが、一日かけてこれだけなので今日はもう無理だな。休みましょう」

 カイトは土魔法で階段を作ろうとしたが、もう上手く土を操れそうになかった。ジュドーが風魔法でふわりとカイトを浮かせようとする。ミクの光魔法でも軽く出来るのでカイトはなんとか私達のいる床まで戻ることができた。


「ここでバンリさんのそのテントで少し休むとして、皆さんにお願いが。土魔法のゴーレムを、ここで各自使っていただきたい。指令は各自を守りとおすこと。異変があれば知らせること。僕はもう、明日まで使える魔力はないので、何かあれば任せます」

 それだけ言うと、顔色が明らかに悪いカイトは、テントの中に入るとすぐに目を閉じた。ジュドーの風魔法で汚れを軽く取って土埃などを外に出してやる。それにすら動じずにもう寝息に変わっていた。

 言われたとおりに各自ゴーレムを出すことにする。やはり自分にそっくりなのは気持ちが悪い。そしてホークとミクは、呪いで変えられる前の姿が出てきた。

「あれ?私のだけ投げても何にもならないですね」

 ポイ、と土魔法の魔導具を床に投げれば投げた者の姿にそれが変わるはずなのだがジュドーのだけはトン…と静かに地面に落ちただけだった。ホークが拾ってみるが耳につけている魔力感知の宝石は無反応だった。

「魔力がない……?カイトが入れ忘れたのかな」

「ええ……。それかどこかで漏れたんですかね……。寝てる間に誰かがすり替えたとか」

 ジュドーは不安げに瞳を潤ませた。ピジョンが頭上でわたくしではありませんわ!と飛びながら言う。ピジョンは確かに我が身ひとつでここにいるのだろう。じゃあ、どうして。


「まあ、何かあったら私達が守るよ。とりあえずゴーレムはここに4体いるわけだから何かあったらすぐに教えてくれるはずだし!」

 ミクが励ますと、ジュドーは無言で頷く。ひとまず、ぎゅうぎゅうにはなるけど、テントにみんなを押し込めた。2m四方のテントではカイト、ジュドー、ホークが入ればぎゅうぎゅうになる。ミクはホークの上に寝ることにしたらしい。

「私は大丈夫ですから、交代で休憩しましょう」

 そう提案してゴーレムたちと一緒にテントの外に座る。座布団のようなものも闇の皮袋に入れてきてよかった。

 ゴーレムたちに囲まれながら、私も一旦目を閉じることにした。恐ろしく、なんの音もしないこの部屋を少し不穏に思いながら。

 

 





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