49話 暇つぶし1
ホーク目線です
ソアの国はかなりツーラ国とは気候が違う。同じ夏でも湿気がつらい。ツーラ国にはないジャングルもあるし、外をうろつく魔獣の強さも大きさも明らかに違う。積雪の時期のない温暖な気候は、獣や虫の過ごしやすい大地となった。
一ヶ月ほど待機と言われ、最初の一週間はミクさんのお姉さんのことを聞き込みしてみたが有力な手がかりはなしのまま、今日はみんなでのんびり屋敷で過ごしていた。今日はテレビでも見ようよ〜などとミクさんが提案した朝食後に突如屋敷に訪問者があった。
カイトだ。
王都から少し離れたところに農園がある。そこを魔獣が荒らしているとのことで、カイトは俺達にあてがった屋敷に「どうせ暇なんだろう、駆逐に付き合わないか」と声をかけに来たらしい。
「カイトは準備に忙しいんじゃないのか?」
俺が尋ねると、少し口の端を持ち上げた。
「忙しいさ。準備のための装備を揃えて貰わないと行けないし、数日潜るからには食料や医薬品、その他を人数分準備し、国王に認可を貰い、認可を貰った後に発掘場に一度鉱夫を向かわせ様子を見てきてもらい……」
「分かった分かった。とにかくやることが多いんだな」
「そういうことだ」
屋敷で勝手に紅茶を注いで(そもそもカイトの屋敷だからいいんだけど)リビングのテーブルの一家の主人が座る位置に堂々と腰を下ろす。ツーラ国に居たときはよそに来ているからとあれで一応遠慮していたんだろうな。それでも偉そうだとよく同級生に怒られていたのだが、カイトは聞く耳を持たなかった。特に誰に迷惑もかけてないし関わるなと言うだけだ。
「で、どうします?皆さんは明日はご用事は?」
「俺はないけど……」
「私も特にありません」
バンリさんに続いて、ミクさんとジュドーさんも私も、と言う。
「じゃあ決まりだ。皆さんは高レベルの魔法の使い手と見えるので、この国の魔獣のレベルなら特に問題ないでしょう。なに、タダとは申しません。倒した魔獣の数で金貨をお支払します」
「そうなの!?」
お金に一番目を輝かせるのはミクさんだ。あれもほしい、これもほしい、と魔導具を欲しがる。アクセサリーも、人間に戻れたとき用に、とバンリさんの闇の皮袋に収納させている。ツーラ国の王都からの道のりで魔獣を倒して稼いだ素材でいろんな買い物をしていた。一方、バンリさんは無欲で服もほとんど買わない。
「私頑張っちゃう!魔力持て余してたところだし!」
「私も頑張らせていただきます!」
ジュドーさんも目を輝かせ始めた。バンリさんはうんうんと頷いて、私もご一緒します、とつぶやいた。
明日の朝、農園に出発するとのことで、結局本日は何も用事はない。闇の皮袋に入れられる食料品などの買い出しにふた手に別れて行動することにして、俺はミクさんを肩に載せたまま市場に出かけることにした。
「ねーねー、そういやあさぁ〜」
「はい?」
耳元でミクさんが何かを思い出して小声で言う。
「解呪の魔導具を探したところで、結局王家のひとしか使えないんだっけ。くれるんだっけ?貸してくれるんだっけ?」
そういやそこら辺有耶無耶だったな……。勝手にもらえると思っていた。
「そうですね。明日ちゃんと確認しないといけませんね……」
「だねー。もし結婚しないといけないんだったらあんたに譲るから」
「そうですね……。いや待ってください。嫌ですよ」
しれっと問題発言をされたのをスルーしそうになってしまった。
「誰かが身内になって、その人が貸してくれるって形ならあんたが身内になるのが一番いいんじゃない?あの王子様的に。あ、ほら、この服とかあんたに似合うよ、これ買おう」
可愛い猫の手で商店に飾られているきらびやかなドレスをぽんぽんと叩く。
「いや無理ですよ!」
傍から見たら俺の独り言にしか見えないことを失念して大きな声を出してしまう。我に返り口をつぐみ、早足に他の店の方に移動する。
「多分カイトもそれは望んでませんよ!!」
「そうかな〜」
真面目に考えているのかなんなのか、ミクさんの声はのんきなものだった。
◇◇◇
「え?魔導具ですか?そうですね、誰かを一旦僕の身内に仕立て上げないといけませんね。その人の持ち物ということにしたほうがいいでしょう」
農園に向かう馬車の中でミクさんがカイトに質問すると、当然というふうに答える。
「ほら〜っ」
「うう……」
ミクさんは上機嫌に尻尾を俺の背中にぺしぺしと当ててきた。そうしてカイトは顔色も変えず、続けた。
「その場合は、バンリさんが最適でしょう」
「なんで!!?」
一番選ばなさそうと思っていたので、俺達は馬車が揺れそうなほど大声を出して聞き返すことになった。
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