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八百比丘尼、異世界で放浪スローライフ  作者: アジ
三章 ソアの国

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46/60

46話 結構ピンチ

もう1話夜中に更新してます

「ホークさんのことが知りたければ、私の口からは言えません。本人が言いたくないかもしれませんから」

「本人?」

 喉にひやりとした金属の冷たさを感じながらカイトの方を見る。表情を変えずに私から目をそらさない。

「ホークがここに来ているんです?」

「そうです」

「嘘はよくない。港から貴女が一緒に船から降りたのはあの女性たちと猫一匹。男はいなかったはずだ」

 どこから私のことつけてたのこの人?怖すぎる。どうやらツーラ国の聖女を探す追手の類とは別で、本当にホークのことだけを心配しているのだろう。

「嘘じゃありませんよ。抵抗も逃げもしません。カイト殿下の周りの人……あのマクシーさんたちをつけてもらってもいいので、王都の門まで一緒に来ていただけたら分かります」

「いや、貴方はここで待っていてもらう。僕たちだけで確認して……」

「認識阻害のテントの中にみんなは居るんです。私以外には見えません」

「ふ、次から次によく嘘が出るものだ」

 流石に顔を顰めたカイトは一瞬瞼を伏せた。さてこの不老不死の呪いが解かれたということは、無限に湧き出ていた魔力もあまり自由に使えないようなのでどうしたものか。もう死んだふりやさんは出来そうにない。でも、ミクやホークたちと同じ時間を過ごして普通の人として死ねるのだったら悪くないからここをどうにかして切り抜けたいところ。


「うわ、何だお前ら!!」

 扉の外から突如悲鳴と爆音が鳴る。少し熱気も漏れて来るのは、おそらくミクの火魔法だ。ドンドン、と強く扉が叩かれる。

「カイト、俺だ、ホークだ。話を聞いてほしい。やっぱり、バンリさんを危険な目に遭わせるわけには行かない!」

 かわいい高い声で「俺だホークだ」は無いだろう。カイトは困惑して扉の方を見るが、ジュドーの風魔法が扉を軽く切り裂いた。ジュドーの魔法も何気に怖い。



「貴方は、カナリーを名乗ってませんでしたか」

 ずかずかと近づいてきた美少女のホークを、座ったままのカイトは見上げる。不穏なものを感じ取ったのか、みんな揃ってここに来てくれたらしい。穏便に済ませたかったのに、不敬罪とかで牢屋に入るのかなこれ……。

「……訳あって、呪いでこんなふうに女の子になっちゃったけど。俺はホークだ。何でも質問してくれていい。なんならお前の秘密をここで全部ばらしてもいい。お前がツーラ国の学校の寮で最初夜中寂しくて泣いて寝れなかったこととか」

「誰からそれを……」

 泣いてたんだ……。今こんなにイキっているのに……。

「あと、十二の頃、女教師に花束を贈ってみんなに冷やかされたこととか。俺に背の高さで勝ちたくて図書館にそういう魔術がないか探しに通っていたこととか。まだある。俺の誕生日に……」

「もういい、そこまでだ」

 カイトはナイフを取り落とし、私から手を離す。広い手で自らの顔を覆い、カイトは泣いてしまうのかと思えばそうではないらしい。

「じゃあ僕もお前の秘密を仕返しにばらすが、僕が国に帰ると言ったとき、お前こそ延々と朝まで泣いてそのまま寝落ちした事とか」

「あ〜泣いてそう」

「泣いてそう……」

「泣いてそうですね」

 ミク、ジュドー、そして私に同意されてホークはすぐに白い頬に朱を上らせた。私が死んだふりしてたとき一番泣いてたのホークだし、ジュドーにも見られてるから……。

「もしかして、こちらのお嬢さんも、呪いで猫に?」

 ミクが喋ったことで、察したカイトはふう、と息を吐いて入り口の横にかけてあった長い外套を手に取る。

「なるほど、理解できたが、残念ながら皆さんのお力にはなれそうにない。……お嬢さん、失礼を」

 カイトは外套をミクにふわりとかけた。もちろん猫のミクには大きすぎるのだが、カイトはすっと指輪を抜き取りミクの可愛い肉球に握らせ、数歩下がる。



「ん!?ん!!なんか、変かも。体が熱い……!」

 外套がなければミクは全裸をみんなに晒すことになっていただろう。むくむくと、小さな猫だったミクはもとの二十一歳の女の子に戻っていった。


「やった!戻れた!ありがとうカイト殿下……え?いない?」

 みんなでミクに視線を集中させていたので、カイトのほうを全く見られていなかった。いなくなっている……?いや、これは。


「も、もしかして、お前カイトなのか?」

 ホークが震えながら指差す先にいたのは、大きな銀色の毛の狼だった。

「そう。僕もあの国で呪いにかけられてね。呪いを解く魔導具は確かにこの国にある。が、それを身に着けている時だけなんだ、元に戻れるのは。申し訳ない」

 呆然とするミクの手から指輪がカツンと落ちた。みるみるうちにまた小さい黒猫に戻り、この部屋は呪いにかかった人たちの集まりとなった。そして私の首の傷もいつのまにか、不老不死の呪いが蘇ったらしく跡も何も残さず癒えていた。

「いや銀狼はずるいな……」

 ホークのよく分からない嫉妬の言葉だけがよく響いた。


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