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八百比丘尼、異世界で放浪スローライフ  作者: アジ
三章 ソアの国

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43話 王都到着

 二日後、甲板に出て散歩をしていれば「陸だ!!」と声が上がる。ソアの国だ。思わずみんなに声をかけて水平線の先にあるまだまだ小さな陸を指差す。


「ソアの国、楽しみですね……!あ、いえ、すいません。皆さん、呪いを解いたり人探しだったり、目的があるのに……。私もですけど。最近浮かれ過ぎていますよね」

 ジュドーははしゃいだあとにテンションを落として申し訳なさそうにする。

「ううん、私も船旅楽しかったよ。久々にゆっくりできたもん!」

「はい、俺も初めての国外で……!国内の旅行は陸路のみでしたからね。実はテンションが上がっていました」

 ミクとホークが、緊張しつつもこの旅を楽しんでいることは分かっていた。私もそうだ。私の求めるスローライフはゴロゴロしながらテレビを見たり、長生きしていることを化物扱いされたりせずにゆるやかに過ごしたい、という感じだったからこの船旅はまさにそれだった。 

 まあ、ここからが大変なんでしょうけど。



「最初は王都に向かいましょう。ソアの国の王都は、港からそんなに遠くはないはずです。友達もいるので、そいつを訪ねてみてからそのヤオ、という女性を探してみましょうか」

 ホークもソアは初めてらしいが、地図や旅のパンフレットのようなものは港町で手に入れていた。何よりお友達がいるそうなので、力になってくれたら嬉しいところ。



◇◇◇


 ソアは南国なだけあって、少し湿気があって暑い。ツーラの国でそろそろ夏が終わると思っていたが、船を降りてからの湿気は日本の6月下旬みたいな微妙に不快な湿度だ。ジュドーがついてきてくれてよかった。しかし魔力が高めとはいえ、私のように無限に湧いてくる訳でないはずだからいざという時のために魔力は温存しときたい。


 そういえばツーラ国では数字続くような大雨や嵐の覚えがないが、ソアには雨季もあり、台風のような大きな嵐も夏場には度々来ると聞いた。船旅でも雨風が強い日もあったが、たまたま今回は当たらなかっただけで、嵐を避けてルートを変えることもあるそうだ。


「うう、船から降りたら逆に酔う……」

 ホークもジュドーも顔色が悪い。ミクの顔色は毛皮で見えはしないが調子はよくなさそうだ。

「陸酔いってやつですね、これは……。今日はここで宿を取りますか?」

 わたしも若干気持ちが悪い。傷や炎症を治す魔法は分かるけど、状態異常の回復はどうしたらいいのか分からない。あとで調べよう……。


「ご飯も、後で……」

 宿を取ると、久々に揺れないベッドでみんな眠ることが出来た。ホークが男性だということをもうみんな忘れている感じなのだが、そういやホークの友達は今の姿で会っても大丈夫なのかな?ホークはおそらくそこを失念している。


 


◇◇◇



 港町からは馬車に乗せてもらうことになった。この国はツーラ国よりいろんな物価が安いのでそんなに高くないし何より徒歩が微妙につらい気候なので即決だった。おかげで夕方にはソアの王都に着くらしい。

「俺の友達に呪いを明かすかどうか、ちょっと悩んでます」

 馬車の中でぽつりとホークが言う。一応考えていたんだ。よかった。

「信じてもらえなければそこで終わりですし、だったらとりあえずホークの姉ですという体で接してみようかと思います。カナリーという姉がいるので、名前だけならあいつも知ってます」

「そういやホーク、兄弟沢山いるんだよね?五男だっけ?」

 ホークは私達が宿屋で働いているときから個人情報を勝手に話してくるタイプだった。

「はい。兄が四人と姉が五人ですね」

 五男とだけ聞いていたので姉の存在は初耳だ。

「それじゃ、十人兄弟ということなんですか?」

「そうですね。父は俺の母以外に妻が三人いたので。みんないっしょに住んでましたけど」

 ホークは私の顔を見ながら、特に気まずそうでもなく言う。王都でのあの四階建ての大きな商家を思い出した。大家族だったんだ……。どおりで……。

「ツーラ国って一夫多妻制OKなの!?」

「はい。しかし収入が多くなければ家計が苦しくなるだけなので、あまり見かけませんね」

「あんたんち、金持ちだねほんと……」

「まあ……否定はできませんが。父も兄たちもかなりやり手ですし」

 ホークは育ちの良さをあまり自慢しないが、王都の中でもかなり目立つ豪邸だったし、お城に近いところだと絶対一等地でしょう。よくだらだらと甘えずに生きてこられたものだなと感心する。

「あっでも俺は……!好きな人はひとりだけと決めていますから……!」

 ……そしてこの何度ホークのことはそういう対象にならないと数ヶ月言い続けても諦めない一途さにも感心する。


「お嬢さんたち!ついたよ、王都キジマだ」

 馬車を引いていたのはドワーフの中年の男だった。港町には交易のための鉱石などを運んでいたその帰りだそうだ。

 私達は馬車の小窓から顔を出す。ツーラ国とは違う石造りの建物が建ち並ぶ。屋根は平らなものが多い。港町もそういう建物が多かったが、王都は圧巻される背の高い豪邸が目に入る。



◇◇◇

「お、お金ありそうな国だ……」

 ソアの王都、キジマに降り立ったあとの我々は分かりやすく圧倒されていた。

 ホークの肩の上でミクが口をぽかんと開けている。ジュドーもおのぼりさんよろしくきょろきょろとして落ち着きがない。

 鉱石も油も地下から沢山採れる土地なのだと聞いていたが、交易でかなり稼いでいる国なのだろう。


「はぁ、絵や本では知っていましたが、これ程とは……」

 ホークも建物を見上げながら長く息を吐く。これで物価が安いのが不思議なのだが、税金が安いのだろうか。


「ホークさん、お友達のお家を探しましょうか」

「あ!はい!そうですね。えっと……」

 ガサガサと財布からメモを取り出す。知らない土地の住所の書き方はあまりピンと来ない。道行く人に声をかけて、この建物はどこにありますか、とホークが尋ねる。


「この住所って、あんた……」

 見知らぬ老婦人は困惑した顔を見せる。何かおかしいことを聞いたのかな。苦笑したその女性がすっと指差したのは、大通りの先、ずっと先、そんな先の方でも何があるかわかる大きな建物。この王都で一番立派な……。


「お城じゃないですか?」

 私の言葉に、ホークはしばらく返事もできなかった。



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