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八百比丘尼、異世界で放浪スローライフ  作者: アジ
二章 放浪開始

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35/60

35話 ミクの心配

 このあいだうっかり黒猫になっちゃってからは、不便っちゃあ不便なんだけど意外にあちこちちょろちょろ動き回れるし手先が不器用なこと以外はそんなに困っていなかった。バンリとホークは私のことを特に心配そうにしていたけど、魔法は使えるし二人が一緒だしそんなに不安はなかった。

 ホークは可愛い女の子になっちゃってるけど、まあ人間なんだし私ほど不便じゃないからそっちは心配してない。バンリの事大好きなのは宿屋で働いていた時から知ってるけど、残念ながら脈はなさそうだし、女の子になってからあの変な押せ押せな性格はそんなに出てない、基本的にはいいやつなんだけど……。バンリが宿屋でたまに変な男とかに声かけられても若さのわりにあしらい方が慣れているし、顔を真っ赤にして逃げるみたいなこともしないし、ホークじゃなくても多分バンリは誰にも落とせなさそうなんだよね。

 ……と思っていたら昔話で見たことのある八百比丘尼と一緒だというから、納得はした。変に達観しているし。妙に物知りだし。そしてとても長い時間ひとりで生きて来たから、私たちのこと、嫌いとかじゃなくって皆すぐに死んじゃうから仲良くしたくなかっただけなんだってこと。本当はバンリは人が好きだし、とてもやさしいんだ。私の無計画さに付き合ってくれるし、旅を一緒にしてても私たちのことをよく面倒見てくれるし……。


 だから、困ってる人を見捨てないだろう、そう思って。今いる町で早朝に絡まれている黒髪の女のひとを見かけたからバンリに知らせることにしたんだ。



「ニホンというところから来た女だな」

「違います!!」

 黒髪の女のひとは必死に首を振る。この街を守る警備の衛兵ではなく、明らかに王都にいた憲兵で、様子がおかしい。途中途中の街や村でも、私たちを探している風な憲兵はいたけど、黒髪の人があからさまに連れ去られそうなのは初めて遭遇した。

「聖女様のことで話がある。王都まで来てもらう」

「そんな!」


 それは私たちのことじゃない!?ほっといたらあの人拷問とかにかけられない!?朝の散歩を中断して私は大慌てでバンリ達の部屋に戻り窓の外の様子を報告する。すぐに向かってくれるのか、と思えばミクは窓の外から見えないように隠れ、闇魔法を詠唱し始めた。


「こんな遠くから届くの!?」

 こく、と頷いてバンリは魔力を飛ばす。憲兵たちが何か自分の体がおかしくなっていることに気が付くが、足に負荷をかけられて動けなくなっている。


「逃げて!」


 屋根の上にとんとんと飛び乗り、姿が見えないような場所で私は叫ぶ。ここから私たちの部屋の方向ではない、黒髪の女のひとはきょろきょろとまわりを見渡す。いいから早く逃げてよ!私の焦りが伝わらず、いらだつが姿を見られるとまずいかも知れない。もし、呪いで動物に変わることを憲兵が知っていたらどうなることか。


 火の魔法をひゅっと飛ばすと、やっとあの女のひとは走ってどこかに消えた。憲兵の足にかかった闇魔法はまだ解けてない。でも、あの魔法を使ってしまったことで、私たちがお尋ねものなのだとしたらこの街にいることがばれてしまっただろう。早めにホテルをチェックアウトしなきゃ。でもどこかで検問のようなことがあったら?宿屋でおとなしくしといた方が賢明だろうか。

 急ぎ部屋に戻ると、バンリたちはここから出る支度をし始めていた。


「もうチェックアウトする?」

「いえ、様子を見ます。逃げようと思えばいつでも私の闇魔法で足止めはできるので、街がにぎやかな時間になるまではここでおとなしくしておきましょう」

 バンリがそういうのなら、と一旦ベッドの上に乗る。ホークはそわそわとしているが、あまりトラブルの場慣れしていないのは普段の様子から分かっているのでそこは期待していない。まあ、はたちくらいの女の子が堂々としすぎているのも逆におかしいし。いまホークは普通の旅人の着る服を着ているので、一応の帯剣はしているが前のような屈強な兵士には見えない。誰かここに来てもふつうの旅の女の子が2人と、猫がいるだけだ。多分誰にも姿は見られてないだろうし。


「さっきのひと、大丈夫かなあ」

「……大丈夫ですよ、多分あのひとは日本人じゃないと思います」

 バンリの言葉に、え、と顔を上げると顔色は悪い。


「あのひとは、私たちをおびき出すために演技をしていたみたいです。なんとなく、勘ですけど」

「はあ、だからすぐに逃げなかったんだ」

 同郷の女の子が困っていたら助けに飛び出してくると思われているのかな?まあ、当たりだったけど。


「ミクも、気を付けて下さい。多分この先、私たちをだまそうとする人たちはどんどん出てきます。王都からの追手じゃなくても、女だけの旅だと思えば何でもしてくる人はいます。変な商売のところに売られることだってあるかもしれません。慎重になってください」

 売られそうになったことあるの?それとも売られたことがあるんだろうか。バンリの長い長い人生を思えば、決して平和じゃない時代があったはず。私は食うにも住むにも困ったことはないからバンリの疑り深い性格の中にはどんな経験があるのかをちゃんと理解はできないだろうけど、私たちのことを思ってのことだろう。

 私も、もうちょっと慎重に人を見なきゃ……。多分ホークも似たようなことを考えているのだろう。無言になって思案気な顔を見せているばかりだった。


 

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