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八百比丘尼、異世界で放浪スローライフ  作者: アジ
二章 放浪開始

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33話 魔導具を調べよう2

 闇魔法の魔導具の袋は、袋の口が15cm程しかないので便利とはいえ入れられるものは多くはない。武器や防具は大きなものは無理だ。ナイフなど小型のものはいける。盾や胴当てみたいなものは入らない。三人で思案して、入れられるものは入れてみたがもしこの袋を紛失した場合すべてを失ってしまうことになるので金貨は私とホークに分けて持つことにした。


「他にはどんな魔導具があるんですか?王都ではよくあったのは火の魔法のランプとか……土魔法の肥料とか。大体使い捨ての安いやつですけど。魔力を何度も入れる系は何気にめんどくさくって」

 ホークの生活の中にはそんなに必要ではなかったらしい。確かにホークを見ていればわかるのだが、なんでも己の肉体で解決しようとしてしまう。

 庶民でも手が届く価格だというのに、そんなに魔導具を携帯している様子はなかった。たしかに高くはないが、なくても困りはしない贅沢品でもあるのだ。


「火の魔導具は、魔力を入れたらしばらくはほかほかになるやつかぁ……カイロか要するに。使い切りので投げて爆発するやつもあるけど、なるべく使いたくないねこれは」

 ミクはかわいい肉球で魔導具をちょんちょんと触っている。リュックの中に入っていたのはあとは使えるような使えないようなものとか、属性が違うのでチャージしないといけないものとかでいま活用出来そうなのはさほど見当たらなかった。もっと早くこの闇の皮袋の使い方に気がつけばよかったのに、重いものは置いてきてしまった。もったいないことをしちゃった……。


「途中途中で、道具屋で魔導具を買い集めて袋に入れておくのもいいでしょうね。港までに少し大きめの街もありますし、そういうところには多分あります。闇と光の属性のものは俺は庶民が手に入れられるものでは見たことがありませんが……火の魔導具はいろんな種類が道具屋にあります」

 なるほど、そういう入手の仕方もあるのか。たしかに宿屋のおかみさんも道具屋で何か買ってたな。金額によるけど、旅に役に立つものはこの袋に入れて持って行ってもいいかも。

「あ、そうだ。風魔法の魔導具でエアシールドというのがあります。体に衝撃が来ると風が中で起こって一瞬で膨らんで守ってくれるんです」

 ホークの説明で頭に浮かんだものが私とミクは同じだったようで、一緒に口にしてしまう。

「エアバッグ?」

「エアバッグですね」

 原理は違うがきっとそういう感じのものだろう。ホークはヒュッと眉を潜めて私達を見た。

「バンリさんとミクさんは俺の知らない共通の知識があるのがうらやましいです……。俺も演劇が見られる箱とか、いつか見てみたいです」

 そういえばこないだテレビの存在を教えた。なんだかんだ、故郷の科学には魔導具も敵わない気がする。スマホなんて魔法の板みたいなものだし……。きっとホークが見たら驚くだろう。


「まあまあ、ホークにも日本の話たくさん聞かせてあげるよ!私達にもこの世界のことたくさん教えてね」

 ミクは尻尾をごきげんな立て方をして言う。ホークは何か役に立てることがあるんだ、と気がついてこくこくと頷いた。

 


◇◇◇


 程無くして、最初の村に到着した。そんなに大きくない村だったが、人が多く賑やかだ。宿が満杯なのは王都の祭りの影響もあるだろう。


 食べ物を優先的に買おう、と店を回っていれば井戸端会議をするおばあちゃんたちの話し声が聞こえてきた。

「聖女様、大怪我をして寝込まれているらしいねえ」

「大変だったそうだね」


その会話を聞きながら、肩に乗っているミクが小声で「そんなことになってんだ……」とつぶやく。基本的にミクは私達どちらかの肩に乗ってもらうことにした。もし喋っていても位置的に人間が喋ってるふうに見えなくもないし。一応、堂々と大きい声で人前では喋らないように、と気をつけることにはしている。


「俺が子供の頃から、何度か聖女様は魔力を使い果たしたので引退、といわれていましたが本当は脱走して呪いにかかったりとかしてたのかな……」

 ホークはしゅんとして見せる。どのくらいのスパンで交代しているのかは分からないが、サクラのくちぶりたときっとそうなのだろう。

 そして聖女が魔力を注いでいる聖石とはなんらかの魔導具なのだろう。定期的に入れないといけない、ということは継続して使用されている?一体なにに?ミクもなにかは分かっていなかったが、国の存続に関わるようなことなのかもしれない。例えば防衛のためとか……?そのために日本から魔力のある者を呼び寄せ続けているのかも知れない。


「ねーねー!魔導具見に行こうよ!あの金貨余るくらいあるんでしょ?」

ミクの声で話が逸れて、ホークはうつむいていた顔を上げる。

「そうですね、人が多いから行商も来ていると思います」

「なるほど、行商の人を探しましょう」

 たしかにそういう商人の姿を見かけた。なにかいいものがあるといいな。



◇◇◇



「すまないね〜王都でほとんど売れちゃって、あまり便利なものはないよ」


 人通りの多い場所に露店が出ていたので覗いてみたが、たしかに品数は少ない。店主は実に申し訳なさそうに言うが、ホークは何かお目当てのものがありそうだ。


「これとこれと……あと、これも下さい」

「はいはい!ありがとうね!売れ残りだし荷物が軽くなって助かるよ。お嬢ちゃんも旅の途中だろ?おまけしておくよ」

「わあ!ありがとうございます!」

 ホークは満面の笑みで支払いを済ませ、商品をいくつも受け取る。何に使うものかは分からないが、闇の皮袋にどうにかして入りそうなサイズのものばかりだ。

 買い物をしていて気がついたが、外見も愛想もいいホークは価格をまけてもらったり、おまけをつけてもらえたりと何かと得をする。いま女の子になってるからだけではなく、王都でもそうだった。裏表がなく朗らかで人に好印象を与えるのだろう。私は元々ひそひそ話す方だし、愛想も良くない。目立ちたくないというのもあるけど……。だからホークの太陽のような笑顔の振りまき方は眩しく見える。


「これは長旅で足の疲れを軽減してくれる風魔法のやつで、あ、おまけの魔導具もいいやつです!水魔法のもので、少しだけ水を凍らせることができます!」

 村の広場にある木陰で、ホークが買い物を広げて説明し始める。

「私がお買い物してもおまけもらえるし……」

 肩でミクがぶつぶつという。そうだよね、ミクもみんなに好かれるよね、と頭をなでなでしてやるとすぐに喉を鳴らしてごきげんになった。宿屋で働いていた時もミクは人気者だったのだ。


「あと、これはバンリさんにどうかなと思って」

 ホークが小さな小瓶を取り出して見せるが、香水だろうか?おしゃれな赤い小瓶で、シュッと吹きかける使い方をするようだ。

「これも風の魔導具らしいです。魔法で光の反射を変えるのかな?黒髪の人は青や紫に髪の毛が見えるはずです。一度掛ければ半日は持ちます。村の人たちはともかく、各所の憲兵には黒髪のひとがお城から逃げたのは伝わってるかと思うので、年のために」

「そんなのもあるんですね」

 それを受け取って自分の髪にかけてみると、鏡が今ないので確認できないがミクとホークは「おお……!」と感嘆の声を上げる。

「いい感じです!でも、バンリさんの黒髪がきれいで好きだったので、なんだか勿体無い気もしますね」

「わかる〜バンリの髪きれいだったもんね」

 ね〜!とホークとミクが顔を見合わせて言う。髪がきれいなのは私の体が基本的に傷つかず再生能力に優れているからで、何かの努力があるわけではないので照れくさかった。

 何はともあれ、これであまり目立たずに港を目指すことが出来るはずだ。今日の宿は満杯になっていたので昼過ぎからまたしばらく歩いて、夜になれば魔導具のテントで野宿をしなければならない。小さなプレハブハウスみたいなあのテントは案外居心地もいいし、二人とも野宿には嫌な顔をしなかった。薄い毛布も買ったので、丸めて筒状にすれば闇の皮袋にも入って少しは寝心地も良くなることだろう。



 呪いで姿を変えられた二人には悪いが、私は何でかしばらく続くだろうこの旅が少し楽しくなってきていた。


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