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八百比丘尼、異世界で放浪スローライフ  作者: アジ
二章 放浪開始

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32話 魔導具を調べよう1

 この世界の魔導具は、特定の傾向の魔力を入れると動作するものと、誰でも使えるものとふたつに別れる。前者は宿で働いていたときに使っていた扇風機のような魔導具で、魔力チャージ式だ。後者は使い捨てが多い。


 扇風機のような魔導具は、乾電池式みたいなものなので、繰り返し風魔法の魔力をチャージで使えはするがこんな旅の途中だと風魔法の魔力が切れたら終わりだ。

 この国の夏は湿気が少ないのでそれだけは助かる。カラッとした空気なので過ごしやすい。しかし暑いことには変わりない。


 四角いテントで休んでいるミクとホークは昨日のことであまりに疲労が溜まっていたのだろう。お昼寝と言いながらもう三時間ほど経っているのではないか。


 仕方がないので近くの小川があったのでそこでお魚を捕まえてきたり、野草を採ってきたりとひとりだけ元気な私はうろうろとし始めた。夜逃げを昔から繰り返してきたので野宿も残念なことに得意だ。



◇◇◇



「んん……もう夕方かぁ……」

 むにゃむにゃとミクが起きて前足を伸ばし背伸びをする。仕草がすでに猫でしかないのは自覚はあるのだろうか?


「もう寒いくらい涼しいですよ。夕ごはん食べたら少し歩いて、またテント使って野宿しましょう」

「ん〜いいね〜このテント寝やすかったし。マットレスがあればいいかもしれないけど」

「流石に荷物になりますね。でも闇魔法で大きくしたり小さくしたりするものもあるので、魔導具でいいものがあるかもしれませんね」

「うん!あるといいな〜!」

 ミクはごきげんに私の足元をうろちょろしてくる。踏みそうでちょっと心配だ。

 続けてホークがねぼけまなこでテントから出てくる。

「うわ〜、熟睡してました。すいません……」

「お疲れ様でしたしね。さあ、ご飯にしましょう」


 ミクの火の魔法を借りて調理することにする。猫の体でも魔力は落ちてはいない。夕方になると人通りは少なくなったので一旦テントは消すことにした。


 二人に手伝ってもらい、小さな岩の上に大きな草の葉を置き、焼いた魚や捌いて焼いた獣の肉を並べる。

「バーベキューみたい!楽しい!」

「バンリさん、料理もお上手ですよね」

 二人ともテンションが高くなってかわいいもんだけど、まだこの姿が見慣れない。可愛いからずっとこのままでもいいのにとちらっと思ったのは内緒にしとかなければならない。



 王都から持ってきたおにぎりも一緒に食べて、ふたりは満腹だ。王都に和食や和菓子が多かった理由も分かった。サチコ陛下はどう見ても私達と同じ日本人だったし、あの人も長生きらしい。


「そーいやサチコ陛下、なんの呪いなんだろ?あのカラスってサチコ陛下の呪い解きたいみたいだけどさ、あのひとカラス見て怯えてたんだよね」

「そうなんだ……」

 食事を終えてミクが私の横でリラックスしてそのように言う。つい、頭をなでなでしてしまうけどミクは嫌がる様子はない。


「何か理由があって、呪いでああなったと教えてないのかもしれませんよね。元はニホンから一緒に来た友達とか?」

 まだ食べているホークは女の子になっても胃が大きそうだ。ミクの方と私の方を見て、あのひとたちもそうなのでは?と言う。

「ん〜、それはあるかもね。あんまりサチコ陛下と二人きりで話せるチャンスはないし……人さらい多いって怯えてたし、友達はもうさらわれたことになってんのかも」

 人さらい、明らかに聖女を狙っている者たちがいるらしいけど、魔力を何かの魔導具に入れるためなんだろうか。この道中も気をつけないと。ミクはどう見ても聖女には見えないが……。私は黒髪で見た目の年齢も変わらないので、もし黒髪長髪の二十歳くらいの女性でお尋ね者になっていたらいろんな人に狙われそうだ。髪を染めるのもいいのかもしれない。


「てか、あのお城、トラップがあちこちにありそうなんだよね〜。聖女って、数年で交代と聞いてたけど、逃げ出そうとしたり事故で動物に変えられてそう。私をテラスから掴んで飛んだあの黒い大きな鳥もきっとそうだよね?あのお城、そういや変に真っ黒いネズミとかもいたし、あの子達もそうなのかなあ……」

 確かにミクも黒猫で、サクラもあの大きな鳥も真っ黒だ。ホークは金髪のままなので毛色は基本的にはもとの色が反映されるっぽい。だとすると、黒い動物が何もかも怪しく見えてくる……。外を飛んでいた真っ黒いアゲハ蝶すらもそうだったらどうしよう。


 


◇◇◇



 数時間歩いて、ミクの尻尾から出している光魔法の明かりでもなんとなく不安になってきた頃、またテントを設置して三人で入る。気配遮断されているとはいえ街道から見えるところでは心配なので、少し森に入って場所を整えてからテントを置いた。気配遮断はほぼ透明に見えているはずだが、獣や虫などには気が付かれるかもしれない、と念の為扉を閉めた。

 夜中は森の中は夏とは思えないほど涼しく、閉め切って寝られたもののいつの間にかホークの上にはミクが猫らしく丸まって寝ていたので、あせだくになっていた。


 二人の寝顔を見ながら、滅多な事では疲れない体の私はリュックの中を取り出して見ていた。何か確認せずにいくつか大きくない魔導具を入れてきたものの、何なのかはよく分かっていなかった。

 一応なんの魔導具かも書かれたメモも持ってきたが、説明をどうしても探せなかったものもある。風魔法の魔導具は私にもミクにも使えないし、捨てるかも悩んだがもし先々でチャージ出来るのであれば勿体ないし……。きっとサクラは意味のないものはあの家には集めてはないだろう。光魔法をチャージする小さな球体は、ミクが寝る前に魔力を入れたので蝋燭くらいの明るさでこのテントの中を照らしている。


(闇魔法のは……このテントと、やたら重くなる石と、皮袋か……)

 皮袋は一見普通のものに見えるが、闇魔法を使えるものには便利なものらしい。15cm四方くらいのものの口を紐で縛ってある。小銭くらいしか入らないのでは、と思いながら口を開ければそこはみょうに真っ暗だ。

(テントの中だから見えにくいのかな……)

 光魔法の明かりに近づけてもやはり暗い。不思議に思い中に手を入れると、底がない……?というかどこまでも入る……?二の腕まで入れて怖くなって抜いたが、試しに外にあった石をいくつか入れると袋はちっとも膨らまずにどんどん入っていく。


「なにこれ……」

 不気味に思いつつ、入れた石がどうなっているのか手を入れるとすぐそこにある。袋を逆さにしても落ちては来ない。私の手を入れたときだけ取り出せるようだ。これはもしかして便利なのでは!?と小川に行き水筒に水を組んできて中に入れて試してみる。木の実なども入れられる?しかし袋の口より大きなものは入れることができなかった。



◇◇◇


 

 朝、二人が起きたときにまだしっかり覚醒できてなさそうなのに自慢気に袋を見せる。中から木の実や水筒を次々取り出すと、ふたりはすぐに目を輝かせて起き上がってきた。


「えっなにこれ!?すごーい!!」

「バンリさん流石です……!これで楽になりますね!!」

 

 ふたりに見せながら水筒の温度でふと気がついたことがある。冷えてる?


「これ、夜中に入れたのに冷えてる?この中は断熱されてるか、時間が止まってるのか……どっちなんですかね……」

 私の言葉に、ミクは顔を顰めた。

「取り出し可能なブラックホール的な……?闇魔法……こわいよ……」

 ブラックホールを知らないホークは隣で首を傾げるだけだった。





タイトル通りしばらくはゆるく放浪する予定です

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