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Sword Master ―紅剣の支配者―  作者: 高柳疾風
第四章 紅と碧
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第二部 歓迎

「二人ともー、晩ご飯よー」


もう一言二言言われそうな空気の中に、階下から母親の声が届いた。


「だってさ」


「じゃあ、下に降りましょう」


麗奈が左腕を上げたかと思うと、次の瞬間には姿ももとに戻り、刀も腕輪に戻っていた。


「どうやって戻すんだ?」


「解放の時と同じよ、腕輪になるのをイメージするの」


「分かった」


眼を閉じて、再びイメージする。

すると、スーッと刀が手から離れ、左腕に腕輪の感覚が戻った。


「うん、それを早くできるように練習しないとね」


目の前で、麗奈が刀にしたり腕輪にしたりを繰り返す。


「もしかしてゆっくりやったのはわざとか?」


「そうよ」


唇をわずかに動かして笑う麗奈。

その顔にはしてやったり的な少し悪戯な感じが混ざっている。


「さっ、早く行くわよ」


さっさとドアを出て、階段を降りていく麗奈。

それに続くように俺も階段を降りていく。






「あ、二人ともそこに座って」


台所に向かうと、母親が俺たちに席に着くよう言ってきた。

それに従って俺と麗奈は椅子に座る。なぜか隣同士なのだがこれはきっと見えない力が働いているのだろう。


ちなみにウチには和室はあるが別にそこで飯を食うことはない。

普通の家庭と同じくテーブルにイスだ。


「修業はどうかの?」


先に席に着いていたじいちゃんが話し掛けてきた。


「今日は道具の説明で終わりました。明日から本格的に始めたいと思っています」


麗奈が営業スマイルを顔に張りつけて返事をする。


「そうかい、よろしく頼みますぞ」


「はい」


そう言ってじいちゃんに向かって丁寧に頭を下げる麗奈。


「私も麗奈お姉ちゃんと修行したいー」


「琴音ちゃんがもう少し大きくなったら教えてあげるわね」


「ほんと!? 約束だよ、麗奈お姉ちゃん!」


無邪気にはしゃいでいる琴音に優しく微笑み、指切りげんまんをしている二人。

なんか本当の姉妹に見えてきた。


「はい、お待たせ。じゃあ、麗奈ちゃん歓迎会を始めましょうか」


「そっか、それでこんなに豪華なのか」


テーブルの上には所狭しといろんな料理が並んでいる。


「そんな、気を使っていただかなくても…」


こういうのは苦手なのか、少し麗奈が頬を赤らめている。


「いいのよ、娘ができたみたいでうれしくて作ったんだから」


「それは、その…ありがとうございます」


照れる顔を見られたくないのか、少し俯き加減になる麗奈。

それが面白くてニヤニヤして見つめていると、麗奈と目があった。


「う゛ん!」


「―――――ッ!!」


「ふん!」


咳でうまく音を消して、俺の足を踏み付けやがった!

プイッと顔を逸らして料理の方を向く。


「いただきます」


「お口に合うか分からないけど…」


「いえ、とっても美味しいです」


一口食べた麗奈が感想を漏らす。


「麗奈ちゃんはお料理とかしないの?」


「家では稽古ばっかりでそういうのはちょっと…」


「そう、じゃあここで家事を覚えてみる?」


「よろしいんですか?」


「えぇいいわよ、少しずつやっていきましょうね」


「では…その、よろしくお願いします」


照れ笑いを浮かべながら頭を下げる麗奈。


「真も家事ができる人のほうがいいでしょう?」


「そりゃあ、できないよりはできるほうが…って、何で俺に振るんだよ?」


「さぁ、何でかしらね?」


おもむろに俺に視線を向けてそう言うと、俺と麗奈を交互に見つめて笑みを浮かべる母さん。


…何なんだ、一体?


「さぁさぁ、冷めないうちにいただきましょう」


そう言うと、箸を伸ばして飯を食べ始めた。

俺と麗奈は頭に疑問符が浮かんでしまったが、聞いてもはぐらかされそうなので、同じように飯に箸を伸ばした。






「ふぅ、食った食った」


飯を食い終わり、俺は自分のベッドで寝転んだ。

麗奈は食器の片付けやらを手伝っているだろう。


「なんかいろんなことが一気に起こったなぁ…」


左手にはめられた腕輪を見ながら今日の出来事を振り返る。


『しかし、こうしてる間にも焔獣が攻めてくるやも知れん…。申し訳ないがこの状況を受け入れてもらうしかない』


「分かってるさ。明日からの修行で早く蒼炎を扱えるようにならないとな」


"数多の犠牲を払って――"


蒼炎からさっき聞いた言葉が頭の中で反芻する。


「もう…誰かが傷つくのは見たくないな……」


『真殿…なんと悲しい想いなのだこれは、しかしそれと同じくらい強い想いも混ざっている』


「それが俺の戦う理由なのかも知れないな…」


『…この想いがあれば焔神を滅することができるかもしれん……』


「そうかい……まぁ、ひとまずは麗奈との修行に励むよ」


『うむ、存分に我を使いこなしてくだされ』


自分が世界の運命を左右する闘いに巻き込まれたことに戸惑いと不安もある。

しかし、それと同じくらい敵を倒したいという想いもある。


二つの想いを交錯させながら、俺は明日からの修行に向けて瞳を閉じていった。


いかがでしたか?

お楽しみいただけたでしょうか?

感想等、お待ちしております!!


さて、望まずして世界の運命を左右する闘いに巻き込まれた真。

麗奈とともに挑む闘いの先に待つものとは?

そして麗奈との関係に進展はあるのか??

真の新たな日常を描く次章をお楽しみに!!

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