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Sword Master ―紅剣の支配者―  作者: 高柳疾風
第十七章 甦る絶望
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第二部 灼幽

結局、麗奈に引かれるままみんなの輪に入り込み、そのまま男対女のバドミントン大会が開かれた。

初心者ばかりで大会と言うには程遠いものだったが、それでもやっぱり楽しかったしお陰で少しだけど気持ちをリフレッシュすることができた。


ーー…が


「やーい、また相良がミスったー!」


「う、うるせぇ! これからだこれから!」


こんな山中さんと相良の会話を何度か聞いた時――




―キーーーー………ン…―




「ちっ、せっかくの休息が台無しだ!」


相良以外の五人がそれぞれ自分の武器を解放して構える。

相良はというと、そそくさと遠くの茂みに身を隠した。

うん、逃げるのが上手くなってる。


「どこから来る!?」


五人で輪になって死角を無くし、来るべき敵に意識を集中させていた。


「この気配…まさか!?」


珍しい麗奈の焦った声。

前に同じような気配を持つ奴に出会っている俺たちは、同じことが頭を過っているだろう。


「!! …何やあれ!?」


山中さんが突然上げた叫びに、俺たちは一斉に彼女の指差す方を見た。


「空間に…ひびが……」


全員が目の当たりにしたのは、景色が裂けていく様…現実には起こり得ない、ただ驚くしかないような光景だった。


「広がってるぞ!!」


しかも横にある程度広がって、それが扉のように上下に開いていった。


「おっしゃあ、出られた!!」


「なっ…!」


中から出てきたのはやはり鏡彗と同じく人型の焔獣。

しかし、奴のようにきちっとした服装ではなく、腰に雑に刀を下げ、前をはだけていかにも動き易さを第一に考えたようなもので、逆立った赤い髪が特徴的だった。


「さて、終わりか……………ん?」


「………なっ……!!」


奴は一仕事終えたという感じで踵を返したときにようやく俺達の視線に気付いたようだ。

それまで前方にしか向いていなかった顔がこちらに向かって回された。

その顔を、はっきりと奴の顔を見たとき、時が…心臓が止まる気さえした。

奴の顔、その真ん中に入っている横一文字の傷が俺の脳裏に色濃く残っている。

それと同時に沸き上がるえもいわれぬ感情。


「……さ…ま……!」


「…真?」


隣で小さく聞こえた麗奈の声。

しかし、気付いた時にはすでに蒼炎と同期して飛び出していた。


「貴様あぁああぁぁ!!」


「おっと!」


奴を目がけて突進していったが、すんでのところで躱された。


「何者だ、てめぇ!!?」


「うるせぇえぇ!!!」


そのまま身を返して二撃、三撃と攻撃を繰り出していく。

しかし、どれも奴をとらえることはできずにするりと躱されていく。


「これでどうだぁあぁ!」


刀に気を集中させ、思い切り振り切る。

放たれた紅の牙は辺り一帯に風を巻き起こして一直線に奴のところに向かっていく。


「くっ…!」


「はぁっ!!」


斬炎牙を出した瞬間に俺は飛び、奴が躱すのを狙って刀を振り下ろした。


「ちっ!」


一瞬仕留めたと思ったが、奴は刀をその手に握って俺の攻撃を防いでいた。


「やるじゃねぇか、紅!」


「やっぱりだ……」


金属音が響く空中で、奴の顔や声を間近で確認して確信した。


「貴様…俺の親父を殺した奴だな!!!」


「はぁ!? 何のことだ?」


「ふざけるな!! 十年前、ここでお前は人を殺しているはずだ!!」


「あぁ!? そんなこといちいち覚えてねぇよ!!」


「てめぇ…!!」


「悪いが俺は忙しいんだ。あばよ!」


「うわっ!!」


突然奴の刀が動き、俺はみんながいる場所の方に吹き飛んでいた。


「くっ! ……逃がすかぁ!!」


「ほう、まだやるかーー」


俺は奴が構えた先に向かって再び飛んでいく。


『むっ、いかん! 蒼炎、すぐに小僧との同期を切れ!!』


『無理だ! 我では真殿を抑えられない!』


『ならば仕方ない! 麗奈、小僧を止めろ! 奴に近付けてはならん!!』


「何で…」


『理由はあとじゃ! 早くせい!!』


「わ、分かったわ!」


「この……やろ…! ……………うわっ!!」


奴までもう一息というところで、突然横からよく見た刀が飛び出し、俺を弾き飛

ばした。


「邪魔するなよ、女ぁ…そいつを真っ二つにするところだったのによぉ……」


奴が刀に置いていた手を離す。


『やはりか…止めて正解だったようじゃな』


麗奈の代わりに闘牙が奴と話している。


「じゃあ、お前が相手してくれよ。こっちもスイッチ入っちまったんだ…」


奴が不適な笑いとともに、今度は麗奈に向かって構える。


「くっ…闘牙!」


さっきまでは感じなかった…、一気に溢れ出す強大な邪気に、麗奈は慌てて奴との距離を取ると闘牙と同期した。


「行くぜ……」


「そこまで!」


「ちっ、鏡彗か…」


奴が足に力を込め、まさに攻撃を仕掛けようとした瞬間、二人の間の空間が裂け、知った顔が現れた。


「まったく、戻りが遅いと思ったらまたこれか…」


「今回は向こうからやってきたんだぜ!」


「とにかく用が済んだのなら戻るぞ。まだやらなくてはいけないことが残ってるんだから」


「ちっ、分かったよ」


不満たらたらで奴は鏡彗とともに時空の歪みに足を進めていく。


「待て! 俺と闘え!!」


「あぁ!? てめぇの相手なんぞしてる暇ねぇんだよ!」


奴らがいる空間の亀裂が少しずつ閉じていく。


「覚えておけ、俺の名は“灼幽しゃくゆう”――炎の四天王、灼幽だ! 次に会うまでにせいぜい強くなってることだ、この俺を退屈させないようにな!!」


それだけ言い残すと、奴らは裂け目の奥に消えていった。


「…くそっ!」


奴らが去るときに吹いていた風も止み、辺りにさっきまでの静寂が蘇る。

そんな中で地面を思い切り殴って、歯を食い縛る。


「灼幽ううぅーーー!!」


何もない空に向かって腹の底から声を出す。

奴への怒りと憎しみ、そして簡単にあしらわれた自分への絶望…それらが混ざりあって心の中の何かが爆発した。

強くなりたい…もっともっと強くなって次に会った時には必ず奴を……灼幽を斬る!


「次は、必ず……!」


手に持つ蒼炎を握り締めて、晴れ渡る空に向かって親父の仇を討つことを心に誓った。


いかがでしたか?

ご意見・ご感想をお待ちしております!


真の父親、八神隼人を殺したのは焔界四天王の灼幽だった。

我を忘れ、思わず攻撃を仕掛けた真はまるで赤子のようにあしらわれる。

力の差を思い知った真。

再び会い見えるときには斬り倒すことができるのか!?

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