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Sword Master ―紅剣の支配者―  作者: 高柳疾風
第一章 異形の感覚
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第一部 日常

感想、コメントをお願いいします。

『目覚めよ…』


『汝は我が主なり…』


『まもなく奴が甦る…』


『我とともに大いなる闇を斬り裂かん…』



……………


………




「うっし、こんなもんかな」


眩しい朝日が差し込む部屋、通っている高校の制服に着替えた俺は鏡の前でネクタイを結んでいた。

今は四月、春の訪れを告げる桜が咲き乱れている街中を新入生たちが元気に歩いている。


「まっ、俺は学年が上がるだけだからそんなに新鮮な気分にはなれないがね」


それでもクラス替えというイベントが待ってるから多少はドキドキするが…。


「おっはよー、お兄ちゃん!」


「おはよう、琴音。そろそろ"ノック"というものを覚えたらどうだ?」


ドアを蹴破るくらいの勢いで開け、中学一年生となった妹が登場した。

真新しい制服に身を包み、きれいに束ねたポニーテイルを弾ませながら母親譲りの大きな瞳で俺を見上げてくる。


「いいじゃない、兄妹なんだしー」


「よくない。お前も中学生になったんだからマナーの一つでも覚えろ」


「ふーんだ、お兄ちゃんに言われなくてもそのうち覚えるもーん」


「頑張って今から覚えろよ…。で、何しに来たんだ?」


「あ、そうそう。朝ごはんできてるから早く食べよー」


「はいはい、分かった。すぐに行くから」


手をヒラヒラさせて琴音を部屋から追い出した俺は、学校の鞄を持って階段を下りて行った。






「おはよー」


「あら、おはよう」


「おぉ、おはよう」


リビングにあるテーブルには既にパンとハムエッグが置かれてあり、琴音と袴姿のじいちゃんが座っていた。

なぜじいちゃんが袴姿なのかと言うと、俺の家が神社でじいちゃんが今の主だからだ。

そして、セミロングの髪を結んで台所に立っているのが母さん。

親父は…居ない。俺が小さいころに亡くなったから。

そのときは大変だったけど、今はそれなりに幸せな生活を送っている。


「じいちゃん、今日もご神木の世話するの?」


「ん? あぁ、そうじゃな。今年も花を咲かせてくれるようにしないとの」


うちの神社はそれなりに由緒ある神社らしく、社の前には巨大なご神木がある。

それが毎年春にきれいな花を咲かせるんだけど、あれは見る人すべてを魅了するものがある。


「真くんも琴ちゃんも今日から学校頑張ってね」


「うん。ってか、俺は学年上がるだけだし…」


「私は新しい友達ができるから楽しみっ!!」


「ふふっ、そうね」


料理を終えてテーブルに座った母さんが優しい声で俺たちに語りかける。

丸い瞳と柔らかい雰囲気がこの人をよく表している。






「ごちそうさま。じゃ、行ってきます」


「ごちそうさまー。私も行ってきまーす!」


朝飯を食べ終えた俺は皿を台所に持っていくと鞄を持って玄関に足を向けた。


「っと、忘れるところだった…」


靴を履く寸前で用事を思い出してある部屋に入る。

畳が敷かれたその部屋には遺影と仏壇がある。


「行ってきます、親父」


眼を閉じて静かに手を合わせる。

どんなに忙しい朝でもこれだけは欠かさずにやっている。

これをやらないとなんか親父に怒られそうな気がするしな。


「お兄ちゃーん、まだー!?」


「あぁ、今行く」


玄関から聞こえる琴音の声で手を離し、今度こそ玄関に向かって足を運ぶ。


「お兄ちゃんってば長いって」


「そんなことはない。お前こそちゃんと挨拶してるんだろうな?」


「私は朝起きたときにやってるもーん」


靴を履きながら、待ちぼうけをくらった琴音のお小言をやり過ごす。

そして自転車を引いて神社の坂を下っていく。


「琴音、中学までの道は大丈夫か?」


「うんっ、昨日調べたから大丈夫!」


「そうか。なら安心だな」


「もー、心配性なんだからお兄ちゃんは」


「妹を心配するのは当然だ」


いたずらっぽく笑う妹の頭をワシワシとこねくりまわしてやる。


「ちょっ…せっかくセットしたのにー!」


「あぁ、悪い悪い」


俺の手を振りほどいて必死に髪の毛を直す琴音。

当然俺が悪びれるわけはない。


「じゃ、ここでな」


「うん、お兄ちゃんも遅れないようにね」


元気に走り出していった琴音を見送ってから自転車に跨って自分の高校を目指す。

俺が通っている高校は、まぁ一般的な公立高校なんだが立地条件が最悪だ。

住んでいる町が一望できるとは言え、何も山のてっぺんに建てなくてもいいと思わないか?


「あー、やっぱりこの坂はきつい…」


自転車通学が認められているとはいうものの、この坂道を自転車で行ける奴は恐らく居ないだろう。

一年間通ったはずなのに走破できるだけの脚力は付かなかったみたいだ。


「だー! もういい!!」


悲鳴を上げる足の筋肉に耐えかねて自転車を降りる。

しょうがないのでここからは歩きで登校だ。


「はぁ、帰りは楽なんだがなー」


「よぅ八神、何朝から暗い顔してんだよっ!」


「相良か…お前は元気だよなぁ」


元気のいい足音とともに後ろから肩を叩いてきたこいつは相良秀馬。

中学からの友達で悪友だ。

高校では陸上部に所属していてそこそこの成績を修めているらしい。


「あったりめぇじゃねぇか! 今日から新学期だぜ!?」


「声がでかい、声が。それに学年が一個上がるだけじゃねぇか」


「お前はアホか。もう一つ重要なことがあるだろ?」


「あん? なんだよ?」


こいつにアホ呼ばわりされるのが癪に障ったが、今は疲れてそれどころではない。


「後輩ができるんだぞ? こ・う・は・い・が」


「うんうん。で?」


「かわいい子が居ないかチェックしようぜー!」


「はー、一人でやってろ」


アホな言葉とともに肩に回された暑苦しい腕を振りほどいて少し早足で歩く。

これ以上こいつの会話に付き合っていたら遅刻しそうだ。


「あ、おい待てよ、八神ー」


少し後ろから聞こえる相良の声を聞きながら、クラス替えの紙が張り出されている掲示板に向かう。






「えーと、俺はどこのクラスだ?」


「三組だよ」


「おぉ、サンキュー……って、柳!?」


「やっ、おはよう」


掲示板を覗きこんでいる俺に不意に話しかけたのは柳相馬。

相良と同じく中学からの友達だ。

成績優秀、容姿端麗ときておまけに生徒会の役員という肩書まで持っているいわゆるエリートってやつだな。

でもなぜか俺らみたいな凡人と馬が合う不思議な雰囲気を持っている。


「あれ、相良は? 一緒じゃなかったの?」


「後輩がどうのこうのとうるさいから置いてきた」


「ふふっ、八神らしいね」


トレードマークの銀縁の眼鏡をクイッと持ち上げると、その奥に細められた瞳が見えた。


「おーい、八神ー柳ー!」


「おっ、やっと来たか」


今まで何をやっていたのか、俺よりだいぶ遅れて相良が掲示板のところにやって来た。


「俺は何組だ?」


「三組だよ。僕と八神もね」


「おっ、また三人一緒か。楽しくなりそうだぜ」


「ついでに担任も同じだよ」


「げっ、またあの岡野が担任かよ」


「相良、お前もう目を付けられてるんだからこれ以上面倒なことするなよ?」


「うっせー、俺とあいつが合わないだけだ」


自分たちのクラスに向かいながら担任の話しで盛り上がる。

岡野先生は一年の頃にも俺たちの担任だった。

熱血漢の体育教師、おまけに陸上部顧問だから相良のことはよく知ってる。

こいつが目立つから俺たちまで目立っちまって、たまにとばっちりを食らうほどだ。


「あぁそうそう、どこのクラスかは忘れたけど転校生も来るらしいよ」


「へー、こんな時期にかよ」


「かわいいのか、柳!」


「さぁ、僕も会ったことはないからそこまでは…」


「よし、確認してくる!!」


「って、まずは自分のクラスだろうが!」


柳に有益な情報をもらった相良が狼のように走り出そうとする。

反射的に俺が相良の襟を掴んでそれを阻止する。

やれやれ、初日から岡野にどやされるのは勘弁してくれ。


「相良、確認は帰りにでもしよ」


「ちぇー、しょうがねぇなー」


俺に引きずられたままの相良が適当に返事する。

てか、いい加減立ちやがれ、腕が疲れてきた。






『見つけた…』






「ん?」


不意に誰かに呼ばれた気がして振り返る。

しかし、そこには誰も居らず…。


「どうしたの、八神?」


「あぁいや、気のせいだ」


突然振り返った俺を不審に思ったのか、柳が顔を覗き込むようにして見ていた。

俺は適当に取り繕うとまた足を進めた。



いかがでしたか?

これからまだまだ新しいキャラクターが登場いたします。


次章も読んでいただければ嬉しく思います。

よろしければHPを開設しておりますので遊びに来てください☆

http://oracle225.web.fc2.com/index.html



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