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Sword Master ―紅剣の支配者―  作者: 高柳疾風
第七章 護るということ…
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第二部 覚悟

「やーがみ、やーなぎ、帰ろーぜ!!」


相良がいつものように鞄を引っ提げてやってきた。


…そう、これも俺の日常……。


「ん、分かった」


柳が答えるこれも……。

そして、当然俺の行動も……。


さっきの続きを俺の頭が考え出している。


教室の入り口に居る麗奈と山中さんとも合流して、いつものように俺は自転車を取ってくる。


「すべてが当たり前……か」


自転車置き場で一人呟く。

段々自分が哲学家のように感じてくるが、そんな妄想は置いておこう。


「それを壊すというのなら…目の前の敵を斬り裂いてやる」


まだぼやけている覚悟だが、少なくとも昨日の俺よりは覚悟を持てた気がする。






――キーー………ン――






「はぁ、さっそくかよ…」


休みをくれない現実に思わず萎えてしまいそうになるが受け入れるしかない。


「真」


「麗奈、…行くか」


耳慣れた声に顔を上げると、麗奈が仁王立ちしていた。

その顔はさっきまで山中さんと話していたときの笑顔ではなく、麗奈の覚悟が溢れていた。


「みんなは?」


「先に帰ってもらった」


「そうか」


麗奈を後ろに乗せて自転車を走らせる。

気配から焔獣が徐々に近づいているのが分かる。


「この感じ…昨日の奴と同じね」


「分かるのか?」


「あんたはもっと相手の気を読むことを覚えなさい」


麗奈に軽くお説教される。

ついこないだまでただの高校生だったんだから仕方ねぇっての。


口に出したらまた怒られそうなので心の中で突っ込んでおく。


そして、人気のない森に入った俺たちは刀を解放して構える。


「来るわよ」


「あぁ」


『ぐぉおおぉぉ!!』


麗奈の言う通り、昨日と同じ奴が目の前に現れた。

また今日の夢が蘇ってしまい、少し足がすくんでしまったが――


「麗奈、俺にやらせてくれ」


――ここで逃げるわけにはいかない。


「…分かったわ」


麗奈に俺の決意が伝わったのか、何も言わず大人しく構えを解いていた。


『行くぞぉおぉぉ!!』


「こっちも行くぜー!!」


まだ震えている手を押さえながら、それでも思い切り地面を蹴って焔獣に向かって突っ込む。

そして、奴が振り上げた鋏に向かって思い切り蒼炎を振るう。


「おぉりゃあぁぁ!!」


狙うは鋏の付け根――。


『がぁああぁぁ!!』


蒼炎を振り切ったてからほんの数秒後に聞こえたドスンという音。

そこに目をやると、さっきまで俺に向かって迫っていた奴の腕が転がっていた。


「はぁはぁ…き、斬れた」


がむしゃらに振るったから感触なんてものは覚えてないけど、初めて焔獣を斬った。


『この程度でやられるかー!!』


「真、次の一撃で決めなさい!!」


「おっしゃあぁぁ!!」


麗奈に喝を入れられ、蒼炎に全神経を集中して思い切り地面を蹴る。

振り下ろす蒼炎に迫る焔獣の顔面。

思わず腕を引いてしまいそうだったが、ここで引いてしまったら俺の覚悟が揺らいでしまう。


「だりゃあぁぁ!!」


『ぐぉおぉおおぉぉ!!』


「はぁ…はぁ…」


振り抜いた蒼炎の切っ先を地面に着けながら肩で息をする。

その間、俺が初めて仕留めた焔獣は砂粒のようにサラサラと消えて無くなった。


「お疲れ様、真」


「はぁ…はぁ…」


「…まだまだ動きに無駄があるけど、今日のところは焔獣を斬れたってことで良しとしましょう」


「はぁ…はぁ…ありがとよ…」


ようやく息が整ってきたところで蒼炎を見る。

そこには俺がさっき斬った焔獣の血が付いている。


『お見事であった、真殿』


その刀が俺を褒めてくれる。


「…真、覚悟は決めたかしら?」


「あぁ」


ゆっくり立ち上がった俺の視線の先に麗奈の真っ直ぐな瞳がある。


「俺は俺に関わってくれた人たちを護るために戦う。もし、それが出来なければそれは世界の終わりを意味するんだよな? だったら、この世界を脅かす奴らを真っ向から斬り裂くのみだ」


「…そう。真――」


俺が言い終わるのを待っていたという感じで麗奈がすぐに口を開いた。


「その覚悟、決して忘れないようにね。もし、それを忘れてしまったらただ敵を斬り裂くだけになってしまう。感情なんて一切なくね…」


「…麗奈?」


「闘いは新たな闘いを呼ぶ…。闘いに敗れた者は復讐に燃え、勝利した者は新な力を求めて彷徨う。…終わることのない修羅地獄になるの……」


それまで俺の目を見つめていた麗奈がその視線を外して俯いている。


「だから、倒した焔獣のことをしっかりと覚えておいて。斬ることが快楽にならないように……」


「安心しろ、麗奈。仲間を護ること以外にこの力は使わない」


焔獣を葬り去った手にスッと目を落とす。


「仲間を護るためには敵を斬る…、今日一日悩んで出した俺なりの答えだ。でも、この感触は好きになれそうもねぇわ」


麗奈を安心させるためにはにかんでみせる。


「その決意と覚悟、決して忘れないでね…」


「あぁ。ありがとうな、麗奈。お前のお陰だ」


「答えを出したのは真よ。私はその背中を少し押すだけ」


麗奈の瞳に少しだけ色が戻ってきた。

その視線を再び俺に合わせてくる。


「何が正しくて、何が間違っているのか…。それは人によって違う。真が出したその答えはきっと真にとって真実だから、闘いの中で常に持ち続けてね」


「分かった」


麗奈の言葉をしかと胸に刻んで蒼炎を腕輪に戻す。


「じゃあ、帰ろうか」


「えぇ」


そして、自転車に跨って家を目指す。

これも俺の日常…。

さっきの闘いでちゃんとこれを護ったんだよな。


一人感傷に浸りながらちょっとナルシストな気分でペダルを回す。

空は夕日によって朱く染められていて、さっきまでの闘いを癒してくれた。


「あ、そうだ、真」


「んー?」


「この後修行するからね」


「え!?」


麗奈の口から出た予想外の言葉に俺は耳を疑った。


「お前さっき”今日のところは焔獣を斬れたから良し”って言ってなかったか?」


「それはさっきの闘いの話でしょ? 修行は毎日やらないと意味がないでしょうが」


「勘弁してくれよー。もうボロボロなんだって」


「軽くにしといてあげるから。ほら、さっさと自転車を漕ぐ!」


「ちぇー」


どこまでいっても麗奈には敵わないようだ。

俺はガックリと肩を落としながら自転車を漕いで、修行が待つ自宅へと向かった。


いかがでしたか?

皆様のご意見、ご感想をお待ちしております。


さて、ようやくまとも戦えるようになった真。

次に待つのはどんな敵なのか?

蒼炎の持っている力が示される第八章をお楽しみに!!

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