始動
一度投稿した小説のリメイクです。
感想やコメントお待ちしております。
『ぐおぉおおぉぉ!!』
『があぁああぁぁ!!』
凄まじい轟音とともに二つの巨体がぶつかり合う。
どす黒い色をしたその巨体は両手に大きな鋏を持ち、さながら蠍のような姿をしている。
ここは人が暮らすにはあまりに荒れ果てた地。
岩石が剥き出しになり、砂嵐が巻き起こるこの世界で一つの大きな動きが起ころうとしていた。
『ここに居たのね』
辺り一帯を見渡せる程の高さがある岩山の上、まるでこの世界の象徴のように建っている宮殿の前に一人の男が居た。
『お前か、何か用か?』
『そろそろらしいわよ。あいつが皆集まるようにってさ』
『わぁったよ。すぐに行きゃあいいんだろ』
面倒くさそうに言いながら、男は呼びに来た女に付いて宮殿に戻っていった。
そこは周りの環境から逸脱した空間、仄暗い廊下を照らすのは等間隔に備えられたロウソクのみ。
カツンカツンという音が反響する中、二人は頑丈な扉に閉じられた部屋に入っていく。
『やぁ、来たね』
『あいつはどうした?』
『そこに居るよ』
『………』
中に居たのは二人の男、一人は振り返り入ってきた二人を出迎え、もう一人は部屋の隅で静かに立っていた。
『で、どうなんだよ?』
『あぁ、もうすぐだ』
全員が見つめる先には木の蔦に覆われた棺。
時折棺の隙間から紅い光が漏れ、鼓動のような音が部屋に響く。
『いよいよ復活の時なのね』
―ドクン
『そうだ、我々が人間どもを支配する日がもうまもなくやってくる』
――ドクン
『もうすぐ暴れられるってことだな!』
―――ドクン
『………』
――――ドクン
各々がこれから起こることに胸を躍らせる。
その間にも棺から漏れる光が次第に強く、鼓動が大きくなっていく。
ビキッ…――
ビキッ…ビキッ…――
棺を覆い隠すように張り巡らされた蔦に亀裂が走り始め、宮殿が微かに揺れる。
『さぁ、復活の時だ!!』
『――…ぐぬぅおぉおおぉぉあぁああぁぁ!!!!!』
宮殿中に響き渡る雄叫びとともに、棺の扉が勢いよく開かれた。
その中から現れたのは一人の男。
騎士のような姿をし、鋭い眼光で辺りを見回している。
一部始終を見守っていた四人は、棺から現れた男を見るとその場に膝を付き頭を下げていた。
『この日を待ちわびておりました、我が主よ』
『皆の者、準備は整っておるな…。千年の永き眠りから覚めた今、再び人間界に侵略するのだ!!』
『仰せのままに、我が主よ』
『まかせて頂戴』
『よっしゃ暴れるぜ』
『………』
棺から出た男の一言でそれまで膝を付いていた四人が立ち上がり部屋を後にする。
『覚悟しろ…八神一族、水城一族……、今度こそ滅してくれる――!!』
ゆっくりと歩きながら主と呼ばれた男も部屋を出て、他の四人が向かった方向とは別の方に足を運ぶ。
そのまま吸い込まれるように暗闇に消えていき、宮殿は元の静寂を取り戻していた。
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