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色
職場には青い箱と緑の箱がある。上司が言った。「青い箱を持ってこい。」私は忠実な部下として迷うことなく青い箱を抱えて差し出した。ところが、である。「違うあっちだ」と指さされたのは緑の箱だった。
私は狼狽し壁にひたいを打ちつけたい気分になった。もし緑の箱が青い箱だというのなら私が今抱えているこの箱は一体何色なのか。恐る恐る問うたところ返ってきた答えは容赦なかった。「それはブルーの箱だ。」
私はしばし呆然と立ち尽くした。青は青ではなくブルーなのである。ブルーは青でありながら青ではないらしい、そして緑は緑では無く青。
私は仕事の最中に色彩哲学へ追い込まれすっかり魂を削られた。どうして会社というものは書類や数字だけでなく色の呼び名にまで部下を苦しめるのか。もし明日、青い書類を持ってこいと言われて私が白を差し出したらどうなるのだろう。
私はそのとき、きっと解雇通知という名の真っ黒な紙切れを渡されるに違いない。




