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タイミーで
タイミーなるアプリを通じて私は上り線のサービスエリアに召し出されました。指示は、ただひとこと。「お客さんが持ってきた食器を洗え」。それだけでございました。洗え、と説明はそれだけ。
けれども私は普段は下り線の同じような職場で働いておりますから、こういう仕事には馴れている。 水道の蛇口をひねる角度スポンジの泡立ち具合、茶碗にこびりついた米粒の落としにくさ業務用食器洗浄機の使い方――すべて心得ているつもりです。
説明もほとんど無いにも関わらず、あまりにテキパキと動く自分に思わず「これは、ひょっとしてヘッドハンティングというやつが起こるのではないか」と世にも身の程知らずな妄想を抱きました。上り線の管理者が、ああ、なんという才能なんというやる気と感嘆し私を正社員で雇ってくれるのではないかと儚い夢を見たのです。
しかし現実はタイミーはただタイミーでしかなく希望はただ泡で消えていくのみ。誰も私を見てはいない。誰も私を欲しがらない。仕事は、ただ終わりました。
そうして私はひとり帰途につくのです。泡立てたスポンジのように期待だけが虚しくしぼんでいくのを抱えながら。




