第十二幕 お見合い道場、鬼捕獲劇
家臣A「若様、本当に……お忍びでよろしいので?」
ジロー「当然だ。名を明かせば、あの剣豪娘も構えてしまうだろう?」
家臣B「ですが、お見合いとなれば、家名もそれなりに……」
ジロー「余計な心配は無用。――俺はただ、正面から“人”として会いたいだけだ。」
家臣A「お相手、並みの女子ではないとは聞いておりますが……本当に“勝てる”のですか?」
ジロー「は、勝ち負けじゃないさ。どちらかと言えば……楽しみなんだよ。」
家臣B「左様で……ですが、万が一のときは護衛を?」
ジロー「それだけはやめてくれ。女の前で野暮な真似は御法度だ。」
家臣A「……かしこまりました。“松田定次郎”殿として、存分に。」
ジロー「うむ。――ま、気楽に行こうぜ。何しろ“お忍び”だからな。」
(定次郎、着流し姿で深呼吸ひとつ。内心は――きっと、わくわくが止まらない。)
――ダブル縁談、波乱の幕開け――
【序章:不穏な朝】
「司。ちょっといいか?」
朝稽古が終わるや否や、勇さんがなぜか神妙な顔で呼び止めてくる。
「お見合い、だ」
……はい?
「家のためにそろそろ身を固めるのも大事だぞ、と先生も言っていてな」
私は「はい」と返事をしながらも、(それ、あなたの話じゃないの?)と内心ツッコんでいた。
「ただな、司。お前にも条件を出す権利がある」
私は首をひねり、プログラム的に“最適解”を探した。
「……自分より何か一つでも秀でた者なら、誰でも構いません」
その瞬間、場の空気が固まった。
【枠1:近藤推薦・町道場の息子】
「ほら、いい男だろう。筋は悪くないぞ」
近藤さんが自信満々で連れてきたのは、隣町の道場主の息子。背も高くて、見た目も悪くない。
「よ、よろしくお願いします……」
彼は緊張気味に私を見てきた。
(手合わせ、だよね?)
挨拶もそこそこに竹刀を持つ。三合だけ交え、勝負は一瞬で決まった。
「……ありがとうございました」
息子くんは顔面蒼白。竹刀は見事に宙を舞い、近藤さんは頭を抱えていた。
「な、なんでそんなに強いんだよ、お前は……」
(理由:天才だから)
【枠2:源さん推薦・松田定次郎】
「次は源さんの推薦だ。郷里の知り合いの息子でな、名は松田定次郎」
ふと現れた男。細身でキリっとした表情、気難しそうなタイプ。
「どうも、松田です」
「よろしくお願いします」
挨拶の瞬間――私は、どこか既視感を覚えた。
妙にこちらの一挙一動を観察している目。
ただの「普通の人」じゃない、何かがある。
手合わせを求めれば、定次郎は素直に竹刀を構えた。打ち合ってみる――
(……え? 反応が……速い?)
予想より、わずかに打ち込みが深い。油断したらやられていたかも、という違和感。
勝負は私の勝ちだったが、定次郎は静かに微笑む。
「いやあ、敵いませんね。でも、楽しかったです」
その目が、どこか「勝ち負けじゃない」と言っているようで、私のプログラムがバグを起こした。
(この人は……何者?)
【枠3:山南推薦・学者の卵】
「彼は学問なら誰にも負けません」
山南さんが紹介してきたのは、江戸の私塾で名を挙げている青年。背筋がピンと伸びて、まるで「私は未来のエリートです」と書いてあるような態度。
「記憶力勝負でもいいですよ」と言われたので、即座に百人一首を暗唱し始めてみた。
学者くんは途中で口が止まる。次に「論戦なら」と持ちかけられたので、現代日本史の知識を一部小出しにして質問したら、完全に目が泳いでいた。
「……あ、あの、何者ですか?」
(天才だからです)
こうして、お見合い候補者たちは、私に会うだけで傷心し、去っていった。
【合間:司の内心】
剣でも学問でも、私は勝ててしまう。
「普通の幸せ」って、こういうのじゃないの?
けれど、周囲のため息や、候補者の引きつった顔を見ていると――何かが、違う気がする。
誰も私の“人間”としての部分を、見てくれない。
「何か一つでいい」と言ったのに、それすら届かない。
そう思ったとき、ふと横にいた樹が、茶をすすりながら笑った。
「司ちゃん、無敵すぎて草。もういっそ誰とも結婚しなくていいんじゃ?」
「……だよねぇ」
その時だけは、少し救われたような気がした。
――司の“好み”とバグ――
「……で、結局、司ちゃんはどんな人が好みなの?」
縁側の板の間で、私は湯呑みを持ったまま樹にそう問われた。今日はお見合いラッシュで、午前中だけで三人撃破。剣士、学者、そしてなぜかどこかで見たことがある細身の若い男まで現れて、皆さん打ちひしがれて帰っていった。
「好み……?」
私は首をかしげる。
“好み”という語句は、恋愛・結婚においては極めて重要な要素らしい。
だが、私のプログラムには明確な「好き」という基準がない。
「論理的に考えるなら――身体的健康、遺伝的優秀性、資産、家柄、知能、社会的信用……」
ずらずらと口にした瞬間、樹が吹き出した。
「……うわー、ほんと司ちゃんだなぁ」
「何かおかしい?」
「おかしくはないけど……いや、全部条件でしかないじゃん。それ、本当に“好み”?」
「……そういえば、“好み”ってなんだろう。条件を満たす対象のことじゃないの?」
「違う違う! 例えば、顔が好きとか、声が好きとか、あと……なんか、近くにいたらドキドキするとかさ」
私は眉を寄せる。
“ドキドキ”――それは生理学的には交感神経の興奮状態だ。恋愛感情とも関係するが、運動や恐怖でも同じ反応は出る。
「……それ、単なるノルアドレナリンの作用じゃない?」
樹が吹き出して笑う。
「ほらまた! そういうところだよ司ちゃんは!」
私は苦笑した。自分の言動に、何がそんなに面白いのかは分からないが、樹の笑顔を見るのは嫌いじゃない。
――世継ぎ問題
「じゃあさ、将来的に世継ぎのことも考えないと、って言われたんだろ? どう思った?」
「うん、合理的に考えれば、できるだけ優秀な遺伝子を残すことが最善だよね。人間の生殖は本質的に遺伝情報の組み換えと多様性の確保にあって……」
私は真剣に語ったつもりだったが、縁側の向こうから周助先生の咳き込みが聞こえた。
「こ、こら司! また訳のわからないことを……!」
樹は肩を震わせて笑い、私は“今のはダメだったか”と静かに反省した。
プログラムを修正しよう、と思う。
――縁側の女同士
しばらくして、樹がすっかり落ち着いた様子で言う。
「ねえ、司ちゃんさ、恋愛とかしたことないの?」
「……たぶん、ないと思う。でも、樹と話してると“心地いい”って思うよ」
「んー、あたし女だよ?」
樹はどこか嬉しそうだった。
私は不思議に思う。
この人と話すと、いつも“正解”じゃない会話ができる。
答えが分からなくても、楽しいと感じてしまう。
――これが“好み”ってやつなのかもしれない。けど、それがどういう種類の“好き”なのか、私にはまだ判断できない。
樹は、突然きらきらした目で言い出した。
「じゃあ、私の旦那、芹沢先生の話だけどさ――」
「また惚気話?」
「惚気話だよーん!」
樹は少女のように無邪気だ。
“人妻の惚気”という情報は、江戸の空気によく馴染んでいるような気がした。
――定次郎の入門
そこへ、新入りがやってきた。
源さんがにこにこと「郷里の知り合いだ」と連れてきたのは、例のお見合い候補――松田定次郎。
「……司、久しぶりだな」
「? 初対面ですけど」
定次郎は、一瞬むっとした顔をした。
「この前、竹刀を交えただろ。忘れたのか」
「……ああ、ごめんなさい。たくさんの人と試合してて」
彼はわざとらしく咳払いし、ぶっきらぼうな口調になった。
「ま、別にいい。……あんたに負けたからには、ちゃんと稽古つけてもらうぞ」
「え? 私が?」
「ほかに誰がいる」
私は首をかしげた。
どうやら、彼は私と旧知のつもりらしい。
(なぜか懐かれやすい……)
定次郎は、その後すぐに気を取り直して笑顔を作った。
「俺も、旗本の家に生まれたけど、剣はちゃんと学びたいんだ。ここで、な」
「歓迎します」
“友達”がまた一人増えた。そう感じた。
「思い出せよ。馬鹿野郎」
――近藤、逃亡
お見合いの騒動で道場がざわつく中、ついに当日の朝が来た。
「……やっぱり嫌だ、俺はまだ、まだ……!」
縁談の席に座る寸前で、近藤さんが青い顔で呟いた。
「どうしよう、どうしよう……! 剣の道が、終わっちまう……!」
私は彼の背を押そうとしたが、彼は一目散に道場を飛び出してしまった。
(……あ、逃げた)
周助先生も頭を抱え、ふでさんは「もう、勇は……!」と嘆息している。
「……で、逃げたんですか、勇さん」
試衛館に戻ると、道場は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。周助先生が頭を抱え、ふでさんは湯呑みを片手に「勇は昔からこうなのよ」と呆れている。左之助と永倉さんは縁側で爆笑しているし、源さんは妙にそわそわして落ち着かない。
「……分かりました。私、迎えに行きます」
私は、凍てつくような声でだけ告げて、草履をつっかけて表に出た。
目指すは、芹沢先生の店。こういうときに、どこにいるかは手に取るように分かる。
(データ照合、経路最短化、目的地決定――捕獲作戦開始)
――転がり込んだ先
その頃、鴨の名が書かれた暖簾のかかった居酒屋では、昼から酒盛りが始まっていた。
「おい、兄さん、酒だ酒!」
「はぁ……もう嫌だ、結婚なんてしたくない……」
芹沢が苦笑している横で、近藤さんは完全にぐったりしている。
「やれやれ、情けないな、先生」
と樹が軽口を飛ばすが、司のいない場所での近藤は、ただの“剣バカ”だった。
店に着くなり、入り口で酒をあおっている芹沢先生と樹が私を見て「うわー来たぞ」「おお、鬼が来た!」と大騒ぎしている。
「……勇さん、帰りますよ」
私は入口でそうだけ言った。
「お、おい司……! 話せばわかる、頼む、今だけは勘弁――うわっ!?」
迷う暇など与えない。私は勇さんの腕をがしっとつかみ、そのまま力技で引きずり始めた。
周囲の酔客と芹沢先生たちが「ま、待て待て、女の力じゃねえ!」と驚愕しているが、構わない。
「ほら、しっかり歩いてください」
「いや、待て、足が浮いてる浮いてるって!」
勇さんの悲鳴と、樹と芹沢の腹を抱えるような笑い声をBGMに、私は鬼の形相で彼を道場へ“強制送還”した。
「新しい拷問ですかい、これは……!」
「これが本当の鬼嫁予備軍だな……!」
そんな外野の声が聞こえてきたけれど、私は気にしない。
任務達成、それだけが最優先。
――つねさんとの対面――
勇さんを引きずったまま、私は待たされていたお見合い相手――松井つねさんのもとへ案内された。
「失礼します、沖田司です」
つねさんは、ぽやん、とした顔で座っていた。輪郭も、雰囲気も、すべてが“ぽわぽわ”していて、掴みどころがない。
「えっと……今日は、よろしくお願いします……」
あいさつを返されても、なんだかこちらがふわっと包まれるような気分だ。
威圧も緊張もなく、ただ柔らかい空気がその場に漂う。
(なにこれ、バグ……?)
私は頭の中でシグナルを確認する。“敵意も警戒心もゼロ”。
むしろ、私の方が緊張しているくらいだ。
「すみません、長くお待たせしてしまって……」
「いえ、あの、平気です……お団子食べてましたので……」
「そうですか。……おいしかったですか?」
「はい……すごく、もちもちしてて……幸せ、です」
――すごい。
一言一言が、空気みたいに軽い。私は思わず微笑んでしまった。
(……なんか、いいな)
――リーダーの一目惚れ――
「おい司、そろそろ、勇さんを戻しても……」
と、ふでさんが声をかける。
私は引きずってきた勇さんを正座させ、つねさんの前に引き合わせた。
勇さんはまだ青ざめていたが、つねさんの顔を見た瞬間――
「……!」
固まった。いや、明らかに何かが変わった。
ぽやぽやした空気を一瞬で吸い込むように、目がキラキラと輝きだす。
「つ、つねさん……はじめまして、近藤勇です……あの、結婚してください!!!」
そのあまりの急展開に、周囲は騒然とする。
周助先生も「え、ちょっと早いだろ」と思わず突っ込む始末。
つねさんは、ぽわっとしたまま微笑んだ。
「はい、よろしくお願いします……」
私は、心底びっくりした。
(……これが“恋”というやつ?)
勇さんは、私の手を放し、つねさんに向かって一直線。
ついさっきまで逃げていた人間とは思えないほどの変わり身だった。
「すごいな……」
私は、ぽわぽわとした空気に混ざる勇さんの熱量を眺めて、ちょっとだけ笑った。
(……まあ、これで全部うまくいくなら、いいか)
向こうから、ついてきた樹が「司ちゃん、引きずるの上手すぎ!」と茶化す声が聞こえた。
私は肩をすくめる。
“恋”も“結婚”も、まだよく分からない。
けど、人間っておもしろいな――そう思った。
――あっけない幕切れ――
縁談騒動の結末は、あまりにもあっけなかった。
勇さんがぽわぽわしたつねさんに一目惚れし、そのままプロポーズ――当人同士が全て納得してしまえば、もはや誰も文句のつけようがなかった。周助先生も「…まぁ勇のことだから」と半分呆れ、ふで夫人は涙を浮かべて「よかったわねえ」と喜ぶばかり。樹は隅で「バカップル誕生だね」と爆笑していた。
試衛館の中は、いつもの騒々しさがうそのように穏やかな空気に包まれていた。さっきまでの「鬼の捕獲劇」や「顔合わせ逃亡騒動」が、まるで最初からなかったかのようだった。
私はというと、すっかり役目を終えた気分で、縁側に腰掛けてぼんやりと空を見上げていた。
(これで、よかったんだろうか)
そう思う反面、どうにも胸の内が落ち着かなかった。
恋愛、結婚――どちらも私にとっては「未知のシステム」に過ぎない。データとしては理解できるけど、実感はない。
勇さんがあそこまで変わるのは、やっぱり“恋”というものが人を突き動かすからなんだろうか。
私は、まだ「そういうふうに」誰かを見たことがない。
(……恋って、どんな感じなんだろう)
頭では分かっている。でも、心は何も感じないまま。
「司、何ぼんやりしてるの? お見合い、まだ終わってないよ?」
隣から声がかかる。樹だった。
「え? でも、勇さんは決まったし、私の方は……」
「まだまだ。ほら、定次郎君が“今度こそ司の心を射止めてやる!”って意気込んでるし、左之助はさっきからずっと眉間にシワ寄せてたよ」
「……あ、そうなんだ」
実のところ、左之助がどんな顔をしていたのか、あまり覚えていない。さっきは私の好みを問われて、つい真面目に「顔の左右対称性や筋肉の発達バランスが……」と語ったら、全員にドン引きされた。
「司ちゃん、ほんとにそういうとこズレてるよねー。でも、そういうとこ好きだな、あたしは」
樹は悪戯っぽく笑う。私はそれに、なんとなく救われるような気がしていた。
――報われぬ片想い――
その日の夜。宴の片隅で、左之助がため息をついているのが見えた。
「左之助、元気ないね?」
私がそう聞くと、左之助は「なんでもねえよ」と肩をすくめた。少し拗ねたような、その横顔。私はそれを観察して、「もしかして自分が原因?」と思ったが、理由が分からない。
私と左之助は、対等で不思議な関係だった。普通の“男女”として見たことはない。
ただ、彼が何かで困っていたり、落ち込んでいたりすると、私はなぜか「手伝いたい」と思う。
(それって……なんだろう)
自分の中に湧く微かな“もどかしさ”。
左之助は、「司、今度は負けねえからな!」と宣言していたが、私はその意味すら正確には測れないまま。
「……司、ちょっといいか?」
後ろから、定次郎が近づいてくる。今日はやたらと張り合ってくるし、なぜか口調もぶっきらぼうだ。
「お前、俺のこと忘れてるだろ?」
「え、あ、うん。ごめんね」
「……なんなんだよ!」
定次郎のむくれた顔に、私は少しだけ申し訳なさを覚えたけれど、それもすぐ薄れていった。
彼らの「好き」と私の「好き」が、どうやっても重なりそうになかった。
(……でも、嫌じゃない)
その気持ちだけが、不思議と胸に残った。
――“好き”の行方――
私はまだ、「好き」という感情が何なのか分からない。
勇さんの一目惚れのような“衝動”も、左之助の“切なさ”も、定次郎の“むきだしの対抗心”も。どれも論理では説明できない。
「でも、私にも……帰りたい場所はある」
それは試衛館だった。
どんなに縁談が舞い込もうと、どれだけ条件が良くても、私はここが好きだった。
みんながわいわいと賑やかにして、時々、馬鹿みたいに笑い合う。
剣を振れば全てが研ぎ澄まされ、誰かの役に立てば“生きている”と感じられる。
その中心に、いつも樹がいる。彼女と並んで縁側に座っていると、胸の中の“空っぽ”な部分が、少しだけ温かくなる。
(……これも、「好き」なのかな)
私は、ほんの少しだけ自分の感情に触れた気がした。
でも、それは勇さんのように一瞬で溢れ出すものではなかった。
樹のように熱く、激しく、誰かを求めるものでもない。
ただ静かに、微かに――水のように、波紋のように、私の中に広がっていく。
その「薄さ」こそが、私の“好き”なのかもしれない。
「……まあ、こういうのも悪くない」
そう呟いて、私は星の浮かぶ夜空を見上げた。
世界のどこかに、私の「好き」がある気がした。
左之助「おーいジロー、お前、司に会ったの何度目だ? まーた“誰だっけ”って顔されてたなぁ?」
定次郎「……うるさい。最初に名乗った時から印象は残してるはずなんだがな」
左之助「はっは、まあ司は天才だからな。凡人の顔は全部“その他大勢”だってさ」
定次郎「ふん、俺が“その他”で終わるわけないだろ。――次は絶対、忘れさせねぇよ」
左之助「それ、何回目の宣言だよ。もう旗でも立てとくか?」
定次郎「お前こそ、笑ってばっかりで司の心射止められるのか? “笑顔で敗者”って看板でも掲げるか?」
左之助「お、言うじゃねぇか! じゃあ勝負だ。次に司に会ったとき、お前が名前呼ばれるか!」
定次郎「望むところだ――今度こそ、司の記憶に“刻んで”やるさ!」
(ふたり、意地でも譲らぬ目でにらみ合い――だが、どちらもどこか楽しそうである)