第8話:装飾係に任命されたけど、俺、ハサミ持てないぞ?
「文化祭の準備、装飾係リーダーは……幽ヶ崎でーす!」
「いやどう考えてもおかしいだろ!!
装飾って物を扱う係だよな!?
なんで物理干渉ゼロの幽霊がリーダーやんの!?」
「無念くんなら、きっと気配で場を華やかにしてくれるって」
「華やかの方向性が未知数すぎるだろ!!
てか、装飾に霊圧って必要なの!?」
仕方なく準備に加わった俺は、装飾の要・色画用紙を手にしようとする。
……すり抜ける。
「知ってたァァァァァ!!!」
「無念くん、じゃあ“気持ちで切って”」
「斬魄刀じゃねぇんだわ俺!!!
てか“気持ちで切る”って現代アートの制作手法!?」
そして最悪の瞬間。
「じゃあ無念、こっちの花紙作って!」
「……あのさ、折るとか丸めるとか無理なんだけど。
てかその作業、俺がやる意味あんの?」
「あるよ!“頑張ってる感”が出るから!」
「俺、感情パフォーマーじゃないのよォォォォ!!!」
そんな中、隣の灰島(例の見えてなかった転校生)が、折り紙を見てぼそっと言う。
「これ、幽ヶ崎が持てたら最強だったのにね。
飛ばして渡せるし、重さもゼロだし、エコ」
「企業プレゼンみたいな分析やめろォ!!!
俺の浮遊能力、物流に転用する気か!?」
結局、俺の今日の装飾成果:
•花紙:0枚
•折り紙:触れず
•リーダーとしての威厳:消滅
•存在感:物理的にはゼロ、心情的には爆上がり(※たぶん)
その日の帰り、真中志乃が言った。
「でもさ、無念くん、いたほうが賑やかっていうか……」
「透けてるのに、空気にならないって、すごいことだよ?」
……ちょっと泣きそうになった。
いや、涙も出ないけど。物理的に。
でも感動してたら、大島が追い打ちかけてきた。
「幽ヶ崎、当日も装飾係よろしくな。あと、着ぐるみも頼むぞ」
「透けてるやつに中身やらすなァァァァァァァ!!!」
文化祭、混沌の予感しかしない。