第4話:給食残すなって言われても、俺に配られてない件
「無念、おかわり行かねぇの?」
「まず配膳すらされてねぇんだけど!?」
昼休み。
俺の机の上には――
なにもない。
いや、正確には空気がある。俺も空気だけど。
「ねぇねぇ、今日のカレーめっちゃ美味しいよ〜!」
「大盛りいけるよ無念くん、遠慮しないで!」
「遠慮じゃねぇのよ!? 物理的にムリなのよ!?
スプーンも皿も透けてんだよ俺!!
食ったら床にカレー染み作るだけなのよ!?」
昨日、実際にやらかした。
スプーンすり抜け→カレー空中浮遊→教室騒然→
俺、“ポルターガイストの犯人”にされた。
で、担任の大島がやって来て。
「幽ヶ崎、ちゃんと食べろよ。残すなよ?」
「いやいやいやいや!! どこをどう見たら“食って残してる”に見えるの!?
俺がスルーしてんの、“食事”じゃなくて“存在”だからね!?」
「栄養バランス崩れるぞ」
「魂に!? 俺の霊圧にカロリー管理あんの!?
成仏できない原因、まさか“ビタミン不足”!?」
その横で、真中志乃がプリンを食べながら言う。
「無念くん、今日もスケスケで安定してるね〜」
「褒め言葉なの!? 俺が安定してるの、“存在感の薄さ”なんだけど!?」
さらに追い打ち。
「そういえば、クラスTシャツのサイズどうする?」
「着れねぇよ!? Tシャツっていうか、俺、服すら着てる扱いなの!?」
「透けてるからMサイズでいいよね!」
「幽霊のサイズ感ってどう測んだよォォォォ!!!」
昼休みのたびに俺の霊体が削られていく。
食べてもいないのに“食べたっぽい罪”を背負わされ、
服も着られず、Tシャツサイズで議論される存在。
……でも、まあ。
「無念くんってさ、いるだけでなんか面白いよね〜」
そう言って笑ってくれるやつらがいるなら――
俺は、明日も食べられないけど、教室にいるよ。
なお翌日――
「幽ヶ崎、来週の調理実習、カレー作るぞ」
「火、持てねぇって言ってんだろぉおおおおおお!!!」
魂のカレー、鋭意準備中。