第17話:俺って、いつまでここにいられるんだろうな
修学旅行も終わって、風紀週間も終わって、
ようやく教室が“日常”に戻った午後。
俺は、静かな放課後の教室でぽつんと座ってた。
誰もいないはずの空間――でも、ほんのりと温かい空気が残ってる。
「……なんかさ」
自分でも思ってもなかった言葉が、ふと口から漏れた。
「俺って、いつまでここにいられるんだろうな」
最近、笑ってることが多かった。
志乃の天然ボケ、灰島の謎発言、
ひよりのポジティブすぎる奇行、佐伯委員長の理不尽ジャッジ。
でも――笑ってるうちに、
ふと“透明な不安”が込み上げてきた。
「俺がいなくなったら、みんな、ちゃんと前に進むんだろうか。
……ていうか、そもそも、気づくのかな。いなくなったこと」
そのとき、背後から声がした。
「……無念くん、いる?」
振り返ると、椎名ひより。
手には、俺用の“書けない”交換日記。
「今日、なんとなく元気なさそうだったから。
これ、書けないけど――話す用ね」
彼女は、俺の前にぽんっと日記を置いて、ニコッと笑った。
「無念くん、消えないよ。だって、私たちが忘れないもん」
……その言葉に、
なにかが少しだけ、救われた気がした。
俺がここにいることに、ちゃんと意味がある気がした。
「……ありがとな」
その瞬間――
「無念、お前! 机にいたずら描いたろ!!」
ドアを勢いよく開けて、佐伯委員長が突入してきた。
「なにぃぃぃぃぃ!? 今いい雰囲気だったじゃんかァァァァァァァ!!!」
「証拠はこちらです!」
机の上には――
『今日も透けてていい感じ』の文字(by志乃)
「いや俺じゃねぇよ!? 書けねぇし!!
ていうか何その“透け方褒め”みたいな謎メッセージ!?
この流れでツッコミ再開すんの!?」
ひより:「大丈夫、無念くん!そういうところも含めて、“今日もちゃんと生きてた”ってことだよ!」
「生きてねぇのよ!!!」
こうして、俺の“感情が少し動いた午後”は、
見事にツッコミでかき消された。
それもまた、俺らしい日常。




