第12話:ロッカーの中、空っぽすぎて都市伝説扱いされてんだけど?
「無念くん、上履きどこに置いてるの?」
朝のホームルーム直前、真中志乃が軽いノリで聞いてきた。
「いやロッカーに決まって……るわけないんだわ」
そもそも俺、ロッカーに物が入れられない。
物理的に無理。
マジで無理。
一度試したけど、上履きが壁すり抜けて向こう側に飛んでった。
それ以来、上履きは「隣の志乃のロッカーの床」に仮置きしてる。
「え? 無念のロッカーって何も入ってないの?」
「そう、完全な真空空間。物理的にも概念的にもゼロ」
「ロッカーに概念とか必要?」
「霊体に物理を問うよりはマシだろ!!!」
すると、後ろの席の男子が割って入る。
「ていうか無念のロッカーって、誰が開けても何もないって噂だよな?」
「おいおい都市伝説にすんなよ!? 俺の収納事情が学校七不思議に数えられてんの!?」
「しかも入れた物が消えるらしい」
「それはたぶん俺が透けてすり抜けただけぇぇぇぇ!!!」
そしてその日の昼休み――
なぜか「無念のロッカーに何が入るか試してみようの会」が始まった。
【実験内容】
•プリント → スッ
•上履き → スッ(片方だけどこかへ飛ぶ)
•パン → スッ
•希望 → 入らない(by灰島)
「なんで“希望”!? 俺のロッカー、心の闇扱い!?
ブラックホールじゃねぇぞコラ!!!」
最後にひよりが入れたもの:手紙
「これも、消えるかな〜と思って」
「いややめろ!? そういう“意味深な手紙”は違う意味で怖いからやめろ!?
消えたら成仏フラグ立つからな!? 読まずに昇天とか嫌だぞ俺!!!」
結果――手紙は、
ロッカーの中で“ふわふわ浮いたまま停止”
「うわ、なんか中だけ重力違う……」
「もうそれ異空間じゃん!?
俺のロッカー、パンドラの箱みたいになってるの!?」
ちなみに放課後、担任がふとつぶやいた。
「幽ヶ崎のロッカー、ずっと使い回しの“開かずのロッカー”だったんだよな……」
「そういう怖いの混ぜんなやァァァァ!!!!」
俺のロッカーに、今日も何も入ってない。
でも、なぜかちょっとだけ賑やかになった気がした。
そんな俺の背後で――
「じゃあ明日、修学旅行の説明するからなー!」
という大島の声が、静かに俺の魂を揺らした。
……え、俺って、行くの?
次回――魂が行く、修学旅行準備編。




