【一発ネタ】 危険な男 5
昔の半実体験。
とある中途半端な田舎によくある、年々田畑が減り続ける中で住宅もアパートも商店も飲食店も、スーパーもチェーン店もホームセンターもカーディーラーも町工場も混在する町。
そんな町のとある住宅に、変な趣味をいくつも持つ男がいた。
その男の職種は不規則な就業時間であり、平日が休日になる日もちょくちょくだ。
そんな男の変な趣味の1つなのだが、冬の平日に住んでいる家の縁側に座り、外をのんびり眺める事だ。
この趣味が発揮されるのは冬の日中で、しかも風が強い日に限られる。
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男は縁側に座っていた。
そして暴風とも言える強風が吹き荒すさぶ屋外で、のんびりと文字通りの風景を楽しんでいた。
その顔には期待の色が強くでていて、風によって発生する出来事を心待ちにしているのが、ありありと読み取れる。
今日は何も起きないのかもと思わせる平和な時間が続く。
縁側の男の視界に、強い風にも負けず、幼い子供を連れた親子が道路を歩いていた。
何も入っていないエコバッグを提げながら歩く親の姿から、恐らく近所のスーパーへ買い物に行くところなのだろう。
その親子の子供の方は空を見ながら、ボンヤリと歩いている様子だった。
縁側の男ものんびりと今日は平和だなーなんてボンヤリしていたのだが、次の瞬間には状況が変わる。
ボンヤリ空を見ながら歩いていた子供が、空へ向かって指を指したのだ。
そして「くらげ!」と、ひとことだけ声を出した。
親だけでなく、縁側の男もその指の先を確認しようとアゴを上げた。
すると、そこには確かにクラゲがいた。
正確に言うと、クラゲらしき膨らんだ白くヒラヒラしたモノが空中をふわふわと、時折風に流されながらもノンビリと空中浮遊していた。
これには親も縁側の男もびっくり仰天。
大空を悠々と飛び回り、時に上昇、時に下降と自由自在。
それでいて風で流されてどこかへ飛んでいきそうなのに、そう言う事もなく一定範囲(と思われる)内から外へは行かない。
この何とも言い難い不思議な現象を前にして、縁側の男も親子も、しばらく見とれてしまった。
その時間が過ぎ「ハッ」と我に返った親子がこの場を去り、男は慌てて家の中へ引っ込む。
が、縁側の男はすぐにまた縁側へ戻ってきた。
双眼鏡を持って。
そしてその双眼鏡で空飛ぶクラゲを覗き込むと――――
「――――スーパーのビニール袋……」
幽霊の 正体見たり 枯れ尾花
昔、特定の遊びに行った先で見かけたものが元ネタになります。
マジで優雅にフワフワしてたんですよね。
なんだと思って観察し続け、少し近寄ったらマジでビニール袋でした。