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095 サイド:ジュウカン領ショウオン村

今日で人族側の話は終了です!

明日から再び、魔族というかサイガとリンの話に戻ります。

いつも読んで頂き、ありがとうございます<(_ _)>

「お〜い、マヤちゃん、アオちゃん。朝だよ~、早く起きて~」


最近の私の日課は、村に来た2人の少女を起こすことだ。2人とも朝が弱くて私が起こさなければ、いつまでも寝ている。なかなか起きない姉妹に業を煮やして扉を強く何度も叩くと、ようやく扉が開いてアオちゃんが顔を出す。


「ジェネちゃん、おはよう〜。もう、朝なの〜。はぁ、前だったもう少しゆっくり寝てても、誰も文句言わなかったのに」


黒髪に金眼の美少女はボサボサの髪にだらしない格好のまま私に朝の挨拶をする。折角、可愛いのに勿体無いと思うがアオちゃんらしいとも思う。部屋に入るとマヤちゃんがベッドから起き上がり、ぼーっとしている。本当に2人とも朝が弱いなと苦笑いしてしまう。


「前のことは分かんないけど、早く起きないと警備の仕事に遅れるよ」

「えぇ! もうそんな時間なの、ならもう少し早く起こしてよ」

「だから、私はアオちゃん達の召使いじゃないんだから、そんな気は回らないの。それに起こしに来たでしょ!」

「うぅ、確かに。ありがとう、ジェネちゃん。それじゃ準備したら駐屯所に行くから」


私に正論を言われてアオちゃんは不貞腐れそうになるが、すぐに気持ちを切り替えて支度を始める。私はテーブルの上に朝食を置いて仕事に遅れないように釘を刺してから部屋を出た。



ジェネさんに起こされて窓の外をぼーっと眺めながら何故、自分がここ(ショウオン村)にいるのかと思い返す。


私とアオは自国に戻ると、すぐにサイガを探すため、捜索に長けた魔法や加護を持つ人材を募ったが、なかなか見つからなかった。しばらくすると父は早々に募集を打ち切り、私たちに縁談を持ちかけてきた。


父や国がそもそも本気でサイガを探す気がないと分かり、私はアオと相談して国を抜け出した。愚かな事だと周りは言うかもしれないが関係ない、私は自分の気持ちを優先した。


案の定、国から追手が来たが全てアオと2人で返り討ちにしたら、王家から追放されてしまった。正直、少し寂しい気持ちもあったが、母の密偵に渡された手紙には応援する内容が書かれていて涙が零れた。アオの母も同じ気持ちのようで、応援する旨の手紙を貰っていたので安心した。


父から勘当され母たちからの僅かな援助だけで魔族領に向かうには限界があった。

そんな当てもない旅を続けていた時に偶然、出会った元前衛小隊の1人……副隊長のアーロンさん。今、ここに居る事ができるのは彼のおかげだ。


彼は元前衛小隊の隊員たちと一緒に隊商を立ち上げて各国を旅していた。副隊長の時に度々、サイガと話していた私の顔を覚えていたみたいだが、偶然、町で見かけた時は他人の空似だろうと思い、声をかけるのは止めたそうだ。


だが、どうしても気になり後を付けたところ、宿屋の食堂で冒険者たちに絡まれている私たちを見つけて助けてくれた。私たちがウラノス皇国の王女本人だと分かると大変に驚いていた。


その後、私たちが行方不明となったサイガを探すために魔族領を目指している事を伝えると旅の同行を申し出てくれた。すごく嬉しかったが、何故そこまでしてくれるのか聞いてみた。


「申し出は有難いのですが何故、助けてくれるのですか? 私たちにそこまでする義理はないでしょう」

「何故って言われても分かりません。ただ、サイガ隊長が行方不明になったと聞いて隊商の連中に話したら、全員が『なら探しに行かないとな』って言ったんで、なら一緒に探しに行こうと思ったんです」


特に理由はないと言うと、アーロンさんは苦笑いをして頭を掻いた。その姿が少しサイガに似ていて何だか嬉しくなった。それから私たちは魔族領に入り旅の途中で魔物に襲われていた魔族で獣人のセップさんを助けて、そのままショウオン村に案内された。



急いで準備をすると、ボクはジェネちゃんが準備してくれた朝食を頬張りながら部屋を出る。受付でジュラちゃんにも挨拶して足早に警備隊の駐屯所を目指す。まだ、ちゃんと目が覚めていないお姉ちゃんの手を引きながら歩いているとセップさんに声をかけられる。


「おはようございます、アオさん、マヤさん。もう村には慣れましたか?」

「おはよう、セップさん! うん、だいぶ慣れたと思うよ。色々と助けてくれてありがとう」

「いいえ、こちらこそ魔物に襲われているところを助けてくれて感謝しています。どうも最近、魔物の様子がおかしいようです。同じ魔族なら意思疎通も出来ますが、魔物だとそうもいかず苦労しますよ」


セップさんは顔を顰めながら、このジュウカン領の治安の悪さに愚痴をこぼした。そういえばアーロンさん達は無事に人族領に戻ることは出来たのか気になりセップさんに聞いてみた。


「セップさん、アーロンさんたちは人族領の境界地域まで辿りついたのかな?」

「えぇ、大丈夫だと思いますよ。案内した魔鳥の話によると、無事に辺境の村ダオウンに着いたそうです。失礼ですが、あんな辺境で何の商売をするつもりですか?」

「えーっと、それは多分、人族領から入ってくる資源や道具が目当てじゃないかな。あそこで儲けようとは思ってないらしいよ」


ボクの適当な言い訳にセップさんは納得したらしく、1つ頷くと引き留めたことを謝罪して去っていった。どうやらボクやお姉ちゃんの魔法を見たセップさんは呪術と勘違いしたらしくボクたちの事を上位の魔族と思っているようだ。


ちなみにボクたちが他の部族と意思疎通できないことは、そこまで気にしていないらしい。魔族でも得手不得手あるらしく、獣人のセップさんみたいに他の部族との意思相通が得意な魔人もいれば、鬼人や人間みたいに苦手な人もいて、ごく稀れに全然できない人もいるそうだ。


――――――――


少し遅刻した事に引け目を感じながら、正門近くにある駐屯所に入ると、警備隊の皆に遅れて来た事を誤魔化すように元気な声で挨拶をする。


「ごめ〜ん、今日もちょっと遅れちゃったかな?! スマソ、スマソ!」

「何を言ってるんだ、アオ? それより、いつも言っているが遅刻は厳禁だ。俺たち警備隊は村の安全を守っている。時間を守れないヤツが村を守れると思うな」


警備隊長のジアリさんがじろりと睨むと、いつもの小言が始まった。お姉ちゃんはそそくさと他の警備員と巡回に出ていった。あまりにも薄情なお姉ちゃんに唖然としているボクに延々と小言を言い続けるジアリさん。


最近、隊長になったジアリさんは、少し気合が空回りしているそうだ。なんでも前の隊長がとても優秀だったらしく、何かと比べられて気にしているらしい。確かオウカさんという名の女性で剣の道を極めるべく旅に出たとジェネちゃんが言っていた。


魔族領に入ったはいいが、どうやってサイガを探そうか迷っていたボクたちにセップさんが隊長が居なくなり、人手が不足しているショウオン村の警備隊を紹介してくれた。サイガを探すにも拠点は必要だと思ったボクたちはすぐに快諾した。


魔族領の生活にも慣れてサイガを探すための拠点もできた。あとはサイガを見つける為の情報を集めて手掛かりを探すだけだ。忍びであるボクと【占いの神の加護】を持つお姉ちゃんで必ずサイガを探し出す。ジアリさんの小言を聞き流しながらボクは決意を新たにした。

お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。また、何か感想を頂けると嬉しいです。

<(_ _)>


「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品も投稿しています。こちらも読んで頂けるとありがたいです。

<(_ _)>

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