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080 クズノセ対カーズ

呪術から解放された俺はシノジとの距離を瞬く間に詰めると、急に目の前に現れた俺に驚き固まるシノジに問答無用で攻撃を仕掛ける。


まずは前蹴りで意識を下に向けさせると、シノジは見せかけに軽く放った前蹴りをとっさに防ぐが、手応えの無さに驚き顔を上げて俺を覗う。だが、俺はもう既に次の攻撃に移っていた。


俺は両手を振り上げ、前蹴りで上がった足を下ろし踏み込むと、シノジの顎に手刀を振り下ろす。左右から刹那の差で打ち抜かれた顎はシノジの脳を高速で揺らし、何度も頭蓋骨にぶつける。


滅心磨刀流刀打『尖叉(せんさ)』……左右の手刀を相手の顎に一瞬の差で打ち抜き脳を揺らし、意識を刈る手刀技。


尖叉せんさが決まり、激しく脳を揺らされ意識が飛んだシノジが膝から崩れ落ちた。


地面に横たわるシノジを見下ろし、顔をカイの方に向けると、呆然と立ち尽くしていたカイが我に返る。


「……失礼しました。魔王選定の儀、第1戦の勝者はサイガ様です!」


カイが俺の勝利を宣言すると、俺はボロボロになった体を引きずりながら決闘場を後にした。



まさに死闘だったな……。まさか、シノジを倒すヤツがいるとは思わなかった。シノジも子供とはいえ、仮にも俺たちと同じ魔王だ。性格に問題があるが、実力は認めている。俺は少しだけサイガという男に興味を持った。


俺がサイガを見詰めていると、クズノセが声をかけてきた。


「カミニシ、見たかい? いや〜、サイガは凄いね。まさかシノジさんを倒すとは、驚きだね」

「ああ、そうだな。だが、シノジも舐め過ぎだ。相手の実力が分かった時点で、第4段階の呪術を使っていれば結果も変わっていた」


結局、シノジは第4段階の呪術を発動することなく敗れてしまった。アイツの第4段階の呪術は強力だ。使っていれば、まず間違いなくサイガを殺すことができた。ただ、強力なだけに魔素の消費量は莫大だが……。


「まぁ、確かにね。だけど、シノジさんは魔王の中でも魔素の保有量は1番少ないから、発動に慎重になるのは仕方ないよ」

「………確かにな。それにこれから成長すれば取り込める魔素も飛躍的に増えるだろう。アイツはまだ若い」


決闘場を下りて試験官から治療を受けているサイガを見ながら会話をしていると、試験官がやってきた。


「クズノセ様、お話し中のところ、大変申し訳ありません。これより魔王選定の儀の第2戦を開始したいと思いますので、決闘場にお上がりください」

「あぁ、わかった。すぐに向かうよ。それじゃ、カミニシ、行ってくるよ」


笑いながら手を振り決闘場に向かっていくクズノセを見送りながら、俺はアイツの対戦相手に少しだけ同情した。



俺が試験官から治療を受けているとクズノセが決闘場に上がり、二回りほど大きな熊の魔獣と対峙する……確か組み合わせ表にカーズと書かれていたはずだ。クズノセの方を見ると武器らしきものは持っておらず、俺と同じく無手で戦うみたいだ。


カイが決闘場に上がり2人に戦いの準備はできたか声をかける。


「クズノセ様、カーズ様。お2人とも準備は大丈夫でしょうか?」

「あぁ、問題ないよ。いつ始めても構わない」


カイの問いにクズノセが答えて、カーズは無言で頷く。


「……それで始めさせて頂きます。魔王選定の儀、第2戦、始め!」


開始の宣言を受けてすぐにカーズが動き出す。巨体からは想像できない速度でクズノセに突っ込んでいくが、クズノセは余裕で躱し、ひらりと横に跳んで着地すると同時にクズノセが蹴りを放った。


鈍い音とともにカーズの脇腹にクズノセの足がめり込むと、あまりの苦痛にカーズがうめき声を上げるが、クズノセはお構いなしに蹴りを放ち続ける。前蹴りに踵落とし、下段蹴りと多種多様な蹴り技を披露してカーズを追い詰めていく。


クズノセの猛攻にカーズは堪らず蹲るが、クズノセが容赦なく蹴り続けるとガンと鈍い音がして連撃が止まる。俺は何が起きたのか疑問に思いカーズの体を良くみると、岩石のように硬くなり表面がざらついていた。



僕が蹲るカーズに回し蹴りを放つ瞬間、頭の中に彼の意思が伝わってきた。


<呪術:剛岩武蹲 (ゴウガンフソン)>


カーズが呪術を発動すると、全身が岩のように硬くなり攻撃を弾いた。軽く痺れる足を戻して、少し距離を取り様子を覗うと、呪術を解き元の姿に戻ったカーズが立ち上がり僕の方を向く。


再び僕と対峙したカーズは先程と打って変わって、じりじりと慎重に間合いを詰めてくるので、僕は苦笑し構えを解くと、カーズの手が届く距離まで無造作に近づく。ふざけた僕の態度を見たカーズは、怒りの咆哮をあげながら立ち上がり、爪を立てて振り上げた。


僕は猛烈な勢いで迫ってくるカーズの爪を体を後ろに反らして躱すと、カーズは両腕を広げて掴みかかって来た。僕は両腕を搔い潜り懐に入り腰を落とすと、カーズの顎を目掛けて足刀を蹴り込んだ。


顎を打ち抜かれたカーズは白目を剥き崩れ落ちそうになるが、獣の本能なのか分からないが何とか踏み留まってみせた。僕はあまりの執念に再び苦笑すると、呪術を発動する。


「呪術:斬飛猟音 (サンピリョウロン)」


意識が朦朧とするカーズを目掛けて回し蹴りを放つと、僕の足がカーズの首に当たる瞬間、音速の空気の刃が放たれ首を切り飛ばし、カーズは今度こそ膝から崩れ落ちた。


カーズの胴体が地面に倒れると同時に、切り落とされた首も地面を転がり決闘場から落ちる。僕が首を切り落とした時に付いた頬の返り血を拭い、カイさんを見ると、すぐに僕の勝利を宣言する。僕は勝利を確認し決闘場を下りると、治療を受けているサイガと目が合ったので、軽く笑いかけて会場を後にした。

お読み頂き、ありがとうございます。

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また、「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品も投稿しています。こちらも読んで頂けると嬉しいです

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