075 魔王の候補者
こんにちわ。
新年早々に2作品の投稿を始めて、あわあわしています。
本日も何とか2つとも投稿できました。
「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品です。こちらも読んで頂けると嬉しいです
<(_ _)>
気絶した白狼を地面に置くと、老人の所に向かうサイガ……結果から見れば圧勝といっていいだろう。相手の呪術を受け、そして、破ってみせた。しかも戦った相手は死んでいない。甘いといえば甘いが、それだけの実力差があったということだ。
叔父に頼まれて参加した魔王選定の儀だったが、なかなか面白いものが見れた。それに彼と多少なりとも縁が持てたことは良かった。
もうそろそろ会場に戻らないと、僕も不合格になるかもしれない。とりあえず、彼も何とか合格できるだろう。他に見るものも無さそうなので、僕は急いで会場に戻ることにした。
◆
老人の懐から割符を探して合わせるが、これは「一」の割符だったみたいで合わなかった。次にオオカカにするか、若い男にするか迷ったがオオカカがどこに割符を持っているか分からなかったため、とりあえず、男が割符を持っていないか確認する。
『サイガ、圧勝だったわね。腕は大丈夫なの?』
「あぁ、問題ない。外殻がしっかりと守ってくれたよ。魔紅玉を食べて額の外殻以外も地味に進化していたのかもしれん。戦っている時に思ったが、外殻の強度が高くなったような気がする」
男の懐から割符を探しながらリンに答えると、小さな袋を見つけ、中身を確認する。袋にはお金や宝石に呪符、そして割符が入っていた。
男の割符と自分の割符を合わせると「十」の木札になり、これで会場に戻れると安心する。俺は急いで戻らないと最終試験に残れないかもと思いつつも、背中を切られ倒れている男を見下ろす。
俺は腰袋に入っていた「死免蘇花(白)」を取り出すと、男の背中に当て呪術を発動する。淡い光に包まれて男の背中の傷は次第に小さくなり無くなった。とりあえず、これで死ぬことはないと安堵し、残り2人も治療した方が良いか確認するが、気を失っているだけみたいなので特に何もしなかった。俺は3人を樹木の下に運ぶと、全速力で会場に戻った。
◆
全速力で走るサイガの後を付いて行く……物凄い速さで周りの景色が流れていく。もし、生身の体だったら、絶対に付いて行けなかっただろう。私は想像を絶する身体能力に舌を巻く。
サイガが傷ついた男を助けたことを思い出し、つくづく不思議な男だと私は思う。理由があったにせよ、魔王だった私は容赦なく殺そうとしたくせに、その一方で助けられる者は迷いなく助けようとする……本当に不思議な男だ。
もしかしたら、サイガなら私の願いを叶えてくれるかもしれないと、思わず期待をしてしまう。
◆
会場に戻り受付を済ませると、すぐに森中に響く爆発音が鳴った。どうやら試験終了を告げる花火が打ち上がったらしい……すっげー、ギリギリじゃん。
なんとか最後の枠に滑り込む事ができた俺は冷や汗を拭い、既に待ちわびているだろう7人の受験者のもとに向かった。
野営地の中で最も大きなテントに入ると、合格した受験者が各々気が向くまま適当に座っていた。合格者の中には魔人の他に魔獣、魔蟲、魔鳥もおり、知っているヤツはいないか見渡していると、クズノセの姿を見かけたので、声をかけようと近づく。
「クズノセも合格か。まぁ、当然といえば当然なのか?」
「サイガも合格したんだね。なんで最後、疑問形なんだい?」
「いや、すまない。ある程度、実力は分かっていたつもりだったんだが、よくよく考えれば、全然知らないことに気づいた」
俺が正直に話すと、クズノセは苦笑いをして肩をすくめる。
「僕もサイガの事はよく分からないけど、サイガらしいよ」
クズノセは笑いながら、俺の真似をしてやり返してきたので、思わず俺も苦笑いを浮かべる。そんな下らないやり取りをしていると、最高試験管のカイがテントの中に入ってきた。
「皆様、合格おめでとうございます。これで最終試験に臨む8名が決まりました。この8名の中から王領『ジュウカン』を治める新たな魔王が誕生します。皆様8名は本当の意味で魔王選定の儀を受けることができる魔王候補者です」
カイは深々と頭を下げると、俺たち魔王候補者8名に賛辞の言葉を送った。
「最終試験、改め魔王選定の儀は3日後、森の入り口の野営地で執り行わせて頂きます。それまで皆様はゆっくりと休んで万全の状態で臨めるよう、この2日間をお過ごしください」
カイはそれぞれの魔王候補者にこの2日の間に必要なものを訊ねると、丁寧に頭を下げてテントから出ていった。
―――――――――――
カイが出て行った後、少しだけクズノセと話して別れた。割り当てられたテントに戻り荷物を置くと、少し横になる。3日後から始まる魔王選定の儀……魔王候補者8名による1対1の勝ち抜き戦。誰と戦うかは、まだ分からないが、全員が強者独特の雰囲気を纏っていた。
あまり考えても仕方がないと思い、俺は気持ちを切り替えるため会場の隅にある風呂場へ向かい、汚れと疲れを洗い流した。もちろん、リンが付いて来ようとしたので厳重に注意した。
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