074 白狼の呪術
明けましておめでとうございます。
新年ということで新たな作品を投稿しました。
正直、無謀な挑戦だと思いますが、応援して頂けると嬉しいです。
「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品です。こちらも読んで頂けると嬉しいです
<(_ _)>
あと、初めて感想を頂きありがとうございます! 新年早々、良いお年玉を頂き嬉しいです!
これからの執筆に気合が張りました。本当にありがとうございます<(_ _)>
サイガと名乗った魔人の男を観察する。黒髪に黒目の容姿は魔人では珍しい……確か魔族の始祖と呼ばれた魔人も黒髪の黒目ではなかったか。両手、両足、頭にはそれぞれ防具をしているが、武器は持っていないようだ。
魔人では珍しく無手で戦うのか、それとも、強力な呪術を持っていて武器は不要なのか……色々と考えるが、全ては戦えば分かることだ。魔人よりも高い知性を持つといわれるが、戦うことへの悦びを抑えられない……所詮、ワタシも獣ということか。
サイガの周りをゆっくりと歩き、様子を窺うが、なかなか隙を見せない。向こうから仕掛けてくる様子もなく、このままでは埒が明かない。痺れを切らしたワタシは状況を打破すべく呪術を発動する。
<呪術:場地踏覆 (バジトウフウ)>
ワタシが呪術を発動し地面を踏むと、大地が捲れて土砂の津波となりサイガに襲いかかる。サイガは避けようと横に跳ぶが、目の前に迫る土砂の津波が大きく飲み込まれてしまう。
目の前にできた小さな山を注意深く観察すると、一部が崩れて這い出ようとするサイガを見つける。ワタシは土砂の中から上半身を出したサイガを目掛けて飛び掛かった。
◆
<呪術:場地踏覆 (バジトウフウ)>
オオカカが地面を踏むと、いきなり大地が捲れ津波のように襲ってきた。目の前に迫る巨大な土砂の津波を避けようとするが、間に合わず飲み込まれてしまう。俺は土の中で、もみくちゃにされて前後左右が分からなくなり混乱する。
土砂に埋もれ混乱しながらも俺は窒息すると思い、必死に地上を目指し這い出ると、オオカカが口を大きく開き迫って来る。俺はとっさに左手を前に出して頭を庇うが、オオカカは容赦なく噛みついた。
まだ、腰から下は土に埋まったままで踏ん張れない俺は、左腕に噛みついたオオカカを必死に剥がそうとするが、上手く力が入らない。外殻に守られ牙は深く刺さっていないが、そのうち外殻ごと嚙み砕かれるかもしれない。
一か八か俺はありったけの魔素を左腕に集中すると、外殻が変形してオオカカの顎を内側から突き刺した。オオカカは何が起きたか分からず、左腕を離すと大きく後ろに下がり俺の様子を覗う。
その隙に俺は土砂から這い出ると、すぐに左腕を確認する。オオカカに噛まれた腕は、傷つき血も流れているが致命傷は無く、外殻も元に戻っていた。
オオカカを見ると口の中を刺されたせいで、大量の血を口から流し、化け物を見るような怯えた視線を俺に向けている。俺が1歩前に出ると2歩下がり、明らかに戦意が喪失しているようだ……。
俺はこのまま戦うのは難しいと判断し、降参を呼びかけようとした時、オオカカが呪術を発動した。
◆
土砂に下半身が埋まり身動きが取れないサイガの腕を噛み砕こうとした時、黒い手甲が変形してワタシの顎を内側から突き刺した。突然、激痛に襲われワタシは思わず口を開けると、サイガの左腕を離して後方に跳んで距離を取った。
サイガから離れると、ワタシはすぐに口の中を確認して、出血の割に傷が深くない事が分かり安心する。サイガの手甲を見ながら、先程の出来事を思い返す……手甲に刺された時、一瞬、左腕に魔素が集中するのが分かった。もしかしたら何かの呪術かもしれないが、とにかく、今はサイガの手甲にどんな仕掛けがあるか考えるより、態勢を立て直す方が先だ。
土砂から出たサイガは噛まれた左腕を確認すると、ワタシに近づいてきた。思わず大きく後退する姿を見て、サイガが哀れむ顔をする。
サイガの表情を見た瞬間、頭に血が上り、怒りで目の前が真っ赤になる。このワタシに同情するなどふざけるな! ワタシは荒ぶる感情そのままに呪術を発動する。
<呪術:葉似凍風 (バジトウフウ)!>
突然、サイガの周りに無数の氷の葉が舞い落ちると、幻想的な光景に呆然とし立ち尽くす。だが、次の瞬間、突風が吹き荒れて、幻想的な光景は崩れ去り、氷の葉がサイガを切り刻む。嵐が過ぎるのを待つカメのように縮こまるサイガに、ワタシは呪術を発動して追い打ちをかける。
<呪術:場地踏覆 (バジトウフウ)>
◆
オオカカの作り出した幻想的な風景に目を奪われていると、いきなり突風が吹き、氷の葉が全身を切り刻み、一瞬で凄惨な光景に変わる。俺は堪らず両手で頭を守りカメのように縮こまる。
いつ止むか分からない凶刃が舞う暴風に耐えている俺に、オオカカは呪術を発動すると、津波のような土砂が襲いかかる。
カメのように縮こまっている俺では迫りくる巨大な土砂の津波を避けることは不可能だ。それにもし運よく避けたとしても、オオカカが待ち構えており、今度は腕以外を食い千切られる可能性だってある。既に残された選択肢はあまりない……俺は覚悟を決めると呪術を発動する。
「呪術:釼清刈崩 (ニッシンゲッポウ)」
赤い魔素に包まれた右手を手刀に変えて、呪術を切り裂く釼をつくると、上段に構える。俺は容赦なく切り刻んでくる氷の葉を無視して、魔素を感知することに集中し、一番魔素が濃い箇所を見つけると、迷わず釼を振り下した。
ザッシュッ!
目の前に迫る土砂の津波に手刀が吸い込まれると、何かを切り裂く確かな手応えを感じる。俺が手刀を振り抜き周りを見ると、暴風は止み土砂の津波は俺を避けるように左右に別れて崩れ落ちた。
呆然とこちらを見ているオオカカを見つけて一気に距離を詰めるが、オオカカも俺に気づき、後方に飛んで距離を開けようとする。だが、俺の方が早く次第に距離が詰まっていくと、オオカカが距離を取るのを諦めて俺に飛び掛かってきた。
俺は半身になってオオカカを躱しながら頭を脇に抱え込むと、力いっぱい首を絞め上げる。必死に抵抗するオオカカを抑えて、顔面に何度も踵を叩き込むと、急にオオカカが大人しくなり、顔を覗き込むと白目を剝いて泡を吹いていた。
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