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073 占いと間違い

今年も今日が最後ですね。

新人ながら、ここまで読んで頂きありがとうございます。

新年(明日)から新作を投稿しようと思います。

2作の掛け持ちと新人ながら、無謀な挑戦と思いますが、もしよろしければ、新作の方も読んで頂けると嬉しいです<(_ _)>

会場を出て森の中を当てもなく歩いているが、誰とも遭遇しない。かなり注意して周囲を見渡すが、誰かが戦っている気配もなければ、尾行されている様子もない。


『サイガ、誰とも会わないわね。ひょっとして、嫌われてるの? 別世界の言葉でいう「ぼっち」?』


最近、俺よりも別世界の言葉を上手に使ってくるリンを無視して森を彷徨う。これだけ誰にも会わないと若干、不安を覚えるが、クズノセみたいな上位の受験者に会うのも避けたい。


思いっきり跳躍して上空から森の様子を確認したいが、受験者の中に魔鳥がいたので、下手に刺激をするのも考えものだ。色々と考えて、見ても分からないなら、感じればいいじゃんと軽い気持ちで、目を閉じ額の目を開き周囲の魔素を感知する。


期待せずに行った魔素感知だが、かなり遠くで高密度の魔素を3つ感じることができた。魔紅玉とは比べものにならないほどの魔素量だ。俺は急いで大量の魔素が集まっている場所に向かった。


目的の場所に近づくにつれて、激しい衝撃音が聞こえてくる。1対1の決闘ではありえない数多の音に、探している割符がそこにあるのではと期待させられる。


いよいよ目で確認できる距離まで近づくと、手ごろな樹木を見つけて素早く登った。枝の上に座り戦いの様子を覗うと、白狼の魔獣と男2人が三つ巴の戦いを繰り広げていた。



よく分からない状況に陥り混乱するが、とりあえず今は割符を死守することだけを考える。儂の手元にある割符は「一」の片割れだ。だが、残り2人も「一」の割符だと言って奪おうとする……儂は呪術で割符の持ち主を占った時の事を思い出す。


―――――――――――


森に入ってすぐに儂が呪術:一記当占(イッキトウセン)を発動すると、左手に持った紙には「オオカカ」と記されていた。儂の呪術は知りたいことを占って紙に記す。ただし、一筆で書き上げるため、複雑な答えになると占うことができない。


儂は割符の片割れを持っている受験者の名前を占った。何処にいるかも、占おうとも思ったが、一筆で書き上げるのは難しそうだし、書き上げても読めるかどうか怪しかったため断念した。


儂は自分の呪術を生かすため、2次試験に合格した19人の名前と顔を憶えており、素早く名前と顔を突き合わせていくと、「オオカカ」と白狼の魔獣の顔が一致した。


―――――――――――


儂の呪術はオオカカが片割れの割符を持っていると記したが、サッタと名乗る青年も「一」の割符を持っているといって、儂らから奪おうとする。儂の呪術は条件が厳しいため、発動できれば必ず当たる。


だがサッタが嘘をついているとも思えないし、嘘をつく意味が分からない。必死の形相で奪いにくるサッタ……儂は混乱するまま第2段階の呪術を発動する。


「呪術:一気刀閃 (イッキトウセン)」


儂は杖を模した仕込み刀を抜き、上段に構えて振り下ろす。儂に迫ってくるサッタの背後に巨大な刀が現れ、背後から切りつける。視覚外の一撃に何をされたか分からず、倒れたサッタの背中には大きな切り傷がついていた。


オオカカに呪術を見られてしまったのは痛いが、決死の覚悟で襲ってくるサッタを仕留めるには仕方がなかった。気持ちを切り替えて、オオカカに切っ先を向けて対峙すると、オオカカが儂の上を見ていた。儂も思わず顔を上げようとした瞬間、後頭部に強い衝撃を受け意識を失った。



呪術を発動したのだろうか、老人に切りかかろうとした青年の後ろに巨大な刀が現れ切り伏せた。白狼の魔獣か老人か、どちらの呪術か分からないが、なかなか厄介な呪術だ。とりあえず、2対1の状況は作りたくないので、俺は老人を仕留めることにする。


樹木の上から3人の戦いを伺っていた俺は、青年が倒され白狼と対峙する老人を目掛けて飛び降りた。重力に引っ張られ急速に落下する俺は、着地と同時に老人の首筋に手刀を叩き込み意識を刈った。


白目を剝いて倒れる老人を支えて地面におくと、白狼の魔獣と対峙する。いきなり現れた俺に驚いた表情をする白狼の魔獣……このまま戦闘を始めても良いのだが、なんとなく無粋と思い声をかけた。


「……俺はサイガ、『十』の割符を持っている。もし良かったら名を教えてくれないか?」

<………。ワタシはオオカカです。持っているのは『一』の割符です>


狼の魔獣から伝わってくる声は、どこか母性を感じる優しい声だった。まさか女性とは思わず、心の中で詫びる。目の前のオオカカを良く見ると、白い毛並みが美しく鋭い眼光には高い知性が窺えた。


「そうか、なら戦う必要は無いかもな。どうする、互いの割符を奪って別れるか?」

<……いいえ、戦いましょう。会場を出て、かなりの時間が経ちました。既に多くの合格者が出ているかもしれません。残りの枠は僅か……ひょっとしたら最後の1枠かもしれない>

「なるほどな、仮に1枠しか無かったら結局、戦うしかないか。それにアンタが持ってる割符が『十』って可能性もあるしな」


オオカカが訳が分からないといった表情をする。俺は苦笑いを浮かべ、懐から取り出した割符をオオカカに見せた。


「┣」と焼印された割符を見て、オオカカは一瞬目を見開くと、すぐに笑い出した。


<フフフ、ハハハハ。確かにワタシが持っている割符が『十』の可能性がありますね。試験管も所詮は人ですね。きれいに左右に割るのが難しかったのでしょう。おかげで何故、『一』の割符を3人で奪い合うことになったか分かりました>

「なら、よかったよ。ちなみに俺も最初、見た時は驚いた。ひょっとしたら、カイがわざと指示したのかもな。なんとなくアイツは性格が悪そうだ」


俺は青髪の鬼人の顔を思い出し、少し嫌そうな顔をした。オオカカは俺の表情を見て笑うと、眼光を鋭くして言葉をかける。


<とにかく、お互い戦うしかないわけですね。なら、これ以上話しても情が沸くだけです。もはや言葉は不要……戦いましょう>

「あぁ、そうしよう」


オオカカの言葉を受け、俺は闘志をみなぎらせると構えをとった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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よろしくお願いします<(_ _)>

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