063 魔素の感知
すいません、今回は短くなりました。
ちょうど、良いところで終われなくてすいません<(_ _)>
魔王選定の儀まで残り1ヶ月を切った。今は肉体の鍛錬を減らして呪術を極める修行に重きを置いている。既に武術「滅心磨刀流格闘術」の技は全て思い出し、使いこなすことができる。それに今では魔素を感知することも出来て、呪術を極める準備は整った。
魔素を視認できるようになってからは、魔素を放出して消えるまで額の目で視ることにした。俺の魂に染まった魔素は赤く光る粒子で、放出すると段々と色が抜けて、元の色の無い粒子に戻った。この魔素の色が抜けていく様子を視ていると、喪失しているのではなく、自然に還元している感覚になる。その感覚を覚えると、徐々に大気にある魔素も感知できるようになり、今では額の目を通さず魔素を感じることができる。
――――大気にある魔素を感知しながら、これまでの事を思い返しているとリンが声をかけてきた。
『何、ぼ~としてるの。お腹でも空いたの?』
「相変わらず失礼なヤツだな。ただ、これまでのことを思い返していただけだ」
リンをじろりと睨み、再び、魔素の感知に集中する。俺は『呪術擬き』が記された呪符に手を当て呪術を発動させる。
呪術:遊弦耳好 (ユウゲンジッコウ)
呪符から初めて聴く音楽が流れる……聴いていると、どこか懐かしく寂しい曲ということはなく、唯々やかましい音が単調に鳴りまくった。
「なんなんだ、このうるさい音楽は」
『何よ、私が準備した曲に文句あるの? 良い曲じゃない、私は嫌いだけど』
リンの戯言は無視して『呪術擬き』を発動した時の魔素の動きを思い出す。俺の魔素を呪符が吸収すると、直ぐに魔素を放出して大気中の魔素とぶつかり、空気が震えて音と鳴った。リンに『呪術擬き』を発動した時に感じた魔素の動きを伝える。
『ふ~ん、ちゃんと感知できてるわね。合格よ。じゃあ、早速、ララと戦ってみて。今から呼んでくるから!』
リンは俺に合格を告げると、ララがいる執務室に一直線に飛んでいった。
◆
「死免蘇花」の人工栽培についての報告書を読み、今後、試してみる土の選別についてノーベと話し合っていると、姉さんが部屋に入ってきた。
『ララ、お疲れ様。急で申し訳ないけど、少し時間を作ってもらえる?』
「どうしたの、姉さん? そんなに急いで。今、『死免蘇花』の人工栽培についてノーベと話しているところなの。時間を作るのはいいけど、少し待ってもらえる?」
少し嬉しそうに見える姉さんを宥めて、こちらの事情を説明した。
『そうね、ごめんなさい。サイガが魔素を感知できるようになったの。私たちと同じぐらいにね。だから、アイツと戦ってほしいの?』
「本当なの?! 私たちと同じぐらいって。いくら何でもありえないわ!」
姉さんから衝撃的な言葉を聞いて、思わず声が大きくなる。
『フフフ、私も驚いているわ。けど、さっき「呪符擬き」を発動した時、魔素の動きを正確に言い当てたの』
「……信じられない。まだ、修練を始めて2ヶ月程度よ。そんなに早く習得できるものなの」
魔素の感知はできるかもしれないと思ったが、正直、ここまで高い能力を身に着けるとは思わなかった。サイガの修練について姉さんに任せっきりで、ほとんど報告は聞いてなかった。魔眼に目覚めたのは知っていたが、それ以降は特に気にすることはなかった。
『まぁ、驚くのは仕方ないわ。近くで見ていた私も同じよ。ただ、これで新たな呪術を覚える下地は出来たわ。ねぇ、ララ。サイガと戦ってくれる?』
「…………。ええ、分かったわ。今夜、中庭に連れて来て」
私は覚悟を決めると、姉さんにサイガと戦うことを承諾した。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします<(_ _)>




