表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/202

055 魔王と再会

『ちょっと、起きなさい! いい加減に目を覚まして、サイガ!』


どこか聞き覚えのある声で目を覚ます。窓を見るとまだ日は高く、さほど時間は経っていないようだ。


目の前にはアメキララに似た少女が宙に浮いて俺を見ている。……どうやら、まだ夢を見ているようだ。


『夢じゃないわよ。あなた、私の事を憶えてないの?』


幻が勝手に喋っている……。誰だ、コイツ? なんか馴れ馴れしいな、憶えているも何も初対面です。


『………。あなた、性格変わっていない? 戦った時と違うような感じがするんだけど』


すごいな、俺は喋っていないのに会話が成立している。【知識の神の加護】や【二進外法】は会話というか、もっと一方通行的な感じだったから、何だかちょっと嬉しい。あまり現実逃避するのも駄目だな。目の前の少女の幻から凄く睨まれている。


「あ~、悪い。ほとんど人間だった時の記憶がないんだ。それに性格が変わったっていうが、それも分からん。アンタは以前の俺を知っているのか?」

『記憶がないって……呪術の影響かしら? 私も初めて使った呪術だから、どんな影響があるか詳しく分からないのよね。ちなみに私は魔王アメキリンよ。人間だった時のあなたと戦って負けたの』


だよな、アメキララにそっくりだし、流れ的に姉である可能性が高いことは俺でも分かる。あとは何で行方不明だった魔王が俺の前に現れたのか……。戦いで負けたといったが、俺に殺されたということか。現状を理解しようにも情報が少ないな。


「知っているなら、色々と教えてくれ。俺はアンタを殺したのか? そして、今のアンタはいったい何なんだ?」

『……そうね、あなたよりは知ってると思うわ。まず、あなたは私を殺していない。殺されかけはしたけどね。命が尽きる寸前に呪術を発動したの。命と引き換えにからだこわし生まれわる「呪術:器死廻生キシカイセイ」をね』

「それで俺は呪術をかけられ、人間から魔族に生まれ変わったというわけか。それでアンタは何なんだ?」


目の前で宙に浮いている魔王に何者なのか尋ねた。


『私? 私も同じよ、生まれ変わったの。けど、中途半端なままだけど。肉体は無いし会話ができるのはあなただけだし。……魔素が足らなかったのかしら?』

「なぜ、今なんだ。俺が魔族になって、かなり時間が経っている。いつでも俺の前に現れる機会はあっただろう」

『う~ん、そうね。簡単に説明するわね。「呪術:器死廻生」は術者、被術者を転生させる呪術なの。発動条件は命を使うこと、正確には生まれ変わるから違うかもしれないけど。少なくとも死んでも良いという覚悟は必要よ。そして、術者は被術者にねがいを託すの。そのねがいが叶うと術者も生まれ変われるの。だから、ねがいが叶わない限り術者は生まれ変われない、死んだままよ』


なるほど、アメキリンが生まれ変わるための条件が揃ったのが、ついさっきだったということか。そして、条件の1つは俺が呪術を口にすることだったのだろう。ただ、呪術を発動した時の魔力が少なかった為、肉体までは復活できなかった。


分かったような、分からないような中途半端な感じだな。よし、とりあえず【知識の神の加護】が憶えているから後でもう一度、確認しよう!


『言い忘れたけど、あなたの加護はもう無いわよ。私が生まれ変わる時に依り代として使わせてもらったわ。「神の加護」っていうから大層なものを想像していたけど、魔素と意識の融合体みたいなものなのね。昔、似たような物を生み出す呪術を使う魔族がいたわね』

「………ちょっと待て、何を言っているんだ。【知識の神の加護】は、もう無いのか? それじゃ、これから別世界の言葉や知識は誰が教えてくれんだ!」


衝撃の事実を突き付けられて思わず俺は叫んでしまう。


『別世界の言葉や知識って……。心配するところ、そこなの? まぁ、十全じゃないけど、私が知っていることは教えられるし、無いものは仕方ないんじゃない?』

「なんで、そんな他人事みたいに言えるんだ……」

『だって、他人事だし』

「………………………」


なんて酷いヤツなんだ。俺の趣味を奪いやがって……。やっぱり、魔王は人族の敵なんだ、少なくとも俺にとっては敵だ。魔王なんて生温い、大魔王だ! 別世界の言葉でいう「ビビンバ」「フルート」……いや、違うな。くそっ、こんな時に加護が使えないなんて。


『…………ひょっとして、「クッパ」と「ピッコロ」?』

「!!!! それだ! なぜ、分かるんだ! 神か、それとも『ググった』とか?」

『ごめん、ちょっと何言ってるか、分かんない。依り代として使わなかった僅かに残った部分に聞いたら、たまたま、教えてくれただけよ』

「ということは、まだ【知識の神の加護】は完全消滅した訳じゃないんだな?」

『まぁね、1割も残ってないと思うけど。あと、私しか使えないわよ』


よし、問題無し! 別世界の言葉でいう『モーマンタイ』だ。とりあえずギリギリで趣味は確保できた。あとはコイツのことをノーベさんに知らせるかどうかだな。


『そうね、知らせた方がいいと思うわ。多分、ノーベは無理だけど、妹なら私のことを感じることができると思うわ。私と同じぐらい魔素を感知する能力が高いから』

「そうか、なら直ぐにノーベさんに知らせるか」


部屋にあった呼び鈴を鳴らし使用人にノーベさんを呼んでもらい、魔王アメキリンが見つかったことを伝えた。普段は冷静なノーベさんが目を大きく見開き驚く姿が面白かった。詳しく説明できないので、アメキララを呼んでほしいとお願いするとノーベさんは足早に部屋から出ていった。


しばらく待っていると廊下から誰かが走ってくる気配がしたので、俺が扉を開けるとアメキララが飛び込んできた。


「サイガ、姉さんが見つかったって、本当なの!?」

「あぁ、見つかったっていうか、ここに居るぞ」


俺が左肩辺りを指差して言うと、アメキララは怪訝な顔をして指差した空間をじっと見つめている。そして、急に目を見開き驚きの表情をすると俺の方を見る。


「サイガ、これはどういうことなの?! 姉さんの存在は感じるのに何も見えないわ……」


俺は苦笑いを浮かべ、魔王アメキリンが生まれ変わった経緯を説明した。もちろん、所々でアメキリンから補足を受けながら……。

お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。

よろしくお願いします<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ