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135 暴走する魔獣

一体、どうしてこんな事になったんだ……。俺はジュウカン領にある名もない集落を襲おうとする魔物たちの後を追い走り出した。


――――――――


俺は自らが治める王領ワントンに戻り、すぐに配下の者たちにジュウカン領に向かっている同胞たちを戻すように伝達を命令すると、1人の文官が青い顔をして、ネズミの魔獣であるヘイジャーシュたちも差し向けたと報告した。


……ヘイジャーシュは、数多くいるネズミの魔獣の部族の中でも、狡猾で残忍な性格をしており、体がとても小さく巨大な魔物の体内に入って操る能力を持ち、狩りや自衛に使っている。しかも、族長は第2段階の呪術まで習得しているみたいだ。


そんな特殊な力を持つヘイジャーシュは人族に対して強い恨みを持ち、同胞の中でも異質な考え方をしており、人族領に隣接しているのにも関わらず、何も思わないジュウカン領の住民に対しても、強い怨みを持ち嫌悪している。


正直、逆恨みもいいところで同胞に加えるか躊躇ったが、その魔物を操る能力と人族に対する恨みの大きさから、今回の人族領への侵攻作戦に参加させた。だが、俺がジュウカン領の魔王になれなかった今、奴らがどのような行動に出るのか予想がつかない。


……今の状況を考えると文官が自領に戻るように伝令を出しても、奴らが素直に従うかどうか微妙なところだ。俺は溜息を吐きたくなるのを我慢して、地面に座り平謝りする文官を立たせると、急ぎ奴らに直接会って命令すると言い、ジュウカン領に向かった。


――――――――


俺は配下の馬の魔獣を走らせ、何とかヘイジャーシュたちが暴走する前にジュウカン領に着く事ができたが、嫌な予感は的中して奴らは巨大なオーガを操り、魔物の群れを率いて小さな集落を襲おうとしていた。


「おい、止めろ。同じ魔族を襲うなんて許可した覚えはないぞ」


急いで近くにある丘の上に駆け上がり配下の馬から降りて待機させると、集落を襲おうとしている魔物たちのところに向かい声をかける。そして、俺の声に反応した群れの中心にいる一際大きなオーガが、こちらを振り向き睨みつける。


<カミニシレンカ、一体、何シニ来タ、負ケ犬ガ! 貴様ガ魔王ニナレナカッタセイデ、俺タチノゾクチョウガ、コロサレタゾ>


オーガの中にいるヘイジャーシュが憎悪の意思を送り、俺のせいでシュウオン村を襲った族長がジュウカン領の新たな魔王に殺されたと伝えた。確かに俺はサイガに破れて魔王になれなかったが、奴らの族長が勝手にショウオン村を襲って返り討ちにあっただけで、俺を恨むのは筋違いも良いところだ。


「ふざけるな、お前たちの族長が勝手に村を襲い、そこを治める魔王に殺されただけだ。俺を恨む理由がどこにある。それに魔族の世界では、弱肉強食、下剋上が当たり前だろう。ただ単にお前たちの族長が弱かっただけで、俺を恨むなんてバカバカしい。もし、死にたくなったなら、そもそも他領で好き勝手に暴れるのが間違っているんだ」


俺がオーガの中に隠れるヘイジャーシュに、恨むなら何も考えずに他領で暴れ回ったお前の族長を恨めと強く意思を込めて話すと、オーガの顔が醜く歪み俺に意思を送る。


<ウルサイ! ソレナラ、今カラ俺ガジュウカン領ノ腰抜ケ共ヲ襲ウノモ俺ノ自由ダ。貴様ニ止ケル権利ハナイ!>


オーガを操るヘイジャーシュは、俺の言葉に逆上し、もはや話すことはないと告げて咆哮を上げると、大勢の魔物を引き連れて集落の方を振り向き走り出す。そして、集落への襲撃を阻止するため追いかけようとする俺の目の前に巨大な3体のオークを差し向ける。


俺の前に立ちはだかる3体のオークの口の中には赤い目をしたヘイジャーシュがおり、憎悪の思念を飛ばしてくる。だが、集落を襲おうとしている魔物たちを早く止めたい俺は、早々に討伐するべく、奴らの思念を無視して斬りかかった。



僕たちが休憩していると今日の目的地である集落に魔物たちが向かっていくのが分かり急いで駆けつけると、巨大なオーガを中心とした魔物の群れと遭遇する。僕たちの前に立ちはだかる大勢の魔物は、人族領の魔物と違い、どこか統率されており、群れというより軍隊といった印象を受けた。


僕は注意深く魔物の軍隊を観察して、中央にいる巨大なオーガが、周りの魔物たちを従えて統率している指揮官だと見極める。……人族領に生息するオーガは決して他種族の魔物と群れることはないが、魔族領のオーガは違うようで、オークやゴブリン、コボルトなど多種多様な魔物を従え指揮している。


意思を持ち魔物を率いるオーガを見た僕は、もしかしたら言葉が通じるかもしれないと僅かな期待を込めて集落を襲うのは止めてほしいとお願いするが、オーガは醜く顔を歪ませ、雄叫びを上げて僕たちに魔物たちを差し向けた。


やはりこのオーガも所詮魔物だと分かり溜息をつきそうになるが、そもそも狂暴で邪悪な魔物が、素直に従うはずはないと気持ちを切り替えて、すぐに魔法を放つ。


「強襲の雷雨 (ライトニング・スコール)」


僕が意識を上空に向け大量の魔素に干渉すると、魔物たちの頭上に雷の豪雨を落とす。その落雷で瞬く間に多くの魔物が黒焦げとなり、周りの空気は帯電してパチパチと音を鳴らす。一瞬で多くの仲間が倒され呆然とする魔物たちに、すかさずティアが追撃の魔法を発動して、残りの魔物を追い詰める。


「大地竜の顎 (アース・ニードル)」


ティアが愛用の杖を地面に突き刺し、地中にある魔素を使って地表を細く硬く隆起させると、無数の土の槍が地面から伸びて魔物の残党を串刺しにする。


人間強化した僕たちの脳は、マヤ以上の魔素干渉能力を手に入れて広範囲かつ強力な魔法を何の後遺症もなく使う事ができるようになっていた。


たった2発の魔法で、100体近くの魔物を殲滅した僕たちを見た巨大なオーガは、残り少ない魔物を盾にして逃げようとする。しかし、オーガの逃走に気付いた僕が、すぐに肉体強化魔法を使い距離を詰めて追いつくと観念して立ち止まり、憎悪に満ちた視線を向けて残りの魔物たちと一緒に襲ってきた。



瞬く間に殆どの配下の魔物を討伐され狼狽する巨大なオーガは、自分と側近を除く全ての魔物たちに攻撃を命じて自らは逃走を図るが、肉体強化魔法で神速の速さを手に入れたアルスに追いつかれて阻止される。


オーガたちと対峙するアルスは、剣を構えると最大限に強化された肉体を駆使して、あっという間に巨大なオーガ以外の魔物を斬り伏せる。


……たった一振りで2体以上のオークやトロールを両断するアルスの剣技と膂力は凄まじく、あの剣神と呼ばれるセグメント総帥が霞んで見えるほどだ。もはや、人族でアルスに勝てる者はおらず、魔王でも余裕で勝てるのではないかと思ってしまう。


私が驚異的な戦闘能力を手に入れたアルスを見つめていると、突然、半身になり何かを避ける。遠くからでは良く見えないが、その動きからオーガが呪術か何かで攻撃をしていると分かり、私はアルスを援護に駆け付けるべく襲い掛かる魔物たちに魔法を発動する。


「氷雪鬼の寒獄 (アブソリュートゼロ)」


私は襲いかかってこようとする魔物たちに手をかざすと、絶対零度の空間を作り出し、全てを凍り付かせて魔物たちを不格好な氷像にする。そして、続けざまに魔法を発動して不出来な氷像たちを粉々に砕いた。

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また、「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品も投稿していますの、こちらも読んで頂けると、なお嬉しいです。

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