131 魔眼の修行
「――――で、あんた達マガミ一族に会いに来たというわけだ。正直、ここで何をすれば良いか分からないが、もし、良かったら魔眼について何か知っているなら、教えて欲しい」
俺は額の外殻を指差してホシミ族の村で魔眼について占ったら「トンハイ領にいる魔眼の一族に会え」と告げられたので、ここに来たのだと説明すると、眼帯をした壮年の男性は腕を組んだまま、目を閉じ大きく頷いた。
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村長の家に案内してもらった俺たちは、いきなりライが村の広場で大きな声で魔皇が来たぞと叫び、そんな訳あるかと周りの住民たちから嘲笑される中、そっと戸を叩き、出てきた女性にミナニシに書いてもらった紹介状を渡して村長に会わせてほしいとお願いした。
俺の後ろで大声で叫び続けるライを見た女性は少し怪訝な顔をするが、紹介状を受け取り、しばらく待っていて欲しいと告げて家の中に戻ると、あまり待つことなく現れ、すぐに村長が会ってくれると言い、家の中へ案内してくれた。
いまだにライが馬鹿にした住民たちと稚拙な言い争いをしているが、俺は思う存分、議論してほしいと思い、ライを無視してアオたちに中に入るように促して自分も急いで村長の家の中に入った。
俺たちが中に入り客間に通されると、中には眼帯をした壮年の男性が待っており、俺に向かって頭を下げて、歓待の意を示したので俺は頭を上げるように言って手を差し出し握手をする。そして、敬語や敬称などは気にしないでほしいと告げて自己紹介をした。
「俺はサイガだ。ミナニシの紹介状にも書いてあったと思うが、魔皇の称号を持っている。だけど、あまり気にしないでくれ。ただ、少し強いというだけで、他に何もはない、普通の男だ」
俺の言葉を聞いた男は苦笑いを浮かべ、魔皇になるほどの強さを持つ男は普通じゃないと訂正し、次は自分の番だと自己紹介をする。
「私はこのサンガンの村の村長をしているマコトだ。そして、魔眼の一族であるマガミ族の族長をしている。サイガ君がここに来た理由も、おおよそ見当がついているが、念の為に教えてくれないか?」
マコトさんは自分が魔眼の一族マガミ族の族長であり、俺たちがここを訪れた理由も予想はついていると述べて席に座るように促し、改めて俺たちの口から、きちんと説明してほしいと言った。
俺はマコトさんの言葉を受けて、これまでの経緯を説明する。俺たちは魔神を探す手掛かりを求めてホシミ族の村を訪れ、そこで俺の魔眼には占いに似た能力があると教えてもらった。魔眼の能力を知る事ができれば、魔神の場所を見つける可能性も高くなり、旅をする上でも助けになると言われて、魔眼について占ってもらい魔眼の一族が住む村があることを知ったと説明する。
そして、俺の説明を聞き終えるとマコトさんは深く頷き、魔眼について説明を始めた。
◆
私は目の前に座る青年に魔眼について説明をしながら様子を覗う。私の魔眼では、相手の心を読むことは出来ないが、長年の経験からある程度のことは分かるつもりだ。
……サイガという青年は、若くして魔皇になったにも関わらず、全然偉そうではなく、増長した素振りも見せない。まだ、十代半ばぐらいにしか見えないのに、どこか達観した雰囲気があり、悪く言えばオッサン臭い。ただ、若さ故の傲慢さや浅慮さが無く好感が持てる。
私が若き魔皇について勝手に評価を付けていると、サイガ君が「あんたも魔眼を持っているのか」と聞いてきたので私は眼帯を外して魔眼を見せる。
「あぁ、私も魔眼を持っているよ。君と似た予知のような能力だ」
私が眼帯を外しながら能力について簡単な説明しようとすると、私の魔眼を見たサイガ君たちが、少しがっかりした表情をしたので思わず吹き出しそうになり、口元を押さえて期待に沿えなかったことを謝罪する。
「ぷっ、すまないね、普通の瞳で。まぁ、魔眼なんて普通は見ないから、つい何か特別な色や形をしていると思ってしまうのは分かるが、見ての通り普通だよ」
私は自らの魔眼を指差し、君たちと変わらない普通の瞳だと言い、サイガ君みたいな3つ眼の魔眼など伝説でしか出てこないと話すと、彼が微妙な表情をしたので過去にいた3つ眼の魔眼を持った魔族について説明する。
……過去に3つ眼の魔眼を持って生まれた者は、一族の中でも5人しかおらず、全ての者が強力な能力を持っていたらしいが、詳細は分かっていない。ただ、どの魔眼も能力を使うためには膨大な魔素を使う必要があり、大抵の者は能力を使う事ができなかったそうだ。唯一、能力が使えた者は2人だけで、マガミ族の始祖であるミコト様とその娘のメモト様だけだったと、サイガ君たちに話した。
私の話を聞いたサイガ君が、私の魔眼も能力を使うには大量の魔素が必要なのかと尋ねたので、実際に使ってみせようと述べてサイガ君とジャンケンをする。サイガ君は不思議そうな顔をしながらもジャンケンを始めるが、何度やっても私に勝つことができず、ムキになり何度も挑戦して白髪の少女から、いい加減にしろと頭を叩かれた。
結局、数十回に及ぶ勝負をしたが、サイガ君は1回も勝つことができず、非常に悔しがったので、苦笑交じりに私の魔眼の能力を説明する。
「まぁ、勝てないのは仕方がないよ。私の魔眼は、1秒先の未来が見えるんだ。ちなみに魔素を使う必要があり、今もずっと使い続けている」
私は左目の魔眼を指差し、開いている限り魔素を消費し続ける常時発動型の魔眼だと話す。しかも、魔眼ではない右目は普通の光景を映し、左の魔眼のみ1秒先の世界を見せるため、慣れるまで相当な時間が必要となり、普段の生活にも支障をきたすのだと自嘲気味に話す。そして、私は説明を終えると、再び眼帯を付けて魔眼の発動が停止して魔素の消費が止まったことが分かり安堵する。
サイガ君は真剣な表情で私の説明を聞き終え、しばらく顎に手を当て沈黙すると、私の方を向き、結局、俺の魔眼の能力はどうすれば分かるのだと聞いてきた。
◆
「マコトさんの話は分かったが、結局、俺の魔眼の能力って一体何なんだ?」
俺はマコトさんの話を興味深く聞いていたが、なかなか俺の魔眼の話にならなかったので、辛抱できず話の腰を折って尋ねると、空気を読めとリンに再び頭を叩かれ、色々と質問したのアンタだと額の外殻を何度も指で突かれる。
そんなリンとのやり取りを見ていたマコトさんが、苦笑して魔眼の能力を知るための方法について説明する。
マコトさんの話によると、この村の奥にある祠に真眼鏡という神具があり、マガミ族では十歳になると、男女問わずその祠に籠り魔眼の能力を得る為の修行をするらしい。修行といっても灯りの無い真っ暗な祠で座禅を組み、三日の間、寝食せずに瞑想状態を保ち、最後に真眼鏡の前に立つだけで大したことはない。ただ、マガミ族全員が魔眼の能力を得るわけではなく、修行をしても何も得ずに戻ってくる者も多いみたいだ。
マコトさんは話し終えると、俺もその修行をして真眼鏡の前に立てば、自らの能力を知る事ができるかも知れないと祠での修行を勧めるが、普通は気候が良い夏の時期に行うらしく、この極寒の中で行う修行ではないと補足する。
苦笑しながら無理に修行をする必要はないと言うマコトさんを見ながら、俺はしばらく考え込んでこの寒さなら3日間ぐらい我慢できると判断すると、急ぎ祠まで案内してもらうようにお願いした。
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