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121 ハーピー討伐(2)

私たちは洞窟の最奥の部屋に辿り着くと、気配を消して中の様子を覗う。部屋の中は火口と繋がり吹き抜けになっており、空が飛べるハーピーたちなら自由に出入りできそうだ。追い詰められたハーピーたちが火口から逃げないように何か対策が必要だが、出口を塞ぐにしても道具もないし、何も思い浮かばない。


とりあえず、アオに部屋の中の詳しい様子を見てきてもらうと、呪術で存在を消して潜入したアオが戻ってきて私たちに報告する。


「中には魔族化したハーピーが2匹と鎖に繋がれた魔物たちがいたよ。多分、ハーピーたちが操る為に傍に置いているんだと思う」


部屋の奥には2つの玉座があり、そこに赤い羽根を4枚持つハーピーと同じく4枚の青い羽を持つハーピーが座っており、その前にアークゴブリンやナイトコボルト、ウォートロールなど強力な魔物が繋がれていたと説明する。


「分かりました。なら、まずは捕らわれた魔物たちをどうにかしないといけませんね、リンさん?」


マヤが鎖に繋がれた魔物たちをどうするべきか私に尋ねる。正直、ハーピーたちが逃げないように火口を塞ぐ方法も思い付かない私を頼りにされても困るが、この中で一番魔族に詳しいのも事実だ。私は必死に頭を動かして、これからどうすべきか考える。


「……そうね、まずはアオが呪術を使って、部屋に潜入して一番強そうな魔物を倒して。すぐに異変に気付かれると思うけど、その隙に私たちも部屋に侵入して、他の魔物たちをできる限り倒すわ」


まずは敵に気付かれる前に、なるべく戦力を削りたいと思った私は、存在を消したアオに強力な魔物の暗殺をお願いする。捕らわれた魔物が殺されたことで、他の魔物たちが騒ぎ出し、敵の侵入に気付いたハーピーたちが、魔物たちを操り迎え討とうするだろうが、その前に私とマヤで可能な限り多くの魔物を討伐する。


「うん、わかった。それでもしハーピーたちが戦わず逃げ出したらどうするの?」


やはり、アオもそこが気になったようだが、私に有効な方法は思い付かず苦笑いを浮かべて首を横に振る。


「そうね、正直、何も無いわ。出口を塞ごうにも道具は無いし、そんな強力な呪術は持っていない。できるだけ速やかに魔物たちを倒して、ハーピーたちが逃げる前に討伐するしかないわ」


私は正直に自らの無策を恥じると、マヤとアオは首を横に振り自分たちも何も思い付かず、私に頼り過ぎたと謝罪した。本当に素直で良い娘たちだと思い、サイガには勿体無いと痛感して、なるべく早く目を覚ましてもらい、すぐに別れるように説得しようと心に誓った。



リンさんの提案を受け入れた私とアオは、すぐに行動を開始した。まずは強大なウォートロールを暗殺するためアオが呪術を発動して部屋の中に潜入すると、しばらくして、魔物たちが騒ぎ出す声が部屋の外まで聞こえてきた。


「アオが魔物を暗殺したようね。すぐにハーピーたちも気付くと思うから、私たちも部屋に入って魔物たちを倒しましょう」


リンさんが私の方を向き、部屋への突入を促すと、すぐに呪術で青い鎧を身に纏い物凄い速さで部屋の中に入っていった。私も遅れて部屋に入ると、既にリンさんが次々と魔物たちの首を刎ね、呪術を解いたアオも魔素を循環させ驚異的な身体能力を発揮させ魔物たちを蹂躙していた。


二人の活躍を目の当たりにした私も、すぐに呪術を発動して魔物たちの殲滅に入る。


「呪術:迅輝射填 (シンキイッテン)」


私が呪いの言葉を口にして弓を引く姿勢になると、白く輝く矢が現れて指に収まる。私はまだ倒されていない魔物に狙いを定めて指を離すと、白き矢は光の速さで魔物を目掛けて飛んで一撃で絶命させる。


魔物を倒した事を確認した私は、すぐに弓を引く構えを取ると次々と矢を放ち、残りの魔物たちを倒していく。次第に魔物たちの数は減って残り僅かとなったところで、2匹のハーピーが玉座から飛び立ち私たちと対峙する。


アオの言う通り2匹のハーピーは他の者たちとは違い4枚の羽を持ち、魔物でありながら衣服を纏い、その目には知性を感じる。ただ、やはり魔物の凶暴性は残ったままのようで、残虐な笑みを浮かべて私たちを見ている。


「あなたたちが、ここら辺で暴れ回っているハーピーたちの親玉ってことで良いのかしら?」


リンさんが呪術を解き一歩前に出て、ハーピーたちにこの周辺にいる魔族や魔物を襲っているハーピーたちなのか尋ねると、2匹のハーピーはお互いの顔を見て、馬鹿にするような顔をして口を開く。


「そうよ、何を当たり前の事を聞くのよ。だから、アンタたちも問答無用で私たちの大事な魔物たちを殺したんでしょ」

「そうなんだけどね、もしかしたら私たちの実力を見て、素直に投降してくれるかもしれないと思って声をかけたのよ」


私たちを馬鹿にするハーピーたちにリンさんは、肩を竦めおどけるような顔をして、投降してくれないかと尋ねる。


「はぁ、する訳ないでしょ。私たちより弱いヤツの言う事を聞く必要なんて無いのも分からないの? 少し強そうだから話してみようと思ったのが間違いだったわ……」


赤い羽根のハーピーが、あからさまに殺気を私たちに向けて睨みつけると、隣の青い羽のハーピーが言葉を引き継ぐ。


「そうよ、エンニ。コイツらが魔物たちにしたように、さっさと殺せば良かったのよ。それをわざわざ会話しようとするなんて……」


青い羽のハーピーは、赤い羽のハーピーをエンニと呼び、私たちに話しかけた事を軽率な行動だったと批判すると、エンニも自分の非を認めて謝罪する。


「ごめんなさい、オンフ、私が軽率だった。どのみち殺すのだから、会話なんて不要……同じ雌同士、少しは楽しい会話が出来ると思ったけど、もう、いいわ、死になさい」


オンフを見て謝罪したエンニは小さく頷き合図を送ると、エンニとオンフは私たちの方を向き、同時に呪いの言葉を叫んだ。

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また、「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品も投稿していますの、こちらも読んで頂けると、なお嬉しいです。

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