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120 ハーピー討伐(1)

アオが洞窟に潜入してかなりの時間が経つが、特に異常は感じられず入口を見張っているコボルトたちにも変化はない。だが、なかなか戻らないアオが心配になり、リンさんに洞窟に突入した方が良いか尋ねようとした時、見張りのコボルト2匹の首が飛び、その場に崩れ落ちた。


コボルトたちが倒れると、アオが姿を現して私たちの元へ駆け寄り、すぐに洞窟の中の様子を説明し始める。


「――――でね、普段は魔族や魔物たちは大きな牢屋に捕らえられていて、ハーピーたちが呪術を発動した時だけ操られて、村を襲ったり洞窟を守らせたり命令されるんだって。だから、まずは捕まった魔族や魔物たちを解放して、その後で、頭目であるハーピーたちを討伐した方が良いと思うんだ。お姉ちゃんたちはどう思う?」


私たちはアオの説明を聞き、提案された作戦を吟味して問題が無いことを確認する。アオの話によると洞窟の中を守っていたのは、魔物だけで魔族はおらず数も少なく探索しながら、かなりの数を倒す事が出来たらしい。ちなみに洞窟の警備をしていた魔物たちは、呪術で操られていた訳ではなく、自らハーピーの配下になったとのことだ。


最後にアオから簡単な洞窟内の構造を教えてもらい、侵入経路を確認すると、アオを先頭に魔族や魔物たちが捕らえられている部屋を目指して洞窟の中に潜入した。



私たちはアオに先導され洞窟の中を進んでいくと、途中でゴブリンやコボルト、トロールなどの死骸を何回か見かけ、事前にアオが倒しておいてくれた事に感謝し、更に奥へと歩いていく。


その後も、アオのおかげで殆ど敵と遭遇すること無く、魔族や魔物たちが捕まっている部屋に辿り着くことができた。私は慎重に部屋の中に入るとマヤやアオをその場に残して牢屋の前まで進み、捕まっている魔族たちに向かって声をかける。


「こんにちは、あなたたちはハーピーたちに捕まっているの?」


私の声に反応して1匹の狼の魔獣が私の前まで近寄り意思を飛ばしてきた。


<お前たちは誰だ? 何をしにここに来た?>


私は頭の中に明確な言葉が伝わってきて少し驚く。これほどはっきりと言葉として意思を伝える事ができるという事は、上位の魔族の可能性が高い。私が確認のため魔素を感知したら、かなりの魔素を保有しており簡単に捕獲できる魔獣ではないことが分かり、なぜ捕虜になったのか疑問に思うが、まずは魔獣の質問に答える。


「私はリン、そして後ろの2人はマヤとアオよ。私たちはホシミ族に頼まれて、この辺りを暴れ回っているハーピーの討伐にきたの。だから、討伐する時にハーピーが呪術を使い、あなたたちを操って攻撃をしかけてきたら困るのよ。すぐに解放してあげるから洞窟から逃げてほしいの」

<……お前たちのことは分かった、そして、ここに来た理由も理解した。だが、お前たちは大丈夫なのか?>


私の言葉を受けた狼の魔獣は、私たちもハーピーの呪術で操られるのではないかと心配するが、ミライの占いと討伐隊を率いたゲンザイの話を聞く限り問題はない。そして、捕らえられた魔族や魔物たちを見て、ミライの占いが間違っていないと確信し狼の魔獣に家族について質問する。


「えぇ、問題ないわ。それにもしかしたら、別の部屋にあなたたちの奥さんや子供も捕らえらてるんじゃない?」

<!! なぜ、分かった?!>


私の言葉に狼の魔獣は驚くが、事前にミライの占いを聞いてハーピーの呪術は予想していた。しかも、狼の魔獣の実力を見て、そう易々と捕まる魔獣ではないと分かり、ハーピーの呪術の内容と照らし合わせ、捕まるなら人質を取られ弱みを握られている場合ぐらいしかないと思っただけだ。


「多分、ハーピーの呪術は、群れで行動する魔獣や魔蟲、魔物にしか効かないと思うわ、それに男性限定よ。だから(おんな)子供(こども)は別の部屋に隔離したんでしょ。まぁ、人質としての意味合いの方が強いとは思うけど……」


私が予想したハーピーの呪術の制約を説明すると狼の魔獣は納得して、この部屋にいる魔族は群れで行動する雄の魔獣だけだと告げ、操られた魔物たちもゴブリンやコボルト、トロールといった集団で暮らし行動する魔物しかいないと教えてくれた。


「悪いけど、アオ、この魔獣たちの家族が捕まっている部屋を探して解放してくれる? マヤもアオに付いて行って」

「わかりました、私たちは、この方々の家族を探して出口まで連れて行きます。それでリンさんは、どうするのですか?」


私の提案にマヤとアオが頷き、魔獣たちの家族を探し解放する事を了解すると、この場に残る私に何をするのか尋ねる。


「そうね、まずはここの魔獣たちを解放するわ。あとは魔物たちが捕らえられている部屋を探し、友好的なら解放するけど、敵対するなら倒すわ」


私の言葉を聞いたマヤとアオは複雑な表情をするが、魔物とは魔族、人族など関係なく同族すら襲う狂暴な生き物だ。時折、魔族化して意思疎通が出来るようになり友好的になる魔物もいるが、大抵は狂暴な性質は残ったままだ。捕らえられた魔物に同情する気持ちも分からないことはないが、所詮は魔物だ。変に同情すれば私たちに危険が及ぶ可能性がある。


「所詮は魔物よ、変に同情しないの。それに万が一、魔族化した魔物がいて意思疎通ができるかもしれないわ。意思が通じれば逃がした恩を感じて、その場は襲わないかもしれないし……。まぁ、あまり期待はできないけど」


私がなるべく明るく話すと2人とも曖昧に笑い頷く。そして、私たちは各々に割り当てた役割を改めて確認すると、すぐに行動を開始した。



ボクたちが狼の魔獣の家族を逃がすと、狼の魔獣が捕らえられていた部屋の前でリンちゃんと合流してハーピーたちがいる部屋に向かい歩き出した。


「それでアオたちは無事に狼の魔獣の家族たちを解放する事が出来たのね」

「うん、見張りも少なかったし、普通のハーピーで全然、強くなかったから、すぐにやっつけて、解放できたよ」

「えぇ、魔族化したハーピーは、そんなに多くないのかも知れませんね。出口まで護衛しましたが、遭遇したハーピーも全て普通でした」


ボクたちはほぼ無人となった洞窟を進みながら、無事に狼の魔獣の家族を解放した事を報告すると、リンちゃんは頷き捕らえられていた魔物たちについて報告する。


「私の方も、意外とすんなりと片付いたわ。まさか本当に魔族化した魔物がいるとは思わなかったわ」


リンちゃんの話によると捕らわれた魔物の中に魔族化したトロールがいて、まとめ役をしていたらしく、リンちゃんが声をかけると意思を飛ばし、助けてくれるなら何もしないと約束してくれたとのことだ。


トロールの言葉を信じながらもリンちゃんは警戒して、魔物たちを解放すると拍子抜けするほど大人しく部屋から出て、魔族化したトロールを先頭に洞窟から出て行ったらしい。


ボクたちは無事に魔獣と魔物を解放できた事を喜び、残すは頭目のハーピーたちを討伐するだけだと気合を入れて、洞窟の奥に向かい歩を進めた。

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また、「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品も投稿していますの、こちらも読んで頂けると、なお嬉しいです。

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