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118 ハーピーの討伐依頼

俺が守衛の男にエルから預かった書簡を渡そうとすると、村の入口から金髪の少女が現れた。かなり小柄な少女は金髪に金色の瞳、そしてエルフのように耳が尖っていた。確か魔人にはエルフやドワーフ、ホビットなど長命種はいなかったはずだが、例外がいるのだろうか……。


金髪の少女は俺の視線が耳に向いていることに気付き、苦笑いを浮かべて説明してくれた。


「儂は、この族長でミライという。ちなみにエルフではないぞ。ただ、長命ではないが不老ではある。儂はこう見えても80歳を超えたババァじゃ」


目の前に立つ十代前半にしか見えない少女から、実は80年以上生きていると告げられて、俺は理解が追いつかず固まってしまう。そんな俺を見たミライはホシミ族の半数が不老ではあるが、他の魔人同様に100歳前後の寿命であると説明する。


「儂らは、遥か昔に行われたある実験(・・・・)の過程で生まれきた種族じゃ。不老であるが不死ではない。寿命が近づけば一気に老化が進み2、3年で死んでしまう……」


ホシミ族について説明するミライは、どこか悲し気であり何か隠しているような気がした。だが、いきなり現れたどこの馬の骨かも知れない俺に教えてくれるはずは無いと思い触れずに話を進める。


「そうか、説明してくれて助かった。それでこれがエルから預かった書簡だが、受け取ってもらえるか?」

「うむ、確かにこの蝋印はエル嬢ちゃんのもので間違いない。申し訳ないが、内容を確認するまで待ってくれるか?」


ホシミ族の族長であるミライにエルから預かった書簡を渡すと、内容を読むので待ってほしいと言われ、守衛の男を連れて村の奥に消えていった。俺がミライたちを見送り、その場で佇んでいると、ミライにそっくりな金髪の少女が近寄り、村の中の案内を申し出てくれた。


――――――――


ミライに似た少女は彼女の姪でネガイと名乗り、ミライから村を案内するようにお願いされたと伝えて、俺たちを村の中に招き入れる。


……ネガイの案内で村に入った俺たちは、目の前に広がる見た事がない不思議な光景に感動する。村の中にある建物は自然を活かした不思議な造りの物ばかりで、大きな枝の上に家屋が建てられたり、巨大なウロを利用して樹木の中に住居を作ったりと、どれだけ見ても飽きることはなかった。


俺たちが見たことがない景色に興奮しながら歩いていくと村の奥に立つ巨大な樹木の前に着く。そして、ネガイから目の前にある樹木を守るように建てられた大きな(やしろ)の中へ案内された。


ネガイの案内で建物の中に入るとミライが待っており、書簡にはエルから俺たちの力になってほしいと書かれていたことを伝えて、何か相談したいことがあるのかと尋ねる。俺はミライの言葉を受け、魔神を探して旅をしているが何も手掛かりが無く途方にくれていることをミライに相談する。


「分かった、なら儂らも力になろうと思う。だが、こちらの願いも聞いてくれぬか?」


ミライは魔神の捜索を手伝う代わりに、最近村を襲う魔族化したハーピーの討伐を依頼してきた。いくら岸壁に囲まれた堅固な村でも空からの襲撃は防ぎようがなく甚大な被害が出ているとのことだ。


それに首領と思われるハーピーは操作系の呪術を使うようで、下位の魔族や魔物を使役して巣穴にしている洞窟を守らせているらしい。ミライたちも何度か討伐隊を組織して洞窟に攻め込んだが、その度にゴブリンや狼、鹿の魔獣たちに阻止され、逆にその隙を突かれ手薄になった村を襲われて手も足も出なくなったみたいだ。


「わかった、ハーピーの討伐は引き受けよう。それでハーピーたちの巣穴はどこにあるんだ?」


俺がハーピーの討伐を引き受けると、ミライはもちろんネガイや守衛の男も安堵の表情を浮かべた。俺がハーピーたちが巣穴にしている洞窟の場所を聞くと、守衛の男が村の西にある休火山の麓にあると教えてくれた。


俺がミライに明日にでも討伐に向かうことを伝えると、姪のネガイが村に滞在する間、泊まるための場所を準備すると申し出てくれたので、俺はリンたちには先に宿泊先に向かうように言うと、ハーピーの詳しい情報を聞くために、この場に残った。



私たちがホシミ族の村セインリーンに着くと、サイガはすぐに守衛の人とひと悶着を起こした。相変わらずサイガのすることには驚かされるが、それもサイガらしいと少しだけ嬉しくなる。


サイガは守衛の人に圧倒的な実力を示して、抵抗する虚しさを教えるとその場を収めた。魔素を感知できるようになって、サイガの凄さを直接感じられるようになり、とても幸せな気分になり、魔素感知を教えてくれたリンさんに感謝する。


その後、村の中を案内されてホシミ族の族長であるミライ様に魔族化したハーピーの討伐をお願いされると、サイガは二つ返事で快く了解し、詳しい話は聞いておくから宿泊先で休んでおいてくれと私たちを優しく気遣ってくれた……その優しさに惚れ直してしまいます。


私たちはネガイさんの案内で大きな樹木のウロに建てられた家屋に着くと、各々が使う部屋を決めてサイガが戻るまで休むことにした。



私たちは宿泊先に着くと、各々の部屋を決めて休むことにした。私は用意されたベッドに横になると、セインリーンに着いた時の事を思い出す。


まず、村に着いて早々にサイガのバカが、守勢のおっさんと問題を起こして、話をややこしくした。わざわざ戦う必要もないのに、腕試しか何だか分からないが、相手を挑発をして戦い、挙句の果て自分に不利な条件をつけて、相手を怒らせ火に油を注いだ。そして、最後はお互いに呪術を発動して、無駄な魔素を消費した上に相手に手の内を見せてしまう。もし本当は敵だったら、どうするつもりだったのだろうか……本当に迷惑しかかけない、どうしようもないアホだと溜息を吐く。


その後もミライから魔物の討伐を依頼されると私たちに何の相談もなく、バカみたいに二つ返事で了解した。お前は別世界でいう『イエスマン』か!


しかも、私たち抜きで討伐するハーピーの情報を確認すると言って、私たちをさっさとミライの家から追い出しやがった。【知識の神の加護】が無いサイガにハーピーの詳細な情報を憶えられるわけがないし、理解する脳みそもないのに、何を格好つけているのか。絶対、マヤとアオの前だからに違いない!


折角、休むためにベッドに横になったが、サイガのバカな行動とアホな言動に怒りが沸いてきて休める気がしない。私はベッドから起き上がると、サイガが帰ってきたら徹底的に虐めてやると心に決めた。

お読み頂き、ありがとうございます!

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また、「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品も投稿していますの、こちらも読んで頂けると、なお嬉しいです。

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