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117 実力の確認

大婆さまの予言通り途轍もなく膨大な魔素を持った魔人が村にやってきた。俺たちが警戒を強め、遠慮なく殺気を向けるが、男は余裕なのか笑顔を浮かべて、敵意がないことを示すように両手を上げながら、近づいてくる。


俺がそんな男の余裕な態度が気に入らず、槍の切っ先を向けると、男は苦笑いを浮かべて懐に手を入れようとした。男が何か得物を取り出すと思った俺は、咄嗟に男を目掛け槍を突き出す。


目の前に迫る槍を男は、平然と片手で掴んで止めると、俺の方を向いて口を開く。


「おい、おい、いきなり随分な挨拶だな。こちらに敵意がない事ぐらい分かるだろう」

「………………」


俺は何も答えず、男に掴まれた槍を力を込めて思い切り引くが、びくともせず男を睨むと、再び苦笑いを浮かべた男は槍を手放し背負っていた背嚢を下ろす。そして、こちらを向き手の平を上に向けると手招きをして挑発してきた。


男のあまりにも舐めた態度に逆上した俺は、魔素を循環させ肉体を強化させると高速の突きを放つ。男は初撃を難なく避けるが、俺は気にせず連続で槍を突き出して追い込もうとする。しかし、俺が高速の連撃を放っても余裕を持って避け続け、よく見るとその場から男は一歩も動いていないことが分かった。


男の馬鹿にした行動に俺は、頭に血が上り我を忘れ呪術を発動する。


「呪術:雨槍武装 (ウゾウムゾウ)!」



また、サイガの悪い癖が出たようだ。決して相手を舐めている訳ではないが、つい相手の力量を測るために、敢えて自分に不利な条件を付けてしまう。それで何度も危険な目に遭ったが、本人は一向に反省する気はない。


ボクはサイガの相変わらずな行動に苦笑いを浮かべて、事の成り行きを見守っていると、一向に攻撃が当たらない守衛の男が両腕に魔素を集中するのが分かった。どうやら、呪術を発動するようだ。


「呪術:雨槍武装 (ウゾウムゾウ)!」


守衛の男が呪術を発動すると、上空から無数の槍がサイガを目掛けて降り注いできた。さすがにこれを全て避けることはサイガでも無理だろうと思い、どうするのかワクワクしながら見ていると、サイガも呪術を発動した。


「呪術:釼清刈崩 (ニッシンゲッポウ)」


サイガが呪いの言葉を発すると両腕を赤い魔素が包み込み、手甲剣のような形となり上空から迫る無数の槍を薙ぎ払うと宙に霧散する。……結局、サイガはその場から一歩も動く事無く守衛の男の攻撃を全て防ぎ切ってみせた。


守衛の男は信じられない表情で、その場に呆然として立ち尽くし、これ以上戦う気は無さそうだ。もう1人の守衛に目を向けると、はやり同様にその場から動く事はなく、目の前で起きた事実を受け入れるのに必死になっている。


「やっぱりサイガは凄いね! 腕の外殻が無くなったのは、さっきの呪術が原因なの?」


ボクは守衛の2人から戦意が無くなったことを確認して、サイガに駆け寄り背中に飛び乗るとさっきの呪術について確認する。


「おっと、アオは相変わらず俺の背後を取るのが上手いな。あと、腕の外殻が無くなったのは、多分そうだと思うぞ。呪術が進化した翌日に腕と足の外殻が無くなっていたからな」


サイガはボクを受け止めると、外殻が無くなった理由についても概ねボクの予想通りだと話してくれた。サイガはボクを背負ったまま、いまだ呆然と立ち尽くす守衛の男に近寄り声をかける。


「大丈夫か? 俺も悪ふざけが過ぎたが、あんたもむやみやたらと喧嘩を吹っかけるのはどうかと思うぞ」

「いや、喧嘩じゃないと思うよ」


サイガが少し見当外れな事を言ったので、ボクが訂正すると、守衛の人が口を開いた。


「……いきなり攻撃をしてすまない。一応、あんたたちが来ることは大婆様から聞いていたんだが、あんたのあまりにも膨大な魔素を受けて殺気立ってしまった。本当にすまない」


さきほどとは打って変わって謙虚な姿勢を取る守衛の人にサイガもボクも混乱していると、リンちゃんたちも近づいてきた。


「サイガ、アンタが悪いわよ。もう少し自分の立場や状況、それにその強大な魔素について、周りがどう思っているか自覚しないさい」

「さすが、サイガです。一切攻撃せずに相手の呪術を完璧に防ぎ切りました。私ならさっさと呪術を発動して相手を無力化しているところです」


リンちゃんとお姉ちゃんから真逆の言葉を受けて、サイガは苦笑いを浮かべる。そして、ボクを背中から降ろすと懐からエルさんから貰った書簡を取り出し守衛に渡す。


「さっきは渡せなかったが、魔王オオガエルから、この書簡を族長に渡すように言われている。すまないが、族長に渡してくれないか?」


サイガが守衛に書簡を手渡そうとした時、村の門が開き金髪の少女が現れた。



防壁の上からホシミ族最強の戦士ゲンザイと来訪者の戦いを観察したが、全く相手にしてもらえず、全ての攻撃を余裕で防がれる。そして、ついに痺れを切らしたゲンザイは第2段階の呪術:雨槍武装(ウゾウムゾウ)を発動したが、来訪者は全く動ずることなく呪術を無効化してみせた。


来訪者の実力を測るために今日はゲンザイを入口の守衛に任じたのだが、子ども扱いされて、結局何も分からなかった。ただ、ホシミ族最強の戦士を相手に一切攻撃をせずに制圧してみせたことで、漠然と実力の一端を垣間見ることができた。


とりあえず、エル嬢ちゃんからの書状を確認するために魔神に次ぐ地位の魔族、魔皇サイガに会う為に儂は入口に向かった。


お読み頂き、ありがとうございます!

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また、「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品も投稿していますの、こちらも読んで頂けると、なお嬉しいです。

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