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116 チョグーンの秘密

「――――というわけで、魔神トガシゼン様を探すために旅をしてるんです。もし、何か知っていることがあるなら教えてくれませんか?」


リンちゃんから魔皇サイガ様が旅をしている理由を教えてもらったが、とてもすぐに信じられる内容ではなかった。魔神の称号をかけてトガシゼン様と戦うつもりらしいが、300年以上君臨している伝説の魔族を相手に勝つことができるのだろうか……。


だが、一方でサイガ様と直接会って、その体内にある膨大な魔素を見せつけられると、もしかしたら勝てるかもしれないと思ってしまう。それほどまでにサイガ様の魔素量は桁外れだ。それにリンちゃんも、以前会った時よりも魔素が数段増えており、私を遥かに超えている。一時、行方不明になったと噂で聞いたが、一体少し見ない間に何があったのか聞きたくなる。


そして、サイガ様の後ろにいる2人の黒髪の少女に視線を向けると、この2人からも魔王に匹敵するほどの魔素を感じられ、一体何故、これほどまでの魔族が噂にならなかったのだろうかと疑問に思う。とにかく、この4人がいれば、魔王の1人や2人ぐらい簡単に倒し、王領を奪うことができそうだ。


御布礼(おふれ)ではサイガ様と決闘して勝てば魔皇になれると書いてあったが、この4人を前に戦おうと思う魔族が何人いるだろうか。私みたいになまじ強いと、その実力が分かり戦おうとすら思わない。もし4人を見て挑もうと思う魔族がいるならば、よっぽど腕に自信がある者か、己の実力も分からない馬鹿しかいないだろう。


私が規格外の強さを持った4人を前にして、呆然としているとリンちゃんが再び口を開く。


「エルさん、大丈夫ですか? どうかしましたか?」

「あぁ、ごめんなさい。サイガ様もそうだけど、リンちゃんや後ろの娘たちからも、すごい魔素を感じたから驚いちゃって」


私が正直に4人の規格外の強さに驚いたことを伝えると、リンちゃんは苦笑いして頭を下げる。


「そうですよね、私もサイガの近くにいたから感覚が少しおかしくなってたみたいです。確かにこれだけの魔素をもった魔族を見れば、誰でも驚き警戒しますよね」


リンちゃんもずっとサイガ様と一緒にいたせいで、普通の感覚では無かった事に気付いてくれたみたいだ。ただ、リンちゃん自身も異常なことには気付いていないみたいだが、そこは敢えて何も言わないでおく。


「えぇ、正直、サイガ様と謁見した時は、このチョグーン領を差し出す覚悟までしたわ。それほどまでの力と魔素を感じたわ」

「驚かせてしまい、本当にすまない。俺はあんたの領をどうこうしようとは思っていない。それに敬称を付ける必要もないぞ。そんなに偉くなった覚えもないしな」


サイガ様は敬称は不要と言うが、これほどまでの力と魔素を持っている魔人相手には難しい。私たち魔族は様々な部族がいるが、全ての部族に共通して求められるものは力であり、力とは魔素に直結する。強大な力と魔素を持つ者を敬うのは、全ての魔族が持つ本能だ。


「わかりました、サイガ。それで魔神トガシゼン様についてですが……、申し訳ありませんが、特に何も知りません」


私はより上位の魔族であるサイガに逆らうことはせず素直に敬称を外し、トガシゼン様について何も情報を持っていないことを率直に伝えた。


「そうか、なら仕方ないな。リン、ここには何も情報はないようだ。次はどの領に行く?」

「少しお待ちください、サイガ様。私は何も情報を持っていませんが、手掛かりになるかも知れない情報ならあります」


魔皇を敬う気持ちもあるが、少し言葉を交わしただけのサイガ自身に好感を持った私は、このチョグーンの最大の秘密を教えても良いと思い、魔神捜索の手掛かりになるかも知れない情報を伝えることにした。


――――――――


私たちは王都グゥンダオを出て3日をかけて目的地であるホシミ族が住む隠れ里があるダオニオ領に着いた。エルさんから魔族領の西端に住む特殊な能力を持った部族について教えてもらった私たちはすぐに王都を出て、その不思議な力を持つホシミ族がいるダオニオ領を目指す事になった。


エルさんの話によると、ホシミ族には未来が見えたり、失せ物を見つけたりと占いに特化した能力を持った者が多くいるという。


その希少な能力が故に昔、一族の女子供が攫われる事件が頻発して一族滅亡の危機に瀕したことがあったらしい。そこでその時の族長が当時のチョグーンの魔王と交渉して、能力を使い領地運営に協力する代わりに一族の安全を保証させたみたいだ。


それから歴代のチョグーンの魔王は、何か重大な事柄を決める時はホシミ族に相談して、その特殊な能力を使って的確な助言をもらっているという。エルさんも同じくホシミ族に色々と相談しているようで、チョグーンが大きな災害や干ばつに見舞われても、最小限の被害で済んでいる理由が分かった。


私がエルさんから教えてもらったホシミ族の能力について考えていると、目の前に洞窟が見えてきたので、地図で確認するとホシミ族が住んでいる隠れ里へ通じる洞窟で間違いなく、入口は厳重に封印された扉で閉ざされている。私はエルさんから貰った特殊な呪符を取り出すと、扉の横にある長方形の窪みに呪符を押し付けて魔素を流し込む。


「呪術:帰開栓幕 (キカイセンバン)」


私が呪術を発動すると押してもビクともしなかった扉が、ゆっくりと開き洞窟の奥に進むことができるようになる。


「エルさんの説明なら、この洞窟を抜けるとホシミ族が住む村に着くはずよ」

「わかった、ならここから先は俺が先頭で行こう。何もないと思うが万が一、何があったら俺が時間を稼ぐから、すぐに逃げろ」


サイガは私たちの前に立つと、そのまま洞窟の中に入って行く。


洞窟の中は思いのほか広く、私たち4人が横並びに歩いても余裕があるほどだ。それに通路はきちんと整備され、等間隔で篝火も置かれ明るく、危なげなく進むことができた。私たちが進むこと半刻ほどで再び呪術で封印された扉が現れたので、呪符を使い解錠して洞窟から出ると、目の前に岸壁に囲まれた小さな集落が現れた。



俺たちは洞窟を抜けて小さな集落を見つけると、すぐに入口を探し始める。小さな集落には似つかわしくない頑丈な防壁で囲まれ、訪れるものを拒むかのようにそびえ建っている。


用心しながら俺たちが防壁に沿って歩いていると、ようやく入口を見つけることができた。入口には守衛の男が2人立っていたので、リンたちをその場に残して1人で近づき声をかける。


「ちょっと、すまない。ここはホシミ族の村で間違いないか」


俺は敵意が無いと分かるように両手を上げて、なるべく明るい声で話しかけるが、守衛の男たちは警戒を緩めることなく、手に持った槍を俺に向ける。俺は苦笑いを浮かべ、エルに書いてもらった紹介状を渡すため懐に手を入れると、守衛の1人がいきなり槍を俺に目掛け突き出した。


お読み頂き、ありがとうございます!

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また、「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品も投稿していますの、こちらも読んで頂けると、なお嬉しいです。

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