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100/202

100 アオとマヤ

いつも読んで頂きありがとうございます!

なんとか100話まで来ました!!

やったー!!!

「ジアリさんたち、大丈夫かな? 後から追いかけて来るって言ってけど……」


ボクは後ろを振り向きショウオン村に留まり、囮になっている警備隊の仲間たちのことを考える。強力な魔法を発動したボクとお姉ちゃんは、膨大な魔素に干渉した為、脳を酷使し激しい頭痛と眩暈に襲われて気を失ってしまった。そんなボクたちを見たジアリさんは、村を守る戦力にはならないと判断して、住民たちと一緒に避難するよう命じた。


そして、今、隣村のサンルウを目指して避難しているボクたちだが、広範囲の魔素に干渉したお姉ちゃんは、いまだに立つことができずにジュラちゃんに支えられながら歩いている。ふらつきながらも懸命に歩くお姉ちゃんを見ながら、村を襲った魔物の大量発生(スタンピード)について考える。


……人族領にいた時も何度か魔物の大量発生(スタンピード)は経験したが、今回は異常だったと思う。妙に統率された魔物の群れは軍隊と戦っているようで、ゴブリンやオークなど貧弱な魔物を捨て駒に使ってくるとは思いも寄らなかった。


魔族領の魔物の大量発生(スタンピード)がそうなのか、今回が特別なのか……。とにかく嫌な予感がしたボクは、なるべく早く村から遠く離れた方が良いと思い、先頭で引率するセップさんに伝えに行った。



私に寄りかかり覚束ない足取りで歩くマヤさんの顔はいまだに青ざめている。村に大量の魔物が押し寄せて来た時は、もう駄目かと思ったが、マヤさんとアオさんの呪術によって、なんとか退けることができた。


ただ、あまりに強力な呪術だったみたいでマヤさんは呪術を発動すると、その場で気を失い倒れてしまった。また、アオさんも土で出来た蜘蛛を使役して村に侵入しようとする魔物たちを撃退してくれたが、かなりの魔素を消費したのか、魔物がいなくなるとその場で口を押えて蹲った。


そして、なんとか魔物を全て撃退したと思った矢先に、さらに強力な魔物の群れが現れて、警備隊長のジアリさんは村を放棄して隣村サンルウに避難することを決めた……。


「マヤさん、大丈夫ですか? 少し休憩しましょうか」

「いいえ、大丈夫です、ジュラさん。それよりも一刻も早く隣村まで避難しましょう」


立つのも辛いはずのマヤさんは気丈に微笑み、先に進むように促す。艶やかな黒髪に星空のように輝く黒い瞳は同じ女性でも思わず見とれてしまう。その高貴な雰囲気から上位の魔族だと思うが、もしかしたら、何処かの(ぬし)(おさ)、ひょっとしたら魔王の縁者の可能性もある。


なんでそんな上位の魔族がこんな村の警備隊にいるのかは分からないが、おかけで魔物の大量発生(スタンピード)から避難することができた。まだ、隣村までは距離はあるが、ジアリさんたちが囮となって魔物たちを引き留めているはずだ。


私はマヤさんを支える手に力を込めると、少しだけ歩く速度を上げた。



ボクはセップさんに少し急ごうと言いに先頭に向かおうとした時、後方から悲鳴が聞こえ、咄嗟に振り返ると魔物の群れが追いかけて来るのが見える。すぐにボクはセップさんに魔物が迫って来ているから逃げろと叫ぶと、魔物の群れに向かって走り出した。


最後尾の人たちに早く逃げるように言いながら通り過ぎると、目の前にトールやオーガなど強力な魔物たちが走りながら迫ってくる光景が映る。あと1回くらいなら簡単な魔法ぐらい発動することはできるが、発動時間が長い精霊魔法は厳しそうだ。


ボクが魔物の群れを見据え、どうやって戦うか考えていると、懸命に逃げる住民たちの姿が目に入り覚悟を決める。魔族とはいえ、今まで一緒に暮らしてきた仲間で、沢山お世話になった恩人だ。皆が逃げ延びるまで、ボクは死んでも魔物たちを食い止める。


決死の覚悟を決めたボクは短刀を構えて迫りくる魔物たちの前に立ちはだかる。次第に近づいてくる魔物たちに怖気づきそうになるが、気持ちを奮い立たせてボクが迎え撃とうとした時、背後から鋭い風切り音が聞こえ、先頭を走るオークの額に矢が突き刺さる。


予想外の援護に驚き振り返ると、お姉ちゃんが弓を構えて魔物たちに矢を放つ姿が見える。次々と正確に魔物の急所に矢を射抜くお姉ちゃんの技量に、改めて驚かされるが、ボクも負けじと魔物の群れに突っ込む。


ボクは速さを活かして魔物の群れの中を縦横無尽に走り回り、隙を見つけて目や首を斬りつけて魔物たちを戦闘不能にしていき、気が付くと数十体いた魔物も、残り僅か5体まで減っていた。


もはや勝てないと思った魔物たちは背を向けて逃げ出そうとするが、ボクが最後の気力を振り絞り火魔法を発動すると全て炎に包まれ息絶えた。なんとか魔物を退け安心したボクはお姉ちゃんの無事を確認するため振り返ると、弓を上空に向けて矢を放とうとする姿が目に入り、ボクも空を見上げ巨大なカマキリがこちらに向かって来るのが分かった。


空からボクたちを見下ろすカマキリに先手を打とうと、お姉ちゃんが矢を続けざまに放つが、カマキリは両腕の鎌で全て叩き落とし、ゆっくりとボクの前に降りた。



前線に立つアオの前に巨大なカマキリが立っている……。おそらく魔族だと思うが、ショウオン村の方々と違い、この魔蟲からは激しい憎しみを感じる。私は村で過ごしていくうちに魔族は決して『悪なる存在』ではないと分かり、敵対する必要はないと思うようになった。だが、この激しい憎悪を向ける魔蟲とは、決して相容れられないと理解する。


憎しみの色で眼を赤く濁す巨大な魔蟲は、怨嗟の眼差しを向けられ動けないアオに容赦なく鎌を振り下ろそうとするが、咄嗟に私が弓を構えて矢を連続で放ち、魔蟲の動きをけん制すると、アオも我に返り、素早く距離を取って速さを生かして、かく乱を試みる。


素早く動き回るアオは振り下ろされる鎌を躱しながら短刀で斬りつけるが、魔蟲の外殻は思いのほか硬く致命傷を与えられない。だが、アオのかく乱は成功し、魔蟲はアオを見失い辺りを探し出し、私から注意が逸れると、僅かに出来たその一瞬の隙を狙い、魔蟲の眼を目掛けて矢を放つ。


ザシュッ


私が放った渾身の矢は魔蟲の眼に深々と突き刺さり、よろめく魔蟲にアオが止めを刺そうと斬りかかるが、魔蟲は鎌で短刀を弾き返すと後ろに飛んで距離を取る。1つになった眼は赤く濁り、私たちに怨嗟の眼差しを向ける魔蟲の大顎が僅かに動くと黒い雨が降ってきた。


私はいきなり降り出した黒い雨を浴びると体が痺れてきて吐き気が襲ってくる。アオも同じく顔色が悪く、短刀を持つ手が僅かに震えているが、私より魔蟲の近くにいるアオは隙を見せないように懸命に立っている。


黒い雨を防ぐ事ができず、なんとか構えを取るアオを見ながら、黒い雨の正体を考える。……間違いなく魔蟲の呪術だと分かるが、それ以外何も分からない。呪術の効果や弱点など何か無いか考えるが、毒のようなものが体を蝕み、まともに考えることができず、私が途方にくれていると魔蟲がオアに斬りかかる。


魔蟲が振り下ろす鎌を必死に避けるアオだが、黒い雨のせいで動きが鈍く徐々に追い込まれていく。私も弓で援護しようにも、視界が霞んで的が絞れない。何も出来ずにアオが追い込まれていく姿を見ていた私は、少しでも援護しようと意識が朦朧とする中、這いつくばりながらアオの方へ向かうと、魔蟲に左腕を切り落とされるアオの姿が見えた。

お読み頂き、ありがとうございます!

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また、「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品も投稿していますの、こちらも読んで頂けると、なお嬉しいです。

<(_ _)>

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