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中岡慎太郎との再会

 それから2日後、1人の武士らしき男が四条河原町の通りにある書物問屋『菊屋』の屋内へ入った。その男がここへきた目的、それは菊屋の主人に手紙を手渡すためである。


 しかし、主人は所用のため不在であることから、代わりに土間へやってきた実子に長着から取り出した手紙を渡すことにした。


「中岡慎太郎さんですね。どうなさいましたか」

「峰吉、これを錦小路の薩摩藩邸へ持っていってくれないかな。そして、薩摩藩邸から返書があれば近江屋のほうへ持ってきてほしい」

「分かりました。この手紙を持って薩摩藩邸へすぐに向かいますので」


 夕焼け空に染まる中、中岡は菊屋から出ると目的地の近江屋まで人々が行き交う通りを歩き続けている。近江屋にいる竜馬とは、薩摩と長州による盟約締結に当たっての仲介役という共通項を持っている。


 その頃、俺は夕方に中岡がここを訪問することを竜馬から伝えられたことから、すぐに階段から降りて玄関へ出てきた。玄関先を見ると、中岡の姿が俺の目にはっきりと入ってきた。


「中岡さん、いらっしゃいませ」

「いいえ、こちらこそ。竜馬さんはどこへおられますか」

「ちょっと体調を崩して2階の部屋へいるけど、会話するのは大丈夫ですので」


 俺は、中岡を連れて階段を上がると竜馬のいる部屋へ足を踏み入れた。竜馬は、久しぶりに再会した中岡の姿を見て嬉しさを隠せない様子である。


「中岡、久しぶりだなあ」

「竜馬、身体の具合はどうなのか?」

「風邪気味だったけど、寝ていたおかげでだいぶ落ち着くようになったよ」


 竜馬と中岡が話し合っている間、俺は近江屋の玄関に誰かがきたみたいなので階段を下りることにした。玄関のほうには、薩摩藩邸からの返書を持参した峰吉の姿があった。


「中岡さんに返書を持ってきたことを伝えて」

「分かった」


 階段を下りた中岡は、峰吉からの返書を受け取ると長着の中へ入れた。そんな時、近江屋へ入ってきたのは土佐藩の藩主・山内氏の家紋が入った羽織を身に着けた武士の男である。


「中岡、竜馬を呼んでくれないかな」

「岡本様、承知いたしました」


 中岡と顔を合わせているのは、土佐藩士ながら脱藩した志士たちとも交流を持っている岡本健三郎である。竜馬が2階から玄関へくると、岡本と新しい国作りに関する雑談を行っていた。


「お腹がすいたなあ」

「外のほうは、すっかり暗くなったなあ」


 戌二つ時ということもあり、近江屋の外はすっかり暮れてしまっていた。


「そうだ! 軍鶏肉で鍋がしたいから、四条坊門の小さい通りにある鳥新で買ってきてくれないかな。お金は出しておくから」

「竜馬さん、分かりました」

「私も用事がありますので、これにて失礼いたします」


 峰吉と岡本は、近江屋から出るとそれぞれ目的の場所へ向かうために夜の通りを進んでいた。

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