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悪女の契約結婚はご褒美ですか?~推しボス様を溺愛していたら「俺のほうが好きだと思うぜ?」と離してくれません!?~  作者: ゆいレギナ
3章 新しい産業を作るぞ!

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18話 レッツ☆クッキング


「馬車くらいひとりで降りられます」

「つれないな。それとも夫を辱めたいのか?」

「今日も言い方がズルい……」


 チカ様のエスコートに支えられ、私は馬車から降りる。

 空が広がる湖は、何度見ても感動的だ。ここを地獄と称す人々の気持ちがさっぱりわからない。めちゃくちゃロマンチックじゃないか。


 ともあれ、私は決してデートで来たかったわけではない。

 私はチカ様からの「おい」という制止を無視して、ゴツゴツとした白み帯びた地面を歩いて、湖のそばに近づく。


 そして手ですくった湖の水をペロッと舐めた直後だった。

 思いっきり肩を引かれる。


「馬鹿野郎! 死にてぇのか⁉」


 チカ様からの本気の叱責、お優しすぎる……♡

 と、今は恍惚としている場合ではない。私は頭を仕事に切り替えて、淡々と説明する。


「これ、やっぱり塩湖ですよ」

「エンコだァ?」


 やはり、この世界には知られていない知識だったらしい。


 なので、かいつまんで説明すれば。

 塩湖とは、言葉の通り塩分濃度が高い湖のことである。


 海水が混じっているわけではないが、塩分濃度は海水並みか、それ以上。魚が生きられないという話から、おそらく前世の死海並みに塩分濃度が高い湖なのだろう。人が飲んだら死ぬという話も、海水以上ということから当然であり、湖に入ったら身体も浮くはず。


 これらの話をすると、チカ様の眉間に深いしわが刻まれる。


「おまえ、どうしてそんなことを知っている?」

「昔はけっこう一生懸命勉強してましたからね。それに、貧乏すぎて海水から塩を自製しようとしたこともあるんですけど……家庭コンロの火では、コスパが悪くて」

「侯爵令嬢が……貧乏……?」


 ともあれ、私の予想通り塩湖だと発覚したところで。

 私は当初の目的をチカ様にご提案する。


「まあ、百聞は一見に如かずです。とりあえず、この湖からお塩を作ってみましょう!」




 レッツ☆お塩クッキング!

 まず湖の水を濾し布代わりのガーゼ(料理にも使うので、似たようなものがこの世界にもあったのでもらってきたもの)で濾す。その水をチカ様の黒炎でゴォォッと一気に煮詰める。そして、煮詰めて濃くなった塩水をもう一回濾しで、さらに黒炎でゴォォォッ!


 するとどうでしょう、ほんのり桃色帯びたお塩が出来上がり☆ である。


「まさか、俺の黒炎を料理に使うやつがいるとは……」

「実際に商業化するなら、炎の魔法が得意な方を雇わないといけないですね」


 さすがに毎度チカ様の御手を煩わせるわけにはいかない。……でも、チカ様お手製って看板で高値で売れるかも? そこらの売り方は、あとで考えるとして。


 二リットルくらいの湖の水から、だいだい五〇グラムくらいの塩ができる。

 とりあえず今は実験なので、このくらいできれば十分だ。


 私はチカ様たっぷりのお塩を、小指に付けて舐めてみる。


「うん。甘い。これなら高値で売れますね」

「俺には普通の塩と変わらない気がするが」


 チカ様も、同様に舐めてみたようだ。度胸のあるチカ様、ラブ♡ と、精悍な横顔を見つめていたときだった。あっという間に背中が地面についており、青いお空が見えない。


 代わりに、陰になったチカ様のご尊顔が真正面にあった。


「改めて聞く。おまえ、本当に何者だ?」

「……ご承知の通り、ビビアナ・ネロでございますが」

「おまえのことは改めてエドワルドに調べさせた。ビビアナ・ネロは、あんな口先だけの格下婚約者からも捨てられるほどの、無能なわがままな女だったはずだ。家庭教師もろくにつけておらず、当然学校にも通っていない……そんな女が、どうして俺も知らない湖のことや塩の作り方を知っている?」


 どうやら私、チカに押し倒されているらしい。

 壁ドンならず、床ドン……塩浜ドンである。


 そんなロマンチックな状況にドギマギしかけるも――チカ様の表情はとても険しい。


 塩湖まで来るのも最小限の護衛だけ連れてきて、クッキング中も近くに近寄らせることはなかった。当然、声が届く範囲に他の人はいない。


 ……私を怪しみつつも、最大限の敬意を払ってくれているのだ。

 本当に、なんてお優しい……そんな【BIG・LOVE】に改めて敬愛を深めつつ。


 私はにっこりと微笑んでみせた。


「お答えしたいところですが、お塩問題を解決してからにしませんか? スターたちのドヤ顔、さっさとやめさせたいんですよね」

「……それは、おまえを捨てたことを恨んでのことか?」

「いえ? チカ様を金ヅル扱いしているからですが?」


 あくまで『私』の意見を申せば、あいつらに捨てられたのは、ある意味損切。

 そもそも私のプライドより、チカ様のご尊厳のほうが大事。


 あー、あいつらのドヤ顔を思い出すだけでイライラしてきた。般若を必死に抑えていると、チカ様のお顔が離れていく。起き上がってくれたらしい。


「ひとまず、隣領との交渉が終わるまでは不問にしてやる。ただ……これが解決したら、洗いざらい話してもらうからな」


 離れていったムスクの香りに、少しだけ寂しさを覚えるも。

 私はしょせんチカ様に従順なだけの奴隷である。


「かしこまりました」


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[一言] 正直に話せばダビデとの浮気疑惑もはれる!? 一刻も早くスターのドヤ顔をどつきたいですね…
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