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悪女の契約結婚はご褒美ですか?~推しボス様を溺愛していたら「俺のほうが好きだと思うぜ?」と離してくれません!?~  作者: ゆいレギナ
2章 まずは、城内改革から!

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11話 元カノを部屋にあげるな


 計画実行は早いに限る。

 冷たい水で身体を洗うことなんて、前世で慣れっこだ。

 ちょうど先日お借りしたワンピースも、まだ私がお預かりしていた。


 そして、がらんとした厨房から、いい匂いのジャムを少しだけ拝借して、首の後ろに塗る。ついでになぜか置いてあるマッチもお借りしておこうかな。


 何をしているかって? そりゃあ、イイ女を作っているのさ。


 ビビアナ・ネロも、悪女であれど、さすが小説の主要人物。素材は超一級品。

 それなりの身なりを整えれば……ホステスさんも顔負けの色っぽいお姉さんの出来上がりである。


 あとは酒蔵から必要なものを拝借して、用意は完了。

 ……諸々が終わったら、チカ様に鍵の重要性だけ進言させていただこう。お借りしたい放題ではないか。そんなことを思いつつも、私が向かう先はただ一つ。


 ビビアナ・ネロの元婚約者であるスター・アモーレの客室である。

 私はドアにしな垂れかかりながら、控えめにノックをした。


「スター様……まだ起きていらっしゃる……?」


 どこで、こんなテクを覚えたのかって?

 そりゃあ、昼も夜も時間が空いたらアルバイトに明け暮れてましたから。いろいろな人を見てきた自負はございます。たくさんウェブ小説や無料マンガも読んできたしね。


 なお、自身のリアル恋愛経験はゼロ×ゼロ。それでも、まったくその気のない相手ならいくらでも演技ができるなんて、女とは不思議な生き物である。


 だけど、まったく緊張しないかといえば、話は別。

 自分の心臓の音だけが聴こえたのも、ほんの数秒。すぐに扉が開かれる。


「ビビアナ? こんな夜にひとりでどうしたんだい?」

「スター様と一緒に、お酒が飲みたいなっ……て」


 そうして見せるのは、後ろに用意していた三つのボトルと小さなグラスが二つ。

 チラリとそれを見せると、すでにガウンを羽織っていたスター様が小さく笑った。


「しょうがないな……入りなよ」

「ありがとうございます」


 きちんと一礼してから、私はお酒を持って部屋へと入る。

 彼の目の前でお酒を作っていると、彼はお酒ではなく、私を上から下まで見てきた。


「なんかビビアナ、雰囲気変わったね」

「……色々、ありましたから」

「ふーん……前よりずっと淑やかじゃん」


 そして、舌を舐めたスターが、後ろから私の腰に手を添える。


「ぼく、こういう女のほうが――」

「せっかくだし、まずは一杯いかがですか?」


 ひらっとスターの手から逃れつつ、私は小さなグラスのそばで、マッチを擦る。

 月明りだけの暗い部屋で、マッチの小さな炎がグラスに近づいた途端――それはボッと一瞬膨れ上がり、私たちの目を楽しませてくれる。


「スゴイな、魔法……のわけないよね。ビビアナだもんね」

「楽しんでいただけて何よりですわ」


 炎のおかげで、部屋に甘いお酒の香りが一気に広がる。

 そんな中、私が「一気にどうぞ」とグラスを両手で差し出せば、スターは嬉しそうにそれを受け取った。そしてジロジロと観察するのは、商人の目。


「へえ……三層が綺麗だ。今度作り方を教えてよ。店に出したら、相当ウケるよ」


 そして、スターは私の勧めた通り、グイッと一気に飲み干した。

 彼がお店の客だったら、お姉さんたち取り合っていただろうな。


 ……いいカモだもん。


「えっ……」


 スターがよろめき、そのまま倒れる。倒れた先がちょうどベッドだったのは、運がいいのか、ヒーロー補正か。私はさほど気にせず、独りよがりに話す。


「このお酒は、三つのリキュールを同量ずつ加えたものになります。度数はおおよそ三十度。レディキラーと呼ばれるカクテルの中でも、特に女性が気を付けなければならないお酒なんだけど……淑女を殺せるなら、男だって殺せるよね?」


 たとえ、魔法ファンタジー世界の住人であっても。

 男も女も、同じ人間。


 しかもスターの場合、お酒を飲むとすぐに寝てしまうって描写もあったし。聖女アウローラが二日酔いの介護をするシーンまで、私はしっかりと覚えている。


 私はベッドの上で目を回しているスターの目を手で塞いでやる。


「前世でのこのカクテルの名前は、B52ビー・フィフティ・ツー――チカ様のためだったら、喜んで爆撃機にだってなりますとも」


 さて、こんなところでスターの意識も落ちてくれたらしい。

 私はその間に、スターの部屋のあちこちをガサガサする。ベッドの下までしっかりと潜れば……ありましたとも。いかにも隠してましたと言わんばかりの書類鞄が。


「見ーつけた♡」


 悪い女だと責められたって、知るものか。

 すでに他の女がいながら、元カノを部屋にあげる男が悪いのだ。


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