表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/32

28 第3回公判期日3 最終陳述

検察官と弁護人の主張が終わった。どちらも、同じ証拠を前提にしながら、よくこれだけ正反対の主張ができるものだと、聞きながら感心してしまった。どちらの主張も、決して白いものを黒いと主張しているとか、黒いものを白いと主張しているとかというわけではない。証拠上灰色のところを、それぞれ目指す極限に向けて純化していくような感じがした。


しかし、そんなことを感じて感嘆していても何も始まらない。自分たちはこれから、このグレーな舞台を舞台に展開された論争に、白黒をつけなければいけないのだから。まだ頭の中の考えはまとまっていなかったけれど、それを考える土俵と、その東の際と西の際は、論告と弁論を聞いて理解できた気がした。


弁護人が着席したのを確認して、裁判長が告げる。


「被告人は、前に出てください」


被告人が起立し、証言席のところに立つ。


「これで審理を終えますが、最後に何か述べたいことがあれば、簡潔に述べてください」


裁判官と裁判員の視線が被告人に集中する。


「日本のみなさん。私が違法な薬物を日本に持ち込んでしまったことは、事実です。そのことは、申し訳ないと思っています。謝らなければいけないと思っています。申し訳ありませんでした」

「ただ、私は本当に、下着の中に隠されていたものが何なのか、分からずに飛行機に乗ったのです。そして、そんなものを身につけたのは、脅されていたからなのです」

「日本の法律で、こうした場合に犯罪になるのかどうか、私には分かりません。ただ、どうか公正な判断がされることを期待します。よろしくお願いします」


被告人は、手を合わせて頭を下げる動作をした。遠い国から来た被告人の動作なのに、その意味するところは、通訳抜きで伝わった気がした。多分仏教の文化圏だからなのだろう。文化の一部を共有する外国の人との意思疎通って、こういうのもあるのかと思った。


裁判長が告げる。


「被告人は、もとの席に戻り、座ってください」

「以上で審理を終えます。判決宣告期日は。来週、9月5日火曜日午後3時から、この法廷で行います。必ず出席してください」

「本日は、これにて閉廷します」


法廷での審理は、これで終わりだ。けれど裁判官と裁判員には、この後、判決の内容をどうするか考え議論をするという大仕事が残っている。

この作品はフィクションです。2023年時点での日本の法制度を前提にはしていますが、登場する国名や地名、会社名などは全て架空のものであり、扱う事件も実在のものではありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ