01 プロローグ
真っ暗闇の中、何だか機械的な声が聞こえる。
「6連ガチャを開始します」
視界にぱっと白い光が輝いたかと思うと、6枚のカードが見える。全部Nだ。何だこのガチャ、ハズレじゃないか。見ると、カードのうちの1枚には、自分の顔写真と名前が書いてある。どうして自分がカードに、しかもNになっているんだ。などと思っていると、同じ機械的な声が言った。
「あなたは、『サイバンイン』として召喚されました」
あぁ、そうか、自分は有名大学出身でもなければ、法律に詳しいわけでもない。だからNなのか…などと思っていたら、ふと目が覚めた。うたた寝中に夢を見たらしい。
今、ニューヨークに向かう飛行機に乗っている。行き先は、国連本部。自分がこんな道を選んだのは、若き日に裁判員に選ばれたからだ。
そんな話を、日本の若者をリクルートする場でいつもしていたら、いろいろな形で裁判員に選ばれて召喚される夢を見るようになった。
しかし今日のは、飛び切り振り切った内容だったなぁ。
これじゃぁまるで、転生したら裁判員になってしまった件、という感じではないか。いや、でもそれも、当たらずとも遠からずか。転生はしなかったけれど、あの頃の私にとって、裁判所という場所は転生に等しいぐらい異世界だったし、人生の向かう先もがらりと変わってしまったのだから。
などと思いながら、在りし日に思いを馳せる。それはもう、20年ほど前、18歳から19歳にかけてのことだった。
この作品はフィクションです。2023年時点での日本の法制度を前提にはしていますが、登場する国名や地名、会社名などは全て架空のものであり、扱う事件も実在のものではありません。