餌
「ハル、着いたわよ」ルアはそう言い、赤茶のレンガでできた四角い質素な小屋を指さした。
森を歩き、だいたい五分、森の中に潜むその小屋を見て、何かを隠しているなんてことは容易に分かった。
「ここは、なんなんですか?」そう言うハルを横目にルアは興奮気味に小屋の戸を開け、階段を下りながら手招きする。
小屋の中は底が見えない階段が続いていて定期的にランプが吊るされている。
「あのさ、ハルお腹空いてない?もう、日が落ちてるんだからお家には帰れないでしょ、下にご飯用意してあるからおいでよ」
階段のことはなんとか飲み込み、「いや、悪いですよー」と言いながら、リンゴーを満足に食べることが出来なかった陽はそう言いつつも心底嬉しんでいる。
「大丈夫、大丈夫、子供が遠慮するもんじゃないよ、ほら早く」そう言い瞳孔を開かせるも心の無い笑いかけるルアを少し不気味に思いつつも、背に腹は変えられずハルは階段を下りていく。
ところでメニューはなんなんだろ、まあ異世界なら知らないの出るかもなー、楽しみ!
そんな何気ないことを考えたりしているとハルに当然の疑問が生まれてきた。
なんでまあまあな時間外出てたのになんでご飯が用意されているのか、でも命の恩人だし疑うなんてな、そんなことを考えつつやっと長い階段を下りきると薄汚れた木が張られた部屋についた。
「さぁ、ついたわよ!そこの椅子に座ってちょっと待っててね」そういうと部屋に一つだけある扉に駆け込んだ。
「にしてもなんの場所なんだろここ、守護とか言ってたからそうゆう関係のとこなのかな」そう考えていると、すぐにルアが戻ってきた。
「持ってきたよー、はいどうぞ」そう言い、ロールキャベツみたいなのと、フランスパン的なやつ、牛乳をお盆に乗せて持ってきた。自分の分は持ってこず、ハルの分だけ。
そしてルアは机にお盆を置き、陽の正面に座った。
「どうもありがとうございます!初めて会ったのにここまでしてもらって、」
「いいのよ、っていうかこうやって子供を救うのも私の仕事だしね。」
「じゃあ、いただきます!」陽がそう言うとルアはハルに笑顔で応えた。
そして陽がロールキャベツを口に運ぶと、急な睡魔に襲われた。
「ハル、大丈夫?、ねぇ!ハル、、、」
ルアはハルがそのまま完全に眠るのを確認すると、震える手を抑え、音にはならない声で「やった」とだけ言った。