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ミレイアの告白

「フォルティス侯爵!」

「ローデリック公爵、リリアナと庭でお茶会を開いていると聞いて、ちょっと挨拶にと思ったんだが……ん?」


そう言いながら、侯爵はきょろきょろと辺りを見回した。


「おや? リリアナがいないな、お茶会はここではないのかな? それにそこの二人は……」


裏口の前にいる乱れた姿の二人を見て、侯爵は怪訝そうな表情をした。

真っ青な顔をしていたカルロスは更に血の気が引いたのか、顔色が真っ白になっている。

横の偽リリアナは相変わらずで、攻撃的な目をこちらに向け、ミレイアと侯爵、そして俺の顔を薄ら笑いを浮かべながら見ていた。


どうしてフォルティス侯爵がここに……。

庭に来たということは、サフィロ子爵夫人とは会わなかったのだろうか?


そう、今朝屋敷から一緒に来たもう一台の馬車にはサフィロ子爵夫人が乗っていた。


先日のサフィロ家訪問の際、夫人からサフィロ家の現状、そしてジュリアの話を聞き、俺はこのままではいけないと考えた。


そして、俺が死んでしまうはずだった今日、結婚式の一日前、間違いなく新婦の父であるフォルティス侯爵は屋敷にいる。

それを見込んで、サフィロ夫人と対話をできる時間を作ろうと思ったのだ。


クロードに託した手紙には、先日サフィロ家に出向いたこと、差し出がましいようではあるが絶対に話し合ったほうが良いということ、義理の息子になるレイナード・ローデリック生涯一度の頼みであることを綴った。

そして、リリアナとのお茶会の後に話がしたいとも……。


しかし伝わらなかったか、口惜しいな、そう考えているとフォルティス侯爵と目が合った。

侯爵は俺から目を逸らさず、大きく頷き少しだけ微笑んだ。

あ、これは会ってくれたようだ、よかった、しかしどこまで話をしたのだろう。


「侯……」

「おとうさまぁぁぁーー」


話を続けようとした時、その場の空気を引き裂いたのはミレイアの叫び声だった。

ハンナの胸から飛び出すように離れ、フォルティス侯爵の元へと駆け寄る。

侯爵がカルロスたちの方向を見ないように、うまく視線を誘導しながら胸にすがりついた。


「おとうさまぁ怖かったぁー」

「どうしたミレイア、何があったんだい?」

「わかんない、酔っぱらった人が迷い込んできたみたい」


しれっと嘘をつくミレイアに、加勢するようにハンナが続けて声をかけた。


「旦那様、ミレイアお嬢様は大変驚かれ疲れていらっしゃいます。ご一緒に屋敷へ戻っていただけますでしょうか?」


ハンナが言い終えると、ミレイアはもう一度侯爵の胸に顔をうずめた。

くそっ、なんと姑息なことを。

このまま侯爵がミレイアを連れて行ってしまったら困る、なんとかしなくては。

そう考えていた時、また偽リリアナが声をあげた。


「ねえ! あんたがジュリアの旦那ぁ? 今泣いてるお嬢ちゃんはミレイアでしょ知ってるのよぅ、そんなのどうでもいいからさー奥さん呼んできてよー」


唐突なその声に、ミレイアは目を大きく見開き、下唇をギュッと噛みしめて更に強く侯爵に抱きついた。


「おとうさま……怖いわ」

「怖いわぁ……だってさ! 面白いねえ、あんたの部屋でジュリアとお茶したじゃない! ぬいぐるみと洋服だらけで子供みたいな部屋だったねえ」

「……」


偽リリアナは構わず大声で話しかけてくる。

フォルティス侯爵はミレイアの頭を優しく撫でたあと、身体に抱きついている細い腕を離した。

そして、偽リリアナの姿をしっかりと確認して一瞬驚いたような顔をしたあと、そのまま視線を俺に向けた。


「すまないローデリック公爵、君にはこの状況が?」


もう一度ちらりと偽リリアナを横目で見た後、不安そうな声でフォルティス侯爵が訊いてきた。

俺はミレイアに呼ばれてここに来たこと、集金に来たという男、そしてリリアナと名乗る女、胸飾りのことだけは隠して全て話した。

そして、あの女が屋敷に詳しいのは、以前この屋敷に来たことがあるのではないか? もしかしたらジュリア夫人は何らかの事件に巻き込まれそうになっているのではないか?

と、あえてジュリアの名前を出してフォルティス侯爵の動揺を誘った。


「うーん……」


侯爵は、小さく唸った後、腕を組んで考え込んでしまった。

偽リリアナはいつの間にかカルロスに押さえつけられている。

ミレイアはというと、ハンナの後ろに隠れ、いつでも屋敷に戻れるようにじわじわと廊下に向かっていた。

おいおいこの状態で逃げる気かよ。


「ハンナ!」


大きな声をあげたのはフォルティス侯爵だった。

廊下に向かっていたミレイアは肩を震わせ、その場で固まってしまった。


「ハンナ、ジュリアを呼んできてくれないか」

「お、奥様をでございますか?」


突然声をかけられたハンナは、目に見えて動揺している。

それでも立ち止まらず、ミレイアを廊下に向かわせようとしているのがすごい、なんという図太さだ。


「聞こえなかったのかハンナ、ジュリアを呼んできてくれ。夫の私が呼んでいる、懐かしい来客が来ているとも伝えてくれ」

「旦那様、お言葉ではございますがジュリア様はその女のことは存じ上げないと思われ……」

「ハンナ!」


フォルティス侯爵がさらに大きな声を出した。


「おーこわ」


後ろで偽リリアナが茶化したように言う声が聞こえた。カルロスが更に女を押さえつける。

侯爵は振り返りもせず、真っすぐにハンナを見つめ、話を続けた。


「誰があんな女の事を言った? 客人が来ていると言っているだろ、リリアナの為に遠方から訪ねてこられたのだ、もちろんジュリアにも関係がある人だ、くだらないことを言わずに早く呼んで来い!」

「……かしこまりました」


ハンナは口を真一文字に結び、侯爵と俺に頭を下げ、ミレイアの背中を支えながら屋敷内に続く廊下へ向かった。


「ミレイアはここにいなさい」


フォルティス侯爵の呼びかけに二人の足が止まる、しかし振り返ろうとはしない。


「ミレイア、こちらに来なさい」


数秒の沈黙の後、ミレイアは小さな肩を震わせながら振り返り、ハンナの手から離れた。

そんな背中を見つめていたハンナは、もう一度こちらに頭を下げ、早歩きで屋敷に戻っていった。

ミレイアは恐る恐るといった感じで、フォルティス侯爵の前まで歩いてきた。


「おとうさま……」


相変わらず泣き出しそうな顔をしているミレイアに侯爵は穏やかな声で話しかけた。


「大きな声を出してすまなかった、客人はミレイアにも関係あるんだよ、ジュリアが来たら一緒に挨拶をしよう」

「お母様と一緒に?」


フォルティス侯爵は優しい顔で頷き、ちらりと偽リリアナの方を見た。

カルロスに押さえられた偽リリアナは、芝の上に膝まづいた状態でいつの間にか舟をこいでいる。

本当にどうしようもない女だな。

しかしカルロスも精神的に限界なのか、今にも倒れそうな顔をしていた。

ここから帰す気はないが、倒れると面倒だからもう少し堪えてくれよ。

侯爵に向き直ると、ふいにミレイアが芝の上に座り込んだ。


「もういやだぁー」


頼りのハンナが居なくなってしまってもう泣くしかないという感じだろうか。

今まではそうやって何とかなってきたんだろうが、そうは行かないからな。


俺はポケットに手を入れ、ピンク石の胸飾りを握りしめる。

すると、それに同調するかのようにミレイアがまた大きな声をあげた。


「ミレイア誰にも会いたくない! 明日の結婚式も出たくない!」

「どうしたんだい、体調でも悪いのか?」

「違うの!」


ミレイアが大きく頭をふると、美しい金色の髪が揺れた。

芝生の上に座り込んでバタバタしているせいかドレスの裾が汚れている。


「もういやなの! 結婚式が嫌!」

「どうしたんだ突然、前に会ったときはあんなに喜んでいたじゃないか」

「だってぇぇーーーうわぁぁーーーーんん」


とうとうミレイアが泣き始めてしまった、大きな瞳からポロポロと涙がこぼれている。

目論見が上手くいかないことがわかってヤケになっているようにしか見えない。 

フォルティス侯爵は困ったような呆れたような表情をしているが、まだ愛しい娘を見る父親の目だ。


おいおい、この行動に疑問はないのか侯爵。

子供とはいえもう15歳、それが座り込んで駄々をこねてるんだぞ?

よくもこんなわがまま娘に育ったもんだ……って思わないのか? 溺愛にもほどがある! 馬鹿らしい。

無意識に大きなため息をつくと同時に、ミレイアがとんでもない告白をした。


「おにい……レイナード様が好きなの!!!」


おい、なんだなんだ!? え? いまここで?

その場にいる皆が言葉を失っていると、背後に人の気配がした。


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