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フォルティス家訪問 −レイナード−

クロードが馬車を降り、こちらに一礼してからフォルティス家の玄関へ進んでいく。

はぁ、自分で確認できないのがもどかしい、でも荷物を確認するだけだもんな。

俺一人が急に行っても面倒くさいことになるだけだ、本当にクロードが居てくれてよかったー


思わず馬車の座席にごろんと横になる。

夢を見た後は、全身の倦怠感が尋常じゃない、やけに腹も減るんだよなあ……。


ーーコンコン


馬車の窓をノックする音が聞こえた。

なんだ? 不審に思いながら横になったまま窓を注視する。


ーーコンコン


真っ白で華奢な手が窓ガラスをノックしている。

まさか? 近づいて外を見ると、肩で息をしながら、頬を紅潮させたミレイアが立っていた。


「ミ、ミレイア」


突然のことで心臓がドクンと脈打つ、何だこの変な感覚、ゾクッとする。

驚いていることを悟られないよう、鼻だけで思い切り息を吸い込んでいると、慌てて降りてきた従者が馬車の扉を開けた。


目の前にミレイアが立っている、会いたくなかったってのに……。


「ごきげんようレイナードおにいさま、馬車が見えたので走ってきましたの」

「あぁ……」


まさか来ると思っていなかったので、うまく言葉が出てこない。

とりあえず従者には前に戻るように伝えたが、えっと俺はどうすればいいんだ。

降りるべきか、いや、乗せるべきか、いや違う、あーー困った。


「おにいさま、ちょうどよかったですわ、そのままでいいのでお話を聞いてほしいの」


ミレイアはまだ少しだけ肩で息をしていた。

大きく開いたドレスから見える白い胸元が、ピンクに染まっている。


「あ、うん、どうしたんだい?」

「実はぁ……」と言いながら、体をグイっと馬車の中に乗り出してきた。


ミレイアを見下ろす状態になるので、こちらは目のやり場に困る。

なんだよおい、これが年下のやることか、俺は絶対見ないからな!


「あのぉ、今日のことなんですけど、ミレイアの侍女が間違って、お姉さま宛の荷物を勝手に開けてしまったの」

「……」

間違って荷物をだと?


「開けてしまった荷物の中におにいさまからの物もあって、ミレイア、勝手にお姉さまへの贈り物を見てしまったことをお詫びしたくて……」

「でもそれは、侍女が間違えてしまったんだろ?」

「そうなの、でもぉ」

「それは仕方ないよ、ミレイアが気にすることじゃない」

「ほんと? おにいさまっ」


ミレイアはさらに身を乗り出して、今にも体に触れそうな状態まで近寄ってきた。

サッと身を引いて、馬車の座席に座りなおすふりをする。

それに合わせるように、ミレイアは一歩下がり、深くお辞儀をした。


「許していただいてありがとうございます」

「いや君は悪くないから、顔を上げてくれ」


ゆっくりとこちらを見たミレイアは、輝くような笑顔だった。

多分普通の男ならこの顔に騙されるのだろう、俺はただ怖いだけだ。


「どうしようかと思ってたので、直接会えてよかったです。また遊びに来てくださいませね、おにいさま」

馬車を離れたミレイアは再度お辞儀をし、周りを少し気にしながら屋敷へ戻っていった。


あーびっくりした、来ると思わなかったから対応に慌ててしまった、くそー驚かすなよ。

勝手に侍女が荷物を開けていたとは、どういうことだ。

そしてなぜわざわざ言いに来た? 

狡猾で抜け目がないからきっと先手を打ってきたのだろう。

これは何かあったに違いない、ステラが何か知っているのだろうか、あーーー気になる。


ーー コンコン


「ひっ」

「何が『ひっ』だ、無事届けてきたぞ」


クロードが不思議そうな顔をしながら、馬車に乗り込んできた。

思わず抱きつくと、屋敷に戻るまで

間にミレイアやステラの話を挟みながら、ずっと説教された。


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