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クロードの帰宅とステラからの手紙


「レイナード様、ただいま戻りました」

クロードが屋敷に戻ってきた、手には一通の封筒を持っている。

「待ちわびたー! ステラは元気だったか? 大丈夫そうか? リリアナには会えなかったとは思うが、ミレイ……」

「はいはい、そこまで」

持っていた封筒を、俺の胸元にペシペシしながらクロードは言葉を遮った。


「リリアナ嬢は研究室に行かれており不在だった、ステラはとても元気そうだった」

「うん、それで?」

顔が近いよと言いながら、クロードは封筒の中から手紙を取り出した。


「これが昨日から今日にかけ、ステラが屋敷内で気になったことらしい、俺は口頭で聞いた。後で手紙をくれるつもりだったようだが、今回はそのまま貰ってきたよ」

そう言って渡された真っ白な便箋には、とても読みやすい字でいくつかの事柄が書き留められていた。


・レイナード様が帰られた後、客間に荷物を取りに戻ると、ソファの横の花瓶が床に落ち粉々に砕けていた。荷物がびしょぬれだった。

・リリアナ様が住む別館には、自分を入れて3人しかお世話をする人がいない。

(掃除係、食事を運ぶ係、そして私ステラ)

・午前中、本館に大量の荷物が届いたが、リリアナ様宛は0個。似たような箱が二つずつあるのも見えたが、ミレイア様の侍女がすべて運んで行ってしまった。

・リリアナお嬢様は優しい、蔵書を好きに読んでいいと言われた、最高。


「花瓶が……」

「うん、それはまあ人為的なことだろうな、わざと荷物にかかる位置で割れていたらしい」

ミレイアか、やることが嫌らしいな、リリアナはこういう嫌がらせをいつも受けているのだろうか。

「あとは、使用人は少ないが、ブラッツが毎朝別館に用件を聞きに来るらしい、リリアナ嬢はそれで十分だと言っていたそうだ」

流石俺のリリアナ、心が広い。


「あとは荷物か、この件は何とも言い難いな。リリアナ嬢が頻繁に買い物ををするようにも思えないし、届くとしても研究関連だろう」

「そうだな、しかしステラは気が利く子だな、俺の目に狂いはなかった」

「いや、この屋敷に来るように手配したのは俺だし」

クロードはそう言いながら、便箋を封筒に戻し、机の上に置いた。


「とりあえず、気になることはどんなことでも書き記して、俺宛に送るように言ってある。ステラはリリアナ嬢に憧れているというか、敬慕の念を抱いている感じだったから、きっとうまくやってくれるだろう」

「ありがとうクロード! そしてさすが俺のリリアナ」

両手を広げ、思い切りクロードに抱擁した。


「スキンシップが多い! そんなだからまんまとミレイア嬢に転がされるんだよ」

「それを言うなよ……自分でも情けないし腹が立つんだからさー」


夢の俺があまりにも間抜けなので、クロードは最近こうやってからかってくる。

でも本当に馬鹿だから仕方ない、でも夢のミレイアはずる賢すぎるだろ。

涙を見せてこちらの感情を揺さぶったあげく、肉体を見せつけるようにして接触してくるなんて、許せないじゃないか……。

とはいえ、俺も悪いんだよなあ、いや、俺が悪いのか……。


「おい、おーいレイナード」

名前を呼ぶ声にハッと我に返る。クロードが書類を手に持ち、部屋から退出しようとしているところだった。


「ああ、すまん。今日は本当にありがとう」

「そんなのいいよ、それより夢の自分で悩むのはよせ、お前は今を生きてるんだ。リリアナ嬢の事守れただろ、きっといい結婚式を挙げることができるから考えすぎるなよ」

と、俺が女の子だったらコロっと参ってしまいそうな笑顔を見せて部屋を出て行った。


ああ、俺がクロードなら、ミレイアなんかに簡単に転がされず、リリアナをちゃんと信じていたんだろうな。

小さくため息をつきながら、ステラからの手紙を、夢を書き留めている手帳に挟み込んだ。


いや、駄目だ、駄目だレイナード! 今クロードに言われたばっかりじゃないか!

俺はやりなおす機会を与えられたんだ、悩むんじゃなくこれからリリアナを絶対に悲しませない、幸せにする、それだけを考えるんだ。

ちょろくてうじうじした俺は今日で終わりだー



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