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四部47話 あばれんぼうお姉さんは強欲に救いましたとさ

レイルの街での対エーテ戦。


3~10人の部隊を組み、タルトの指示に従う中、唯一たった一人でレイルの街を駆け抜け戦った冒険者がいた。


彼女の名はレオナ。

マシラウの街で聖女と呼ばれ、レイルの街では【小さな手】に所属する冒険者。

カインによって強化された魔導具の靴による蹴術、治癒魔法、そして、サンドリオ家に伝わる精霊を呼び寄せる舞踏を駆使し戦う治癒術士であった。


『レオナさん、右前方で戦闘中。魔兵隊がし損なったので援護を。』

「了解! あぁあああああっ!」


レオナがエーテと戦闘している集団の中に飛び込み、風によってコーティング、そして、勢いを増した靴でエーテの身体をへこませる。

それによって態勢を崩したエーテは攻撃に移行できず、間を空けてしまう。

その間に一撃必殺で臨んだ部隊が逆に態勢を整え二撃目を放ち、エーテは無事破壊される。


「た、たすか……」

「けが人はいますか? いれば治療します!」

「り……あ、は、はい! 盾兵部隊が負傷激しいのでお願いします!」


レオナは手をかざし、治癒魔法を行使する。


「す、すごい。こんな速さで治癒を……!」

「移動しながら準備していたので」

「え? 移動しなが、ら……?」

「では、行きます! 皆さん、深追いだけはしないように! タルトの指示に従ってください! タルト! 次は!?」

『レオナさんは、北へ向かってください。詳しくは移動しながら』

「分かった。最短でつっきる!」


レオナは短い指示をタルトから受け取ると走り始める。


「あ……え!? ちょ、ちょっと! そっちは、か、べ……」


唖然とする冒険者たちを尻目にレオナは、魔導具の靴から風を吹き出し、壁を駆けあがる。

そして、屋根から屋根へと飛び移っていく。


その様を見た人々は皆、こう言った。


『風の精霊が其処にいた』


精霊は、人の感情に好んで集まる。

そういった文献もこの世界では多く見られた。

そういう意味ではレオナは精霊に愛される存在なのかもしれない。


本人は隠しているつもりだが、基本的に感情が駄々洩れな彼女は精霊だけでなく、街の人々にも愛されていた。

マシラウの時のような偽りの仮面を捨てた彼女は、表情豊かで誰もが彼女を身近に感じていた。聖女として崇められるのではなく、癒しの存在として人々に愛された。


彼女はよく喜び、よく怒り、よく泣き、よく笑った。

聖女と呼ばれていた彼女は、誰よりも人間らしい存在だった。


どれが安いか商品を唸りながら悩み、時には値切りだす彼女。

子供たちに慈愛の目を向け女神のように微笑み、悪戯をされたら鬼のような顔で追いかける彼女。

褒められては顔を赤くし照れ、いやらしく迫られたら顔を赤くし怒り、カインを見つけては顔を赤くし俯いた彼女。


彼女は精霊に愛されていた。

彼女が空を駆けるたびに精霊は嬉しそうに飛び回る。

彼女がただ走るだけでそれは物語となり、作品となり、一つの舞となった。

彼女の波乱万丈な人生と血を吐くような努力が彼女という一つの芸術を生み出したのだろう。


戦いの前に彼女は言った。


「私はあいつをぶっ倒したいし、みんなを死なせたくないし、勝ちたいの」


ただのわがままともいえるその発言だったが、タルトはレオナの意見を尊重し、遊撃の役割を与えた。

マァマには出来ない高速移動する治癒術士。

戦闘する治癒術士。

魔力を無限に回復させ続けられる治癒術士。

世界でたった一人の、一番強欲な治癒術士。


レオナは、タルトの指定した場所へと飛び降りる。


そこではエーテに首を絞められ苦悶の表情を浮かべる二人の冒険者が居た。

一人は、レオナにとっても顔なじみのカイン大好きなアントンだった。

もう一人は、剣士だろうが背の高い金髪の男が自分も絞められているにも関わらずアントンを助けようと剣を振り続けている。


「二人ともっ! 耐えて!」


レオナの声に二人は反応すると身を固くする。

その瞬間、レオナの魔力を込めた三連撃の蹴りがエーテの両腕と腹に直撃する。

アントンと剣士は、せき込みながらその場に崩れ落ちる。

レオナは、足とは別に魔力を溜めた両手で治癒を簡単に施す。


「二人とも大丈夫! まだいける!?」

「あ、ああ! いけるよな! ギリス!」

「も、勿論だ!」

「よし! じゃあ、私が隙を作る。二人は一撃に全力を込めて!」


言うや否やレオナがエーテに向かって駆けだす。

そして、舞うようにエーテの攻撃を躱し、何度も蹴りを叩きこむ。

外側から巻くように叩き込まれる攻撃にエーテの防御が外に開き始める。

その瞬間を逃さず、レオナは地面に手を突き両足で防御の腕を弾き飛ばす。

更に、そのまま腕の力で跳ね上がって回転しながら、エーテの背後に回り、両足でエーテの背中を蹴り飛ばす。


「今っ!」

「「うおぉおおおおおおおお!!」」


アントンと剣士の二人の全力が飛び込んできたエーテを破壊する。


腹部が音を立てて破壊され、上半身と下半身が分かれエーテは崩れ落ちる。


「おつかれさまっ! さ、怪我を治すわ。だから、もっとがんばりましょう!」


屈託のない笑顔で彼女は笑う。

それだけで精霊も人間も惹き寄せられる。

感情のままに、すべてを求めた彼女は、すべての戦場を回り、戦い、治療して見せた。

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


完結まで……がんばります……!

よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


よければよければ、他の作者様の作品も積極的に感想や☆評価していただけると、私自身も色んな作品に出会えてなおなお有難いです……。


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