SS24 【小さな手】と雨の日
本編間に合わず。
真面目展開続くと、書きたくなってしまいます…
「雨キラ~イ!」
あのたす孤児院でそんな声が響き渡る。
声の主は、サキ。
比較的穏やかな彼女がそんなことを言い出したので、レオナは慌てて尋ねる。
「サキ、なんでそんなこと言うのよ?」
「だって、お花今日も見に行きたかったのに……」
そう、今日は生憎の雨で、みんな出掛けることが出来ず、ウズウズしている子供達が多かった。
「わたしは好きだけどな、雨」
「おれもおれもー!」
サキと同じくらいの年のジュン、そして、双子のナーガスが雨派を自称する。
「はあ!? 絶対雨やだろ!」
ナーガスと双子のオーガスが否定する。
こうなると止まらない。
自分はどっちだと主張し始め喧嘩が起きる。
収拾がつかなくなり、レオナは声を荒げる。
「アンタたち! 喧嘩はダメだって言ったでしょうが! こういう揉め事の時はどうするんだっけ?!」
そして、今、グレンの目の前に子供達。
「おい……どういうことだ?」
「この子達、アンタ達の言うことなら大体聞くから、よろしく」
悪びれず腕を組み答えるレオナ。
(こいつ……こっちに丸投げしやがった……!)
あのたすの子供達による【小さな手】への「雨、好き?嫌い?」調査が始まる!
【グレンと雨】
「まあ、好きだな」
顎に手を当て少し考えグレンは答える。
「へえ、意外ですね。私と同じ火属性だから苦手かと」
マチネがグレンの答えに少し意外そうに尋ねる。
「まあ、多いだろうな。けど、雨の音は嫌いじゃねえし、部屋で本読むのもいいもんだぞ」
グレンは優しく微笑みながら答える。
「グレン兄ちゃんって意外となんかくらいよな」
「そうなんだよ、結構地味なしゅみばっかりなんだよ」
「こら、ほんとのこといっちゃだめでしょー」
最年少ディセのとどめにグレンは曇り空を見上げる。
「雨だな……」
(ああ、あと、雨だと流石にアイツら喧嘩しなくなるからだろうな……そんなことばかり考えるオレって……)
グレン、雨好き派
【マコットと雨】
「ああああめは、好きです」
「「「「やっぱり」」」」
「ややややっぱりがやっぱり!」
マコットが子供達の反応に落ち込む。
「マコットにいちゃんだから、家出なくていい理由が出来たとかだよな」
「あと、自分なんて雨がお似合いとか自虐してそう」
「雨粒掴む修行とかしてそう」
(ぜぜぜぜんぶ正解だぁあー!)
マコットは雨に打たれた。
マコット、雨好き派
【ラッタと雨】
「雨? キライだな!」
「そうなんだー? なんでー?」
「なんでもなんでもない! 雨はキライだ!」
「えー、なんでー?」
ディセのなんで攻撃に、ラッタは負けて逃げ回る。
その内に窓から飛び出してしまい、
「あ……あぁああああああ!」
玄関から帰ってきたラッタはびしょ濡れでひどく落ち込んでいた。
それを見てジャニィ
「ラッタ、なんでそんなに落ち込んでんだよ?」
「私の貴族の証が……」
「は?」
「私の巻き毛が! 貴族巻き毛がしんだ!」
「そ、そっか」
白濡れ元巻き毛鼠が隅で落ち込んでいた。
(マチネが乾かしすぐに機嫌は直った)
ラッタ、雨嫌い派
【シアと雨】
「雨? 好きよ」
「へ、へえ~、お、おれも雨好きだけど、シアさんは、なんで?」
ラギが髪をちょっと弄りながらシアに問いかける。
「ふふ、だってね。雨ならカインさんと相合傘出来るでしょ(未経験)。あと、二人で一枚の上着を被って駆けたりとか(未経験)。それでも濡れた二人は雨宿りで肩寄せあってやまないねとか言い合って(未経験)、肌寒いから小屋に入って二人は暖め合うために(未経験)」
「いやだぁあああああ!」
ラギはにげだした。
脳が破壊される前に。
「結末は分かってただろうに。バカなやつ」
びしょ濡れの男がまた一人。
シア、雨好き派
【タルトと雨】
「あはははははははは! 気持ちいい~! 超気持ちいい~! 雨最高~! ひゃっほう~! あはははははははは! あはははははははは! あひゃっひやああああ! シ、シアさん~! なんで! 急に! い、いつもより多めに凍ってますからあ!」
異常にテンションの高い亀人族のタルトにいらっとしたのかシアがタルトを凍らせている。
「私、やっぱり雨嫌かも。ねえ! タルト~! あはははははははは!」
「いや、シアねーちゃん楽しそうじゃね?」
ジャニィは大きな声では言わなかった。
タルト、雨好き派
シア、雨嫌い派に変更
【レオナと雨】
「って、アタシもなの!?」
「だって、レオナ姉ちゃんも【小さな手】でしょ?」
「アタシは、雨嫌かな~。洗濯とか買い物とか大変だし」
「ばばくせ」
「ジャニィ~~、なにかしら~?」
ジャニィが溢してしまった一言にレオナが鬼婆と化す。
「で、でも! 雨だと、おうちデートとか楽しそう!」
「お、おうちデート!?」
レオナがぐりんと首をサキのほうに向ける。
そして、顔を真っ赤にし、顔を強張らせたり緩ませたりを繰り返す。
そして、最後に「も、もうおうちだからって、いや~ん! イヤじゃないけど!」とまっかっかで金色のお下げを振り回す。
「ふう……ま、まあ、雨も悪くないかもね」
子供達はとてもやさしい目でレオナを見ていた。
レオナ、雨好き派
【カインと雨】
「え? 聞く?」
「なんでカインお兄さまには聞かないのよ?」
「いや~、だって」
「雨? 好き、だよ」
「【ココルと雨】私もカイン様と同じで好きです」
「いやいやいや、急になんか色々入ってきて混乱してるんだけど!」
オーガスはどうようしている!
「「「「「「雨、好きです」」」」」」
「ほらあ~、結局こうなるから聞きたくないんだよ!」
「っていうか、さりげなくマチネも賛同してただろ! 火属性は雨嫌い多いんじゃねーのかよ!」
「魔工技士は常識にとらわれてはいけないの」
「「うるせー!」」
オーガスとナーガスの双子ツッコミが冴える。
「あの、ちなみに、カインお兄さんはなんで、雨好きなの?」
サキが少しだけカインの袖を引きながらおずおずと尋ねる。
カインは少し困った笑顔になりながら口を開く。
「嫌いなもの、が、いっぱいで、辛くなる、より、好きなもの、をいっぱい、にして楽しくなった方、が、いいって教え、られて、そうだなあ、と思ったんだ。雨、なんて神様の、気まぐれだから好きになれたほうが楽しい、と思う、よ」
「……うん、そうかも」
「それに、雨、に、濡れたら、お水貰えたお花は元気に、なるよ」
「……! うん!」
「それに……」
「うん?」
「ううん、ほら」
カインが空を指差すと晴れ間がのぞいていた。
子供達は駆け出し、【小さな手】の面々は外に出て思い思いに空を眺めるがどこか笑顔だった。
(やまない雨はないんだって、みんなに教えてもらったから)
カインもまた外へと踏み出す。
泥がつくのも構わず、踏み出す。
その顔は今の空のように少し曖昧で、でも、絶対に笑っていた。
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