SS21 ファンブル魔物記『火吹き虎』
伏線まとめてたら間に合いそうになかったので、とりあえず、SSをば……明日こそ本編を。
『夜の姫』に出てくる『火虎』という伝説の生物がいる。
虎と呼ばれるだけあって、今、私たちが知っている虎種のものに非常に近いのだろう。
物語によると、火虎の皮で作った衣は絶対に燃えないらしい。
絶対に燃えないということがありえるのだろうか。
私は、何故燃えないのか猛烈に知りたくなり、火虎の描写によく似た魔物、『火吹き虎』に出会う為に一人、中央帝国へと向かった。
いや、正確には一人ではない。
助手がついてきていた。
彼女は大変出来る助手で私より先に中央帝国にたどり着いていた。何故。
そして、宿や食事や移動手段、道具の手配まで完璧にすませていた。何故。
そして、暇だったからという理由で物凄い豪遊していた。何故。
だが、考えても仕方ない。
彼女こそが一番謎多き生き物なのだ。
ひとまず、火吹き虎だと私は頭を切り替え、火吹き虎が住むという【鉄竹林】という場所へ向かった。
ここに生えている『鉄竹』という植物は面白く、真っ黒で筒状の木なのだが非常に熱に強く良くしなるにも関わらず鉄のように固いのだが筋にそって割ればたやすく割れ加工も難しくはない。
人々はこの鉄竹を活用し生活していた。
火に強い理由を聞けば、年中火を噴き上げる焔山という山があり、それのせいではないかと言われていた。
恐らく、火吹き虎などが存在するのもその焔山の影響があるのかもしれない。
鉄竹林の中は非常に熱く只人が入るには厳しい環境だった。
鉄竹も触れば火傷するほどで、我々は慎重に林の奥を目指した。
いや、正確には我々ではない。
助手がすいすい進んでいた。何故。
「いやー、手の皮が厚いからですかね。あと、村で普通に防熱の魔導具売ってましたよ。買いました。高かったです。なので、先生の分はありません」
彼女は面の皮は厚い。間違いなく、厚い。
倍の値段で借りることになった。何故。
そして、鉄竹林を進むこと数時間、火蛇や赤兎といったこの地特有の魔物を避けながら、漸く我々は火吹き虎を発見した。
火吹き虎は体長3メートル程の魔物としてはギリギリ中型に分類される位の大きさだった。
身体は橙で、赤黒い縞の模様が走っている。
模様は額から尾に向かって太い線が伸びており、その太い線から枝分かれするかのように体中を赤黒い縞が這っている。
前足よりも後ろ足が数倍大きく、尾は身体と同じくらいの長さであった。
そして、名の通り火を吹く。
遭遇した時には問答無用で火を吹いてきた。
我々は必死で逃げ惑った。
いや、正確には我々ではない。
助手が村で買った魔導具で戦っていた。何故。
「これ、鉄竹でつくった【魔法筒】の強化版だそうです」
その魔導具は黒く、通常の魔法筒に比べ五倍の長さはあった。
魔力を込めると、赤黒く光り発射口へと向かう。
瞬時に魔法を発動できる通常のものと違い、長さとそこに刻まれた術式故か魔法を放つまでにかなりの時間がかかるようだ。
しかし、そのリスクに対するリターンは十分で、とてつもない量の魔泥を放った。
土と水という火属性の天敵が火吹き虎に襲い掛かり、火吹き虎は大きく飛びさがり、うろうろとこちらを伺いながらも近寄ってこなくなる。
どうやら地元の人間は、こうやって退け、火吹き虎から逃げているようだ。
そうして、鉄竹林から助手に引っ張られながら撤退。
助手に救助費用を請求された。何故。
翌々日。
再び鉄竹林に入る。今度は前回と違い迂回し違うルートで一昨日の発見ポイントへ向かう。
そして、発見ポイントから少しずれた地点で火吹き虎を発見する。
一昨日とは違う火吹き虎だった。
何故わかるのかと助手に首を傾げられたが、見れば分かる。
特に正面から見た際の額から奔る模様が数ミリ右にずれている。
助手に『気持ち悪い』と言われた。何故。
そして、その火吹き虎がこちらに火を吹いてくることはなかった。
何故ならば、火吹き虎は別の魔物と対峙していたからだ。
火吹き虎と同じく火を吹く魔物、『火吹き鳥』である。(火吹き鳥の姿生態について詳しくは別章にて)
火吹き鳥は、鉄竹林の中でも多少開けた場所から火吹き虎を狙っていた。
鉄竹林の奥深くに逃げれば戦いも避けられると私は考えたが、火吹き虎は退くことなく火吹き鳥を睨みつけていた。
睨みあうこと数分程度だっただろうか、火吹き鳥が翼をはためかせた瞬間、翼が赤く光り揺らめく。そして、火吹き鳥の嘴から炎が放たれる。
脚を狙ったであろうその炎に対し、火吹き虎はその敏捷性を活かし、躱していく。
そして、火吹き鳥が炎を吹いた後に多少高度が落ちるところを見計らって鉄竹林を蹴りながら火吹き虎が爪で狙う。
しかし、そのタイミングに合わせ、再び飛翔し始め再びにらみ合いが続く。
だが、そのにらみ合いはほとんど一瞬であった。
ぐんと身体を縮めた火吹き虎の毛が赤黒く輝いたかと思うと火吹き虎は天を舞い、火吹き鳥を襲う。
しかし、その見失うくらいの素早い跳躍さえも火吹き鳥は躱し、火吹き虎の隙だらけの腹を狙って炎を吹く。
火吹き虎は身体を丸め少しでもダメージを減らそうとしている、ように私には見えた。
が、次の瞬間、私は自分の目を疑う。
火吹き虎が身体を丸め回転すると、炎がその体に吸い込まれるかのように消えていったのだ。
そして、我々のすぐ傍に着地したと同時に身体を捻り、火吹き鳥に向かって、とうとう火を飛ばしたのである。
全身が、いや、正確には縞模様以外の橙部分が発光し、その光が縞模様に注ぎ込まれ、さながら、そう鉄竹林の魔法筒のように模様を伝い額に集まる。
そして、炎の魔法が放たれた。
そう、火吹き虎は正確には、火を吹くのではなく、額から火魔法を放ったのだ。
そして、その際に私は見た。彼の縞模様にひび割れのような光が奔るのを、恐れずに言おう。あれは、私は魔法陣の術式に近いものだったのではないかと考える。
何故人間が使う術式をと読者の皆さんは問うだろう。いや、もしかしたら責め立てるかもしれない。
けれど、否定はしないでほしい。
私たちは魔物をどれだけ知っているのだろうか。
私たちはまだ魔物を知らないのだ。
そして、私はその魔物を知りたいと考えている。
そして、今回知ったことによる私の考察はこうだ。
火吹き虎は、外敵も多く、しかも、火を使う魔物が多い。
それにより、火に対する防御策としてあの縞模様があるのではないだろうか。
あの縞が水路のような役目を果たし、注ぎ込まれた炎、正確には、魔力を分散させていたるのではないだろうか。
そして、橙の毛は流れてきた魔力を蓄える貯水池のようなもの。
さらに、その蓄えられた魔力は、逆に、火吹き虎の火魔法の魔力として使用される。
その魔力もまた縞の水路を通り、勢いを増し、額の噴出口から何倍もの威力に高められ放たれるのではないだろうか。
助手には鼻で笑われた。何故。
そう聞くと、多分今の学会は否定しますよ、と。
火に油を注ぐつもりですかと。
構わない。
今の学会は頭が固い。
魔物はこうだという固定観念にとらわれている。
だから、助手の〈変身〉にも気づかない。
一度燃えた方がいい。
あの学会に眠る資料たちも。
そして、もう一度向き合うべきだ。
魔物たちと。
何故彼らが生まれたのか。
想像してみるべきだ。
何故。
と。
理由はあるはずだ。
彼らにも生きようという意志があり、生き残ってきた以上、理由が。
問い続けなければならない。
何故、と。
ちなみに、火吹き虎がそばに着地し無事だったのかと思われた方もいるかもしれない。
これを書いている以上、お察しの通り、少なくとも頭は働き、手は動いている。
実のところよく覚えていない。
助手曰く、火吹き虎の尾で頭を打たれ気絶したらしい。
目を覚ますと、私は村にいた。
詳しいレポートは私が寝ている間に纏めてくれていた。
ただ、火吹き虎へのインタビューのような形式だった。何故。
あと、私の頭の打撲は何か固い鉄の棒のようなもので殴られていたようだと医者が言っていたのだが、何故。
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