SS19 【小さな手】とゴガッツ病
14話が出来なかった……ので、SSです。
暫くしたら、順番変えると思います……。
『シアとゴガッツ病』
「やる気が出ない……」
シアが頬杖をついて呟く。
「へ? なんですか? シアさんゴガッツ病ですか?」
近くで本を読んでいたタルトが読むのを止めシアに問いかける。
気力を満たすガッツという実がある。
ゴガッツという見た目はよく似ていながら効果は真逆、気力を下げる実から名前をとったゴガッツ病は正式には病ではない。
ただ、やる気の出ない状態をゴガッツ病と表現することがある。
「そうなのよ……なんだか気分が沈むのよねぇ……」
「あらら、大変ですねえ」
「あなたは元気よね。いや、いつもより元気じゃない?」
「あ、分かります? 今日はですね、カインさんとお出かけなんですよー☆」
「カインさんと、タルトが……二人で……?」
「そうなんですー! 道具を選んでほしいって、カインさんが……って、ほぎゃあああああ! な、何してるんですか!? ワタシの下半身が氷漬けに……氷亀の氷像ができちゃいますからあ!」
シアから放たれた冷気がタルトの足元から徐々に凍らせていく。
「ありがとう、タルトなんだか『やる』気が出てきたわ……」
「その『やる』はどういう意味!? どういう意味なんですかあ!?」
「いつもの倍『やる』気が出てきたわー!」
「ほんぎゃああああ! なんで倍~!?」
(なんでかしら? カインさんとタルトが二人きりでって……)
『レオナとゴガッツ病』
「おてんば、ゴガッツ病か?」
「おてんばじゃないわよ! ……なんだか、やる気が出ないのよ……」
グレンの言葉に目を吊り上げたもののすぐに気怠そうにレオナは突っ伏した。
「そういうアンタは元気よね……」
「んなもん飯食っ……いや、カインさんは元気な奴が好きらしいからな。空元気でも出していかねーとな」
「ふ、ふ~ん」
「おう、どこに行く?」
「別に~」
「なんか元気出てきたみたいだな」
「いや! べっつに! まあ、何!? その! なんかね、やっぱり聖女と呼ばれてる人間がだらけてちゃいけないな! と! ほんと、それだけ! べ、べつにさっきの話なんて関係ないから!」
「ど、うした、の?」
「おう、カインさん」
レオナとグレンが騒いでいるところに通りがかったカインが首を傾げている。
「カ、カイン!? あのそのこのどのえとそのあのそのどのって何言ってんのよアタシー!!!」
「よかった。レオナ、気怠そう、だった、から。元気みたいで」
「え? あ……あ~、うん。元気、だから。ごめんね、心配かけて……ありがと」
「?? ……う、ん」
カインは再び首を傾げたが、柔らかく微笑むと去っていく。
「…………」
「おてんば」
「うるさい! うるさいうるさい! あーもう! 別に! そういうんじゃないから! そういうんじゃないからー!!!」
レオナが風を巻き起こしながらかけていく。
「元気出しすぎたか……」
『ラッタとゴガッツ病』
「うまいうまいうまいうまいうまい!」
「楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい!」
「眠い眠い眠い眠いね、む……ZZZ」
「ラッタには関係ないねえ……」
スヤスヤ眠るラッタの横で『眠りの鵞鳥』を使いながらマコットは微笑んだ。
『カインとゴガッツ病』
「ふう……」
「カイン様、お疲れですね。ゴガッツ病ですか?」
「いや」
「ならば、私を抱きしめてください。カイン様限定で私を抱きしめた際に気力増幅効果が生まれます。私に」
ココルが腕を広げて待ち構える。
「カインさん、私を抱きしめたらひんやりして気持ちよくて元気出るわよしろくろしね」
「しろくそ女の心の冷たさでカイン様が風邪をひいたらどうするのですかしね」
シアがココルの前に出て腕を広げると更にその前にココルが飛び出してくる。
「カインさん、ワタシのような小さいものを撫でると元気出ると書物に……あと、元気出る道具もありますよ」
「あ、あの……アタシが治癒魔法かけてあげようか? それかアタシが抱き……だき、だ、だ……大! そう! 大治癒魔法かけてあげようか!?」
「小さいものを触ると元気が出るのか!? カインヌ、触るか!? 撫でるか? 頭撫でられは貴族の嗜みだからな、許可するぞ!」
「ああああああの、カインさん。鵞鳥印の遊戯盤があるんですが一緒にどういや一緒にとかおこがましいよかったらひとりでやってみてくださいぃいいい!」
「お前らな……ん? どうした? カインさん?」
「う、ん。みんなが、元気だと、俺も、元気に、なれるよ。ありがとう。ゴガッツ病、に
負けずに、がん、ばろう」
小さな手のみんなが笑顔になって、元気がでてきましとさ。
めでたしめでたし。