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SS18 カインの魔導具講座~魔導砲編~

「第二回カイン様の魔導具講座~」


白と黒の混じった髪を揺らしながらココルが無表情のまま、大きな声をあげる。

傍ではグレンとシアが無表情ながらに、タルトとマコットが目をキラキラさせながら大きな拍手をしている。

そして、その視線の先にはカイン。


「あの、また、やるの?」

「勿論です。何度でもカイン様の顔……もとい、お話を聞きたいと私と、目クソ鼻クソ達は思っていますとも」

「其処の白クソ女、黙りなさい」

「ほんぎゃああ! シアさん! ワタシが凍っています!」

「黒いの、こういうことだ」

「ななななな成程、ちょっと離れた所にいて、よかったです。ありがとうございます、グレンさん」


男女の温度差に苦笑いを浮かべながらもカインは折角の機会という事で話始める。


「え、と……では、前回、魔法筒、の、話をした、ので、今回は、その、発展で、ある、魔導砲を、説明、したい、と、思います」

「魔導砲……あのド助平じじいの使ってたヤツだな」

「ああ……あのレオナと私にまとわりついてたド変態クソじじいの」

「そうです! あのド変態ド底辺ドクソドじじいの使ってた魔導具です」

「ドじじい?」

「そういえば、あの天邪鬼娘は何処に? 『べ、別にカインの話に興味なんかないけど、その、魔導具には、きょ、興味あるから!』とか言って来そうなものですが」

「ああ、レオナさんは今日は孤児院のお仕事を手伝いに。すっごい行きたそうにう~う~唸ってました」


無表情にもかかわらず口調や声色が思った以上に似ていたココルの物まねにカインは感心しながらも、再びグレン達に向き直る。


「え、と……そう、で、セクが、使っていた、あの魔導砲ですが、魔法筒と大きく違う点は何かタルトなら分かる、かな?」

「ふっふっふ! 勿論です! 魔法筒と違い、魔導砲の術式は螺旋に刻まれています!」

「そう、だね。流石タルト」


カインが手を叩きながら褒めるとタルトは胸をはり、ちらりとシアの方を見る。


「なに? その眼? タルト? 自慢?」

「ほんぎゃああああ! 螺旋に! 螺旋に氷を巻きつけないでください!」

「大体螺旋だから何? 何が変わるの? ねえ、タルト先生? 教えて」

「ほんぎゃああ! そ、それは……って、寒くて……カインさん、ワタシ……もう眠いです……」

「グレン」

「あいよ」

「ほんぎゃあああ! あつ! 氷が溶けてお湯になってあつ!」


螺旋に巻き付いた氷の茨をグレンが熱で溶かす。

が、溶かした氷はお湯となりタルトに遠慮なくかかっていく。

顔を真っ赤にしながらタルトが踊るように暴れるとシアは満足そうに笑いカインの方を向く。


「で、何が違うの? カインさん」

「そう、だね。以前の話、にも、つながるけれ、ど、螺旋、に刻むこと、で、術式の密度が、格段に変わったんだ」

「けどよ、筒の中の刻める範囲って同じじゃねえのか?」

「マコット、説明、出来る?」

「はははははい。あの! 術式の基本として、術式はこう流れていきます」


マコットは地面に枝で術式の例を描く。


→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→

①魔力を吸う → ②魔力を火に変換する →③火を球にする


「こここここれが魔法筒の〈火球〉の術式例です。じじじ実際はもっと複雑ですが簡単に言うとこんな感じです。④の行程である方向指定がないのが魔法筒の優れた点です。筒の穴を向ければいいだけなので。で、この術式である文を読む流れと魔力の流れは同じになります。なので、例えば、筒の中めいいっぱい使って刻もうと①②③を円に沿って刻むと」


→①魔力を吸う↓

↓←←←←←←

→②魔力を火に変換する↓

↓←←←←←←←←←←←

→③火を球にする


「こここここのように矢印が綺麗に行かずに流れが汚くなり結果魔力の無駄遣いが増えます。この流れを螺旋にすることでより多くの術式を刻み、より効率的に、もしくは威力を高めて魔導具を使うことが出来ます」

「そう、だね。その通り」


マコットは満足そうに笑うとハッと気づいたように影に逃げ込む。


「凍らせないわよ。私が凍らせるのはタルトだけ」

「嬉しくないんですけど!」

「あと、白クソ女は本気でやる」

「やってみなさい、クソ白女」

「お前ら、あだ名まで似始めてるぞ」

「「五月蠅い、クソレン」」

「あ、の、話、やめる?」

「「「「「」続けてください」」」」


五人が綺麗に並ぶ。


「けどよ、カインさんもうひとつ。術式を多く刻みたいんなら小さく刻めばいいんじゃ……」

「そう、だね……けれど、例えば、グレン、の、火を威力を、保った、まま、ぎゅっと小さくして、と、言われたら?」

「成程難しいな」

「そそそそそうなんです。魔工技師は、いや、カインさんは鍵盤でいとも簡単に術式を刻んでいるように見えますが、一定のサイズを保ちながら狙ったところに刻むのは実際はとても難しい技術なんです。多くの魔工技師が、術式設置の複雑化・魔字の圧縮等でつまづきます。グラグラ揺れる地面の上に文字を書くようなもんですから」

「なので、魔導砲の螺旋術式、は、結構、難しい、よ。圧縮よりは楽だけど、通常の術式設置、よりも、難しい」

「あの、カインさん、もう一つだけ。やはり、術式ってそんなに多く刻まなければならないんですか?」

「そう、だね……じゃあ、ちょっと、だけ、ややこしい話を。命あるものが、持つ、魔力は、属性を必ず持っている、よね。大きく分ければ、光、火、水、風、土、闇。ただ、精密に見るとかなり細かい、よね、タルト」

「ひゃい! そうですね……シアさんは氷雪という水と風が混じっていたりしますし、あとは、雷は風と火、木は土と水と光等百近い魔力の種類が確認されています」

「で、術式、も、大きくは六つに、分類、されているんだ。で、厄介なのは、魔法と同じように術式、も、影響を与え合う、と、いうこと。火の術式と水の術式を隣り合わせると火の術式が弱まる、風から土だと風の効果が流れにくい。光と闇は全く作用しあわない」

「全部同じ術式ってのは難しいのか? 勿論、使う人間は選ぶだろうが」

「術式の効果、は、各属性で使うのが難しいものがあるんだ。例えば、魔力吸収は全ての属性で使えるけど少し意味が変わるんだ。火だと『燃焼させる』水だと『溶ける』風だと『巻き込む』土だと『吸う』みたいな感じで、それぞれ、魔力、を、吸収する役割を、果たす、けど、ちょっとずつ違うんだ。複雑な指令になると、特定の属性では出来ない、もの、もあるんだ。な、ので、相性の悪い属性が隣り合わないように間に挟んだりしないといけないん、だね」

「なるほど、よくわかったわ、カインさん」

「凍ってた頭がちょっとは溶けましたか、クソ白女」

「何か言った? 白クソ女」

「ほんぎゃああああ! あの! 右が凍って、左が銀の触手でいじられて、二色亀になっちゃってますから!」

「え、と、こんな風に間にタルトがいるとちょっと喧嘩が弱まるのがいい例ですね」

「成程な」

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