入れ替わり〜ピザポテチとダークマター〜
『さて、ダメ夫。全て洗いざらい吐け。どうしてエディスを避け、ちゃんと話し合わず、妃達を好き勝手にした。それでエディスが傷ついていたのは分かっていただろう』
私はチビ竜のままポテチを食べる。ペシペシと尻尾をソファにリズムよく叩きつけながら、食べカスを床にこぼす。
「……それは申し訳なかったと後悔している」
『後悔するなら最初からやるな。お前はエディスからは一生許されない。お前が傷つけたエディスはもういないのだから』
ペシンッと強く尻尾を叩きつける。
「どうしても受け入れられなかった……愛しい番の中に得体の知れない魂が入っているのが……。そして私はエディスを見ないふりをした」
『それにしたって、元妃達からの嫌がらせを止める事は出来ただろうに」
ポテチを部分を味わいながら、ダメ夫の言葉を呆れながら聞く。ダメ夫は目にわかる様にショボーンとなる。それが私が大事にしていた抱き枕のショボーンさんと重なる。
いや、此奴は私の心の恋人、ショボーンさんでは無い。ショボーンさんはもっと素敵な人形だ。幻覚を振り払う様に尻尾を高速で叩きつける。
ぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺし。
「番、一つ聞きたいのだが……何故その姿をとっているのだ」
『楽だから。ダイナマイトボディにドレスは動きづらいし、ポテチの開発に邪魔。それに、この姿だと皆んな可愛がってくれるし』
チビ竜の私は大変可愛らしい。ちょこちょこと小さな体で動く姿は侍女達に人気だ。皆んなが甘やかすようにお菓子をくれる。だから今の姿は私のお気に入りだ。
『はーい、注目。此れから私による夫婦改善策を発表したいと思います、はい、そこ立たなーい』
1. 必要なときには異議を唱える
2. ちゃんと話を聞く
3. お互いに尊敬し合う(今はゴミにしか見えない)
4. 小さなことには目をつぶる
5. 妥協する
6. ただ話すのではなく、コミュニケーションをとる
7. 人生に同じものを求める。あ、これはポテチの事ね。
『はあ、……しょうがないとはいえ、子供をつくらなきゃいけないのが難点だ……一生この姿のままでいようか……』
「番が望むなら私もその姿になるが……」
『誰も望んでねーよ。陛下がチビ竜って威厳がないでしょうが。それともあれか?私のプリティなポジションを狙っているのか貴様?』
むしゃむしゃとポテチを食べる。態とダメ夫の前に行き、食べかすを振り撒く。ポテチで汚れたプリティな手をダメ夫の服で綺麗にする。
『とりあえず、はじめの一歩としてポテチを一緒に作ろう。でも、許したわけじゃないから図に乗るなよ、痴れ者め』
「分かった!!精一杯努力する!!」
息を荒くし、やる気に満ちた顔をしているダメ夫を尻目に料理室へと向かう。今日はピザポテチへ挑戦だ。
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『……なぜ、どうしてこうなった』
ダメ夫エレフはちゃんと私の指示通り動いていた筈だ。だが出来上がったのはモザイクでも入れないとヤバいほどのダークマターだった。ダークマターからは何故か呻き声が聞こえて来る。これはピザポテチと呼べる代物ではない。
「番、これが……ピザポテチか?」
『んなわけねーだろ!!どうしたらこんなダークマターが生まれるんだよ!!』
ダークマターを生み出したダメ夫の顔にテールアタックをキメる。
ぺしぺしぺしぺしぺしぺし。
『うぼあ゛ぁぁああ』
『私の知ってるピザポテチは呻き声なんてあげません』
『かゆ……うま……』
あ、これあかんやつや。食ったらなんか死ぬわ。食べたらチビ竜のゾンビになるやつや。だが、ダメ夫はダークマターを鷲掴み食べてしまった。
『ぎ、ぎあ゛ああぁあぁ!!』
ダークマターは叫び声をあげてダメ夫に食べられている。私はドン引きしながら、ダークマターに向かって南無阿弥陀仏と唱えていた。
それを見ていた料理長も好奇心からなのか、ダークマターを食べた。すると料理長は白目を剥いて泡をふきながら倒れた。私は直ぐ様料理長を尻尾で顔をペしぺしと優しく叩く。
「番、叩くなら私の顔にしてくれないか?」
『何であんたは平然としてるの!?』
「中々奥の深い味だった」
『違うから!!ピザポテチはこんなダークマターじゃないから!!』
私は自分だけでピザポテチを作る。トマトスープやらチーズやらと調味料を作ってピザポテチを作る。今度はちゃんとピザポテチが完成した。ダメ夫も同じ工程で作ったはずなのに、何故あんなダークマターが生まれたのか謎だ。
私はピザポテチを食べながら、残っているダークマターを突くと、ダークマターは嬉しそうに断末魔をあげる。ちょっと可愛い。
ダメ夫が残りのダークマターを食べようとしたので、私はそれを阻止しペットとしてダークマターを飼う事にした。
今日も素晴らしきかな、ピザポテチ。